記事提供:日刊サイゾー

今年の日本シリーズは、きっと面白い…ファンの間ではそんな話で持ち切りだった、プロ野球日本シリーズ・広島東洋カープ対北海道日本ハムファイターズ。戦前の見立て通りの「熱戦」が続いている。

逆転劇あり、延長あり、采配の妙あり、と、さまざまな点で見どころが多い。それなのに、中継する側は、どこまでも画一化して伝えようとしている。

民放中継だけを見ていると、今年の日本シリーズは「広島対日本ハム」ではなく、「男気対二刀流」であるらしい。

とにかく「男気」と「二刀流」、つまり“黒田博樹と大谷翔平を扱わなければいけない病”にかかっている状態だ。

たとえば第2戦のフジテレビ。黒田は第3戦の先発が発表されていたため、この日の登板は絶対にない。

だからなのか、「黒田の思いを受け継ぐ野村が先発」といったテロップを何度も差し込んでいた。こうなるから、黒田は日本シリーズ前に引退発表をしたくなかったはずなのだ。

一方、日本ハムの攻撃では、こんなところで大谷を出すわけがない、という場面で「大谷の代打はあるのか?」とミスリード。同様に第4戦のTBS中継では、テロップで何度も「日本ハム3番大谷でタイへ」と表示。

結果、大谷はノーヒットに終わり、中田とレアードのホームランで、日本ハムは2勝2敗のタイへと持ち込んだ。

民放よ、そんなに野球の力を信じられないのか?と言いたくなる。

野球の力を信じられないから、過剰なテロップで「演出」しようとする。もっといえば、野球の力を信じていないから、クライマックスシリーズ・ファイナルステージ中継をしない、という失態を演じてしまうのだ。

テレビ局側の言い分があるとすれば、プロ野球は人気がなく、視聴率が取れないから、というものがあるだろう。野球初心者も興味が湧くように、黒田と大谷の看板を掲げているのだ、との考えもあるかもしれない。

だが、本当に面白い試合は、それだけで優良なコンテンツだ。ましてや、舞台は日本シリーズ。視聴者は、演出された感動ではなく、もっと野球の機微を伝えてほしいのだ。

過剰なテロップは目にうるさいだけでなく、肝心な場面でプレーの上にかぶさり、細かい部分が見えないことがある。試しにNHK‐BSの日本シリーズ中継とワールドシリーズ中継を見ると、その差は歴然。

「BSO」「ランナー」「得点」「イニング」表示以外に無駄な情報やテロップのないNHKの中継画面は、野球が持つ「時間にも空間にも縛られない」魅力を伝えてくれる。

優れたデザイナーほど引き算でデザインし、要領を得ないデザイナーは足し算のデザインをするというが、もっと引き算の野球中継を民放にも目指してほしい。

もし、野球を知らない人にも興味が持てるように…と考えるのなら、野球中継以外でそういった番組を組むべきだ。好例は、クライマックスシリーズ前に放送された『アメトーーク!』(テレビ朝日系)の「広島カープ芸人」だろう。

残念なことに、日本シリーズ前、民放テレビでそのような番組は見つけられなかったが、NHK‐BSとラジオでは野球の魅力を伝える好番組があったので紹介しておきたい。

ひとつは、NHK‐BSで21日に放送された『スポーツ酒場“語り亭”』の「名捕手が語る日本シリーズ」。野村克也、古田敦也、里崎智也の3名の元捕手が、日本シリーズを捕手目線で語る、という内容だった。

この番組で、古田と里崎が注目選手として挙げたのが、広島はエルドレッド、日本ハムはレアード、という「恐怖の下位打線」。この2人をどんなリードで抑え込めばいいのか、という議論が交わされていた。

果たして、エルドレッドは3戦連発弾を放り込み、レアードは第4戦で決勝ホームランを放った。名捕手の見立ては正しかったわけだ。

もうひとつが、TBSラジオで21日放送された『荻上チキ・Session‐22』の「久米宏&伊集院光&えのきどいちろう&加藤弘士!開幕前夜に熱く語る『プロ野球・日本シリーズ』」。

芸能界屈指のハムファンである伊集院とえのきどが涙ながらに語る日本ハムについての熱量は、『アメトーーク!』における「カープ芸人」に引けを取らなかった。

そして、とにもかくにも久米宏だ。あの冷静な久米が妙にテンション高く、トークも若干上滑りする興奮具合は聴いていておかしかったし、リスナーが日本シリーズに向けてテンションを上げる効果を含んでいた。

TBSラジオでは、翌22日も『久米宏 ラジオなんですけど』を広島から生中継。久米はその後、同局の野球中継『エキサイトベースボール』にもゲスト解説として出演。「久米祭り」が展開された。

「リーグ優勝して、99%満足してるんです。でも思いのほか、残りの1%が大きかった(笑)」と語る声は、野球がどんな大人も純朴な少年にしてしまう無垢な魅力を代弁していた。

かつてカープ優勝を賭け、『ニュースステーション』(テレビ朝日系)で坊主頭にまでなった男・久米宏のカープ話を、なぜテレビは扱わないのだろうか?

いずれにせよ、日本シリーズの足し算演出は今さら変わらないだろう。となると、気がかりなのは、来年のWBCだ。きっと、ごてごてと余計な装飾が施されてしまうのだろうなぁ…。

権利侵害申告はこちら

Spotlightのライターなら1記事最大3000円もらえる!日本最大級メディアでライターデビューのチャンス