記事提供:日刊SPA!

こんな感じでアルミテープを各所に貼ると、走行性能が増すらしいのです。

トヨタが「アルミテープ」で世間を騒がせてから1月あまりが経過した。

ご存じない人のために少し解説すると、一般家庭で使われているアルミホイルの裏面がシール状になっているアルミテープをクルマのボデー各所に貼り付けるだけで、走行中にクルマが受ける空気の流れが落ち着いて走行性能が高まるというのだ。

しかも効果は時速10km程度から出始めるという。ちょっと聞いただけで「なんだかとっても怪しいぞ!」と思った人は多いだろう。

この理論は、トヨタ曰く「ボデー各部の電位コントロールによるエアロハンドリング向上」ということなのだが、これを聞いてもなんのことだかさっぱりわからない。

そこで、この理論を導き出した開発者の山田浩史氏(トヨタ自動車・車両技術開発部 動的性能技術開発室)に詳しく聞いてみた。

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山田:クルマのボデーは、走行中いつも空気の抵抗を受けています。実はその空気の抵抗を受けていくとボデーは次第に電気を帯びてくるのです。これを帯電と言います。

――なるほど、空気抵抗によってボデーが電気を帯びるのですね…。でも、電気がクルマにどんな影響を及ぼすのですか?

山田:この帯電がクルマのいたる場所で空気の流れを乱します。例えばクルマ前部のバンパーに電位として+500V程度帯電すると、走行中、バンパーによって切り裂かれた空気がボデーから大きく離れてしまい、また空気の乱れそのものも大きくなります。

同じく運転席や助手席横のサイドウインド部分も+1000V程度帯電すると、ウインドガラス表面を流れる空気が乱れてしまいます。こうなるとクルマの安定性が損なわれ走行性能が悪化してしまうことがわかりました。

――そういえば小学生の時、プラスチックの下敷きを着ている服でこすって静電気を起こして、自分の髪の毛を逆立てて楽しんでいましたが、そのときフワッとした空気の流れを感じたことがあったような…。これって今回のアルミテープと関係あります?

山田:確かに静電気でも引っ張る力が発生しますが、今回の理論は500Vとか1000Vといった高電圧での話ですのでちょっと違いますね。でも、電気が空気に影響を与えるという点では同じ考え方です。

――ちなみに帯電すると空気の流れが乱れて、空気の流れそのものがボデーから離れると言いますが、具体的にボデーからどれくらい離れると悪影響が出るのでしょうか?

山田:実はボデーから空気の流れが離れることが悪いのではなく、離れることで表面を流れる空気の速度が遅くなるために悪影響が出る、という表現が正しいですね。

例えば、あるクルマでは、帯電するとボデー表面に流れる空気の速さ(流速)が、帯電していない状態から10~15%程度遅くなることがわかりました。

――たった10~15%の違いが走行性能を悪化させるんですね?

山田:はい。空気は+に帯電しますが、ボデーも同じく+に帯電しやすい性質を持っています。そうなると、+(空気)と+(ボデー)の帯電ですので帯電量が多くなるに従って反発力が発生し、これがボデー表面を流れる空気を乱す原動力となるわけです。

――そこでこのアルミテープの登場ですか?

山田:そうなんです。たとえばボデーのある部位で、走行前つまり帯電していない状態での電圧が+20Vだったとします。

同じ部位を10km走行後に再計測したところ+500Vへと25倍も帯電量が増加していました。次に一度この部位を放電させた上で、今度はアルミテープを貼り同じように10km走行します。

すると、アルミテープを貼る前は+500Vだった部位が、アルミテープを貼るだけで、走行後+150Vと帯電量が70%も低下しました。

――数値で見るとわかりやすいですね。これは使用したアルミテープの素材がスゴイんですか?それとも櫛のような、このテープの形状がスゴイんですか?

山田:実は両方です。とはいえ目的は両方とも同じで、帯電しにくいアルミを使い、切り欠き部分が多くなるよう櫛状にしているのは、いずれも素早く放電させるためです。とはいえ製造工程はシンプルですし、原価も数百円と格安です。

ちょっとだけ専門的なことを言うと、今回トヨタが発表したアルミテープの理論は、走行中のボデーが受ける空気の流れを解析する「非定常空力解析」という分野の話だ。

よくクルマのカタログなどでは「ボデーの空力が~」などというフレーズを使っているが、これは「定常空力解析」といって、止まっているクルマに空気を当ててその流れや抵抗値などから空気抵抗係数である「Cd値」を導き出している。

それに対して「非定常空力解析」とは、実際に走行しているクルマに当たる空気の流れを多角的に解析する最新の空力学だ。レーシングカーの世界では当たり前の話だが、これを市販車に応用したのだからトヨタのやることは実にスゴイ。

では、実際に体感できるのか?トヨタのスポーツカー「86」に乗り込んで、アルミテープの効果を体感してみることにした。

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アルミテープはステアリングコラム(ステアリングの付け根の下部分)に貼り、途中、アルミテープを剥がしたり、貼ったりを繰り返しながら走行性能の違いを探ってみたところ…。

違いは確かにあった!アルミテープを貼ると時速50kmあたりからステアリングを指2本分(つまり、ちょっとだけ)左右に動かした時に、ステアリングがググッと重くなり、クルマの基本性能の1つである直進安定性が向上したかのように感じられたのだ。

さらにボデー四隅のバンパー部分とフロントガラス下端にも貼ってみると、路面の段差を越えた際に感じるボデーの揺れ(上下動)が小さくなった。

しかしこのアルミテープ、どんなクルマでも効果はあるのだろうか?乗り物だったら、たとえば大型バイクなどでも効果はあるのか?そこで筆者のマツダ・ロードスターと大型バイクにも貼ってみた。

しかし残念ながら、いずれも86で感じたほどの劇的な変化はなし。「オープンカーは屋根がなくボデー面積が小さいため帯電しにくいかもしれません。同様にバイクもボデーそのものが小さく帯電しにくいですね」とは前出の山田氏。

取材をした結果、効果のほどはクルマの形状や、もともとの空力特性に関係してくるものであることがわかった。当然クルマによって効果が出やすい、出にくいといったことも生じる。

とはいえ、たった数百円の市販のアルミテープで効果を試せるなら、たとえ効果を感じられなくても安いだろう。効果を感じられるかどうかは、あなたのクルマ(とあなたの感度)次第だ。

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