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オオカミを殺した「三匹のこぶた」の末っ子ブタは、正当防衛で無罪か? それとも計画的殺人で有罪か? 慣れ親しんだ昔話に登場するキャラクターたちが現代の法律で裁かれる『昔話法廷』(今井雅子/金の星社)がついに書籍化された。

『昔話法廷』は、昔話で起こった事件を現代の法律で裁いていくという法廷ドラマ。NHK Eテレで裁判員制度を考えるために中学生から高校生を対象につくられた番組だったが、その斬新な設定とシュールさが大人たちのあいだで話題となりSNSでも白熱した議論が飛び交うほどの注目を集めた。

今回、書籍化された『昔話法廷』には「三匹のこぶた」「カチカチ山」「白雪姫」の登場人物たちが被告人となって法廷で争うドラマが収録されている。どれも子どもから大人まで知っているような昔話ばかりだが、その内容はかなり本格的なもの。

それでは、第一章に掲載されている「三匹のこぶた」裁判の様子をすこしだけ紹介しよう。この裁判の被告人は、レンガの家を建てた末っ子のこぶた・トン三郎。兄ぶたであるトン一郎とトン二郎がオオカミに食べられそうになったので、自分が襲われる前にオオカミを殺害した「殺人罪」で裁判員裁判にかけられた。

検察官の主張

「7月7日、午後3時ごろ、自らオオカミを自宅におびきよせたトン三郎は、あらかじめ戸や窓をふさぎ、オオカミが煙突から入るよう仕向けました。そしてお湯をわかしておいた大なべの中に、オオカミを転落させました。

トン三郎はすかさずなべにふたをすると、重しの石をのせ、オオカミを死亡させたのであります…トン三郎が犯した罪は、刑法第一九九条の『殺人罪』に当たります」

出典『昔話法廷』(今井雅子/金の星社)

弁護人の主張

「突然おそってきたオオカミから、自分の身を守るためには……殺すしかなかった……。これは『正当防衛』ですので、トン三郎は『無罪』です」

出典『昔話法廷』(今井雅子/金の星社)

この裁判のポイントは、検察が末っ子のこぶたは計画的犯行による「殺人罪で有罪」だと主張する一方で、トン三郎の弁護人は身を守るための「正当防衛で無罪」と主張しているところ。

トン三郎が煙突から侵入してきたオオカミをお湯の沸いた大鍋の中にフタをして閉じこめ殺害したことは事実であり、それを前もって準備して計画的におびき寄せて殺害したのなら有罪。突然襲ってきたオオカミから自分の命を守るために殺したのなら、トン三郎は無罪となる。

「三匹のこぶた」は主人公のこぶたたちが正しいと思う人も多いと思うが、法廷ではそれを揺るがす証言が出てくる。「三匹のこぶた」裁判に呼ばれた証人はトン三郎の兄であるトン一郎と殺されたオオカミの母親で、トン一郎はオオカミが襲ってきたときの状況と恐怖を語った。

そして、オオカミの母親は事件当日、家に帰ってこない息子を心配し、カレンダーに「3時 豚肉パーティー トン三郎の家」と書かれているのを見てトン三郎の家に行ったこと。そこで、大きな鍋の中でぐったりとしている息子と『オオカミのただしいころし方』という本を見つけたことを涙ながら証言する。

ほかにも、事件の3日前にトン三郎が大鍋を購入していたことが発覚し、オオカミ殺害は計画的犯行だったのでは疑念を抱かせるのだ。

気になる裁判の判決は、テレビ番組では視聴者に考えてもらうため結審するところで終わっているが、書籍ではその後の裁判長と裁判官、裁判員による評議のシーンが追加されている。

昔話をモチーフにした不思議な裁判。被告人は「三匹のこぶた」の末っ子こぶた。おばあさんを殺され、敵討ちのためにタヌキに様々な仕打ちをした「カチカチ山」のウサギ。嫉妬をつのらせて白雪姫に毒リンゴを食べさせて殺そうとした「白雪姫」の王妃。もし、あなたが裁判員に選ばれたら、判決はどうする?

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