連日過酷な労働環境、いわいる「激務」による自殺者が後を絶たない。某企業の24歳女性の自殺報道が記憶に新しいが、それらのニュースを見た人は「どうして仕事をやめなかったの?」と誰しも思うだろう。

端から見ると安易に退職するという考えは浮かぶものだが、当事者になると違う。筆者も前職では現場責任者として働き「激務」に値する労働環境に身を置いていた。規定時間外労働(休日含)は150時間近い月もあった。

激務が続くと、人の考えは「麻痺」を起こす。激務を経験した当事者だからこそ分かる心理状態を紹介しようと思う。

激務心理1:17時帰りは半休、22時帰りが定時退社

通常企業の「定時」は始業時間から7.5時間〜8時間働いた後の、17時〜18時に設定されていることが多い。だが激務の環境では、まず定時の感覚が麻痺する。夜22時、深夜残業の前までが「定時」という感覚になる。普通の人にとっての定時退社の時間は、激務の現場の感覚では「午後半休」のような感覚になる。

日々の業務も常に22時までかかるし、逆にスケジュールも夜22時まで仕事する前提のものを要求されたりする。17時に仕事が終わって帰ってよしとなると、逆に戸惑いが発生したり、不安になったりする。

激務心理2:異動申請や休業申請が許されるのは倒れてから

長時間労働とはいえ、自分以外のメンバーも同じ辛い環境のなかで頑張っている。自分がいなくなった場合、本来自分がやるべき仕事を別の人がやらなければならない。

ただでさえ一人一人への業務負荷がかかっているのに、自分がやるべき仕事を他の人に任せたら、その相手は確実に破綻してしまうし、自分のことをどう思うだろう…と考えると、とても安易な気持ちでその現場を抜ける行動など起こせない。

異動や休業を申し出るというのは、同じ仕事をするメンバーへの「裏切り行為」に匹敵する感覚に陥る。真面目に働く人ほど、自分を殺してでも、仕事や仲間を優先してしまうのだ。

激務心理3:身体が辛いのは自分が弱いから

皆内心辛いと思っていても、職場にいけば同じように長時間稼働している。いきなりパタパタと倒れる人などいないのだ。疲れていても、普通に仕事の会話もするし、パソコンで資料も作るし、笑うこともある。

自分が倒れそうなくらい辛くても、同じ環境で他の人も働いていて、同じ時間仕事をしている。こうなると身体が辛くても、「自分の身体が弱いだけではないか?」と錯覚する。

逆に誰かが倒れて残業時間が100時間だったとしても、周りは「自分は120時間ですけど?」と思う人や「あいつは身体が弱いな」「忍耐力がない」と感じる。なぜなら自分も同じ環境で働いてるにも関わらず倒れず仕事ができているからだ。

このように激務な環境にいると、考え方に「麻痺」「錯覚」を起こす。「今日は暗いうちに帰れるね」という声が聞こえてきたり(本来は夜が明けてから帰るということ)、筆者も14日連続勤務したこともあったが、後輩が20日連続勤務していたことを聴いたら、そうか、なら私は普通か。と納得していたものだ。

ただその状況が数ヶ月続くと、クラっときて椅子から落ちそうになったり、気持ち的には辛くないのに朝身体が起きない不思議な感覚に陥ることもあった。身体は確実にダメージを受けていた。

ちなみに私の同期は、逆にもう倒れたいという想いから、会議中息を止めていることもあったそうだ。(良い子は真似してはいけない。)

忠告1:本来の時間軸、感覚を失ってはいけない

別の部署で働いていた仲間から「今日は早くあがるんです。21時頃。」と言われたとき、「いや、それは早くないんですよ、定時は18時ですから。」と答えたことがある。

筆者も、同期と話しているときに「休日がない方が身体が元気で疲れないことに気付いた」と普通に感じたことを話したら、「それは違うよ。おかしくなってるよ。大丈夫?」と言われて、ハッと気付いたものだ。

今過酷な労働時間に慣れてしまっている人達に伝えたい。本来は8時間労働が基本なのだ。定時退社が基本なのだ。週休2日が基本なのだ。

残業を当たり前にしてはいけない。休日出勤を当たり前にしてはいけない。この感覚だけは、忘れてはいけない。

忠告2:あなたがいなくても、意外と仕事はまわるのだ

「自分がいなくなったら仕事がまわらなくなる…」と思う人はたくさんいるだろう。責任感の強い真面目な人ほど、思うだろう。だが、がっかりするかもしれないが、そんなことはない。意外と仕事はまわるのだ。たとえあなたの立場が、リーダ、課長、部長、その他責任の重い役職だったとしてもだ。

以前、リーダ職のかなり優秀な取引先の男性が退職したが、その3ヶ月後会った時に彼が「俺がいないとプロジェクトが回らないと思ってたのに、なんだかんだ回っているのを知ってショックを受けた」と言っていた。

引き継ぎをしっかりすれば後任は2週間たてばだいたい仕事内容を把握できる。引き継ぎがされなくても、後任は1ヶ月たてばだいたい仕事内容を把握できるのだ。

忠告3:あなたの代わりに仕事をしてくれる人はいくらでもいるが、あなたの人生を代わりに歩む人は誰もいない

耳が痛い話だが、仕事の代わりはいくらでもいる。でも、あなたが自分の人生を諦めてしまったら、あなたという一人の人生は終わってしまう。自分を押し殺してまで、仕事をする必要はない。

同じように頑張っている仲間を置いて、自分だけ逃げるのは気が引ける…その気持ちは痛い程よくわかる。筆者も同じで、だからこそ異動でも休業でもなく、退職という道を選んだ。それくらいの覚悟がないと私は職場を去ることができなかった。

でも本当に辛いなら、明日が来るのが恐いくらい追いつめられて、死よりも生きる方が辛いと思う程ならば、仲間も置いてでも、その場から逃げていい。罪悪感に打ち勝って逃げてほしい。

逃げることは悪いことじゃない。「自分」を愛してほしい。


私が伝えたいことは、以上です。

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元キャリアウーマン。2009年から7年間会社員として働き、順調に出世、メンバー16名を抱える現場責任者となった。
キャリアを積んだ後、新しいことに挑戦したくなり、退職。(会社には感謝しています。)

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