記事提供:テレビPABLO

『有田ジェネレーション』/2016年10月20日放送・TBS系

最近、バイきんぐの小峠英二のことが気になって仕方がない、と思っているのは私だけだろうか。

『万年B組ヒムケン先生』『有田ジェネレーション』『水曜日のダウンタウン』を毎週見ているせいで、小峠摂取量が一般的な視聴者よりも著しく高いのかもしれない。

ただ、彼の最近の活躍ぶりにはめざましいものがある、というのは誰もが認めるところだろう。

『水曜日のダウンタウン』の調査では、2014年と2015年の2年連続で「ドッキリにかけられた芸能人ランキング」1位になった小峠。罠に引っかかる回数は人並み外れて多い。小峠は受けの天才だ。

彼には人がイジりたくなる何かがある。坂口杏里と交際していたという過去も、彼女がAV出演にまで至った今となっては、神様が小峠を導いた壮大なドッキリだったのかもしれないとすら思えてくる。

芸人をボケとツッコミに分けた場合、小峠はコンビとしてのコントの中ではツッコミを担当している。だが、ツッコミだからと言ってバラエティ番組でイジる側に回るとは限らない、というのがテレビの不思議なところだ。

テレビの中では、ボケとツッコミという役割分担とは無関係に、先輩が後輩をイジり、強者が弱者をイジる。芸歴はそこそこ長いが、テレビに出るようになってまだ日の浅い小峠は、バラエティにおいてはまだ受け身に回る存在である。

先輩芸人と対峙したときに、必然的にイジられる側のポジションをとることになる。

ドッキリ企画で引っかけられたときや先輩芸人に強めにイジられたときの小峠の叫びは、いわゆるツッコミではなく、どうしようもなく追い詰められた人間の悲鳴だ。だからあんなに面白いのだ。

後藤輝基、山里亮太など、練り上げられたフレーズで笑いを取れるツッコミ芸人が増えている昨今、ツッコミにはワードセンスが必須と思われがちだが、小峠を見ていると必ずしもそうではない、ということが分かる。

小峠は、ツッコミでフレーズそのものをあまり重視していない。「高低差ありすぎて耳キーンとなるわ」的な気の利いたフレーズを小峠が持ち出すことはほとんどない。

彼が口にするのは、「何なんだよ」「うるせえよ」「いい加減にしろよ」といった、フレーズ自体はごくシンプルなものばかりだ。そもそも、「なんて日だ」もそれほど特別なフレーズではない。

ところが、これを小峠が、あの顔で、あの声で、あの言い方で言うと抜群に面白くなる。

『有田ジェネレーション』は、そんな小峠の持ち味を存分に楽しめる番組だ。有田哲平が若手芸人を発掘するためのオーディションを開催する、という趣旨の番組。小峠はMCとして番組を仕切り、テレビ慣れしていない若手芸人とも積極的に絡んでいく。

MCという立場ではあるが、小峠は若手芸人との関係では「イジる側」で、有田との関係では「イジられる側」である、という複雑な状態に置かれている。そして、そこが面白い。

この日はハニートラップというコンビの八木という女性が登場。体重100kg台の巨体を持ち、男性経験がない彼女は、1年前にこの番組に出たとき、小峠と熱いキスを交わしていた。

そのキスの味が忘れられず、再び小峠とキスをすることを熱望しているという。有田にも説き伏せられて、小峠はしぶしぶ彼女とキスをすることを承諾。

セクシーダンスで誘惑する八木に小峠が襲いかかった。映像そのものは放送できないほどに小峠が乱れた後で、「どうでした?」と尋ねる彼女に、小峠はこう返した。

「良かったよ」

この一言で爆笑が起こった。そのニュアンスに秘められた優しさ、せつなさ、哀愁。小峠の人生そのものがにじみ出ているからこそ、その言葉は人々の胸を打つ。月並みな言い方になるがどうしても言いたいので言わせてほしい。

小峠という男、やっぱりMUTEKIだ。

コラムニスト

ラリー遠田

1979年生まれ。東京大学文学部卒業。作家・ライター、お笑い評論家として執筆、講演、イベントプロデュースなど多方面で活動。

主な著書に『逆襲する山里亮太』(双葉社)、『なぜ、とんねるずとダウンタウンは仲が悪いと言われるのか?』(コア新書)がある。『ヤングアニマル』(白泉社)に連載中の漫画『イロモンガール』の原作を手がける。

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