知っているようで知らない、だけど気になるあの職業をSpotlight編集部が深掘り取材する連載企画「シゴトペディア」

今回お届けするのは「別れさせ屋」という仕事。一般にはあまり認知されていないため、グレーな印象を持ってしまいますが、実際はどういったことをしているのでしょうか。

お話しを伺ったのは、ちょっぴり強面なイケメン・藤木仁さん(以下、藤木)。創業から17年、1万人以上の相談を受けてきたという「別れさせ屋アクア」を運営する「株式会社アクアグローバルサポート」の代表取締役です。

依頼例に「娘を恋人と別れさせて欲しい」

――「別れさせ屋」とは具体的にどのようなことをしているのでしょうか?

藤木:簡単に言うと、ターゲットの行動パターンを調査し、その人にあった工作員(スタッフ)を派遣してターゲットと付き合い、恋人と別れさせるというものです。依頼内容は様々で、「娘を恋人と別れさせてほしい」といった、依頼人とは違う第三者を別れさせることもありますし、依頼者ご本人様が「パートナーと別れたいから協力してほしい」という依頼もあります。

――「別れたい」という依頼もあるんですね。

藤木:最近は「自分から別れを切り出せない」という人が増えているんです。こういった相談は若い人に多く見られますね。少し前までは「自分自身が別れたい」という相談はほとんどなかったんです。

コミュニケーションがうまくなかったり、言い出すきっかけがなかったり…。そんな理由で悩んでいる人も多いとのこと。

ターゲットに警戒されないためのポイントとは

――依頼から実行までのフローを教えてください。

藤木:まずは無料相談やカウンセリングを行い、依頼される場合は契約となります。契約手続きが済んだら、具体的な調査開始。まずはターゲットを尾行して行動パターンを探ります。

――尾行!よく行く場所や趣味などを調査するのですか?

藤木:もちろんそれもチェックしますが、後々ターゲットに接触するので、それだけではいけません。人の性格は行動に表れてくるので、一つ一つの所作を注意深く観察し、そこから人間性を分析するんです。それがわかれば、友達や恋人になるのは比較的スムーズですよ。

――この「事前調査」が別れさせ工作の土台になるんですね。調査にはどれくらいの回数を要するのですか?

藤木:調査は平均的に7回くらいが目安です実際に接触するために「この時間、この場所にいればターゲットが来る」という状況を事前に把握しておくことが重要。よく行くコンビニやスーパー、電車のホームで待っている位置。その中に無意識の規則性があるので、それを見つけて接触する場所を探していきます。

――うまく接触するポイントは?

藤木:工作員がターゲットより先に接触場所にいるということがポイントですね。人は先に来ている人に対して、警戒心を持ちにくいんです。後から現れるとつけられていたのかと恐怖心を持たれてしまう危険がありますが、さっき見た人が自分より先にいると警戒しないですよね。

――「よく見る人だな」「さっきも会ったな」ということが続くと運命感じちゃいそうです。

藤木:きっとあなたは工作しやすいタイプだと思います(笑)。とにかく自然な流れで出会うことが大切ですね。

工作員はイケメンor美女ならOK?

――スムーズに相手の心を射止めるとなると、やっぱり接触する工作員は美男美女が多いんですか?

藤木:そんなことはありません。実際、そんな人が来ると怪しいと思いませんか?実際にあったのですが、オタクっぽいターゲットに美女を送り込んで欲しいという依頼が来ました。「うまくいかないと思う」と伝えても、依頼者は「そういう人がいい!」と、頑として譲らなかったので、ご要望通り美女を接触させました。

――美女とオタクだと、どうしてもバランスが悪いって思っちゃいますよね…。

藤木:おそらく、ターゲット自身もそう感じたのではないでしょうか。結果、こちらの予想通り、うまくいきませんでした。それを受けて、依頼者からは全面的にプランをお任せいただくことに。そして、次はゲームやアニメが好きな女性を接触させたんです。すると、あっという間に仲良くなり、関係が発展していきました。趣味が合うと会話が広がりますし、心の距離が縮むのが早いんです。

ドラマティックな状況やキュンとするようなシーンを作るのではなく、現実で起こりうるものを盛り込んでいくことが大切なんですね。

任務のために通常の恋人同士のように過ごす

――成功と言えるのは、「ターゲットが別れたら」なのでしょうか。

藤木:弊社では任務の成功を3段階に分けています。まず、接触して連絡先を交換することが第一段階。第二段階は連絡を取り合って食事などに行くこと。そして最後は依頼者の方と、具体的に相談して決めた成功条件をクリアすることです。成功条件の多くは、ターゲットと工作員が付き合って、依頼者の方と別れるまで、というところまでが多いですね。

――工作員はターゲットにバレることなく普通の彼氏・彼女のように過ごすのですか?

藤木:普通の恋人同士のように接しているので、ターゲットはきちんと付き合っていると思っています。工作員はターゲットと自然に付き合い、自然に別れないといけないので、それなりの期間お付き合いが継続することが多いですね。長くて1年くらいお付き合いしたという人もいます。何年か経って振り返ったときに工作員はターゲットにとってあくまでも元カレ・元カノでなければなりませんから。

――1年も付き合うと、普通のカップルでも長い方ですよね?(笑)

藤木:そうですね。実は私も昔、研修がてら工作員をやっていたんです。そのときのターゲットの女性に「結婚前提の挨拶として実家の両親に会って!」と言われて連れて行かれそうになったことがあります(笑)。うまくかわしましたけど、そうしたハラハラすることもありますね。

体を張って任務を遂行する「別れさせ屋」というお仕事。聞いた響きでは、色眼鏡で見てしまいそうですが、徹底的な事前調査と、絶対にバレないように振る舞う工作員たちのプロ意識に感心しきりでした。

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