知っているようで知らない、だけど気になるあの仕事をSpotlight編集部が深掘り取材するコーナー「シゴトペディア」。今回は、行楽の秋、レジャーの定番スポットで活躍する「動物園の飼育員さん」の仕事に迫ります。

井の頭自然文化園 正門

自然にあふれ、動物がのどかに過ごす動物園は、老若男女問わず癒やされる空間。毎日動物のそばで働く飼育員さんの仕事に、一度は憧れた人もいるのではないでしょうか。

ですが、いくら好きでも毎日一緒にいれば、少しは「動物と離れて過ごしたい!」という気分になるのでは…。飼育員さんたちのリアルな気持ちが気になります。そこで今回は、東京・吉祥寺にほど近い場所にある「井の頭自然文化園」で女性飼育員を務める、東條(とうじょう)さんにお話を伺いました!

動物園飼育員になるのは狭き門

井の頭自然文化園の東條さん

――まず東條さんは、どうして飼育員の仕事を目指すようになったのですか?

東條「私は幼いころからウサギやハムスターを飼っていて、ずっと動物が大好きだったんです。小学生のころにはすでに『飼育員になりたい!』と思っていて、卒業文集にも夢として書いたほどです。実際に飼育員になるために、大学時代には畜産学や野生動物学、動物園学などを学びました。そのときに、動物園には『動物=命を伝える』という役割があることを知り、情熱がますます高まりました」

――動物好きな人は多いため、採用倍率が高そうなイメージです。

「そうですね、本当に『狭き門』です。動物園ごとの飼育動物の頭数も限られていますし、ほとんど欠員募集のみ。1年間まったく募集がない、という年もあるので、倍率も相当高いんです。私の最初の就職先は、北九州市にある動物園でした。実家は神奈川ですが、『募集があればどこにでも行く!』という覚悟で、はるばる九州まで向かいましたね。私の場合は、大学卒業直後に就職できましたが、本当に運がよかったなと思います」

飼育で大切なのは「見守る」こと

東條さんが飼育を担当するオオハクチョウ

――これまでにどんな動物の飼育を担当してきましたか?

「私は飼育員としては今年で9年目になりますが、以前いた九州の動物園ではマンドリルやチンパンジー、ロバなどの飼育担当をしていました。井の頭自然文化園では、カモやガン、ツルなど14種類、約70羽の水鳥を担当しています。今まで担当してきた動物とはまったく違う種類なので、班の先輩にも教わりながら、一から勉強中です」

――飼育ではどんなことに気を遣っているのでしょうか?

「水鳥たちは警戒心が強いので、直接触れることは必要最小限です。触るのは体調が悪そうなときと、体重測定のときでしょうか。飼育員といっても、ずっと動物に触り続けているわけではないんです。みんな野生動物ですので、大切なのは『見守ること』なんです

意外に時間にゆとりがある?飼育員の仕事のリアルとは

東條さんが飼育を担当するヒドリガモ

――動物への愛情は人一倍だと思いますが、ご自身でも飼われていますか?

「ご期待に添えず申し訳ないですが(笑)、今はプライベートでは飼っていません。まだ転園して間もないので、生活が落ち着いたら飼いたいと思います。私が飼ってみたいのはインコですね。同僚たちはプライベートでも飼っている人が多い気がします。イヌ、ネコのほか爬虫類とか…。やっぱりみんな、動物が大好きなんですよ」

――飼育員さんの仕事は、宿直など拘束時間が長いイメージがあります。お家にいる時間も少ないのかな、動物を飼うのは難しいのかな、なんて思うのですが、実際のところはどうですか?

「飼育員は、ほかの仕事に比べて勤務時間が長いわけではありません。私が働く動物園では、基本的に8時半~1715分の勤務です。『泊まり込みで働いているんじゃないか?』と聞かれることが多いのですが、現在は宿直はありません。ですが、動物が体調を崩すなど、状態によっては早朝や夜間の勤務も臨機応変に対応します。週2日の休みですが、最低1名は出勤しなければならないので、どの日を休みにするかは、班員と相談しながら決めています。それ以外にも、有給休暇も取得することができます」

――ほかにも周りから勘違いされているな、と思うことはありますか?

飼育員になったら『いろんな動物に触れられる』というのは違っているかもしれませんね。動物園で暮らしていても、できる限り野生動物と同じように接しなければなりません。人に慣れる動物もいますが、水鳥のように臆病な動物もいます。ですから、基本的に極力触れずに、一定の距離を保って飼育することが動物のためでもあるんです」

休日も頭の中は動物のことばかり

井の頭自然文化園の水生物園

――お休みの日はどうやって過ごしますか?「少しは動物と離れたい!」と思ってしまうことはないんですか?

「仕事ではいつも動物と一緒に過ごしていますが、休日も結局、考えるのは動物のことですね。たとえば、ショッピングしているときに、担当している動物のグッズを見つけたら、つい買ってしまいます(笑)。あと、チンパンジーの飼育を担当していたころは、街を歩いているときに、街路樹を見て『キレイ…』と思うよりも、『おいしそう、チンパンジーたちにも食べさせてあげたいな…』なんて考えていました。やっぱり動物からは離れられないです」

――それは深い愛情ですね!まるで恋人を思うようです…。

「ほかにも休日は他の動物園へ行ったりもしますが、仕事と違う分野にも触れるように心がけています。博物館やミュージカルによく行きますね。そこで注目するのは『メッセージの伝え方』。私たちも『命を伝える』仕事なので展示物を製作する際に、紹介文や舞台の小道具、演出などはすごく参考になります」

――最後に、これからのお仕事の目標を教えてください。

「私が担当している水鳥たちは、春から夏前が繁殖期なのですが、中には親鳥が卵を抱かなくなり、人工的にあたため、ふ化させる場合があります。ふ卵器という機械の中で温度や湿度を調節しながら育てるのですが、初めて担当した今年はなかなか上手くいきませんでした。来年からは、少しでも多くの卵をかえせるよう努力したいですね」

井の頭自然文化園の水生物園

「触れずに、見守ることが大事」と、意外と知らなかった飼育員さんのお仕事のリアル。動物への愛情は、やはり奥深いものを感じました。

紅葉や自然の美しさも感じられるこれからの時期。井の頭自然文化園をはじめ、最寄りの動物園に足を運んだときは、ぜひ飼育員さんの頑張りにも注目してみてください。

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