「一雨ごとに寒くなる」という言葉をひしと感じる。雨が上がり、吹く風の冷ややかさに、夏が次の季節を連れてきたのだと思わずにいられない。

それでも、人によってはまだ夏を噛み締めているかもしれない。かつて、夏を駆け抜けた人気ドラマのセリフにこのようなものがあった。「自分で夏は終わりだと思ったら、そん時が終わりなんじゃないかな…」。

夏、それも海辺を舞台にしたドラマは、カラッとした明るさをテレビの向こうから届けているようで、実は切なく心を揺さぶる言葉を多く閉じ込めていた。それは、主題歌にも同様に包まれている。そんな「過ぎゆく夏を想いながら感じたい、90年代の海辺が舞台の夏ドラマ主題歌」。心を揺するナンバーはどれですか?

あの時、あの曲。

#18 過ぎゆく夏の終わりに感じたい、90年代の「海辺が舞台の夏ドラマ」主題歌たち

1. 『君といた夏』(1994)

「Hello, my friend / 松任谷由実」

“Hello, my friend 君に恋した夏があったね みじかくて 気まぐれな夏だった”

出典松任谷由実『Hello, my friend』

1994年、フジテレビの月9ドラマとして放送された『君といた夏』。主演に筒井道隆さんを迎え、いしだ壱成さん、瀬戸朝香さんを中心に織りなされた同作は、“ラブストーリー”と括るにはあまりにも切なさに満ちた物語だった。

オープニングで流れる、松任谷由実さんの『Hello, my friend』。タイトルバックで海辺の砂浜の大きなキャンバスに、3人がそれぞれ異なる方向に塗料のついた筆を滑らせていくシーン。それはまるで、同じひと夏を過ごしながら、決して交わらない方向へ生き進んでいく彼らを投影しているようだったことが思い出される。

“Hello, my friend 今年もたたみだしたストア 台風がゆく頃は涼しくなる”

“悲しくて 悲しくて 君のこと想うよ もう二度と 会えなくても 友達と呼ばせて”

出典松任谷由実『Hello, my friend』

この記事の冒頭でも記述したように、台風が過ぎ去るたびに涼しく、寒くなっていく空気感がもたらす切なさがある。だが、もう戻れないひと夏だからこそ、想い出として永遠に存在しつづけるものがある。同作はそんなことを私たちに教えてくれていたのかもしれない。

松任谷由実さんはご自身のライブで『Hello, my friend』を歌う直前、オーディエンスにこのような言葉を託していた。

「今年の夏が皆さんにとって、また素敵な、想い出深い夏になりますように」

出典 YouTube

2. 『パーフェクトラブ!』(1999)

「ここではない、どこかへ / GLAY」

出典 https://s.awa.fm

こちらから、視聴ができます)

90年代最後の“夏クール月9”ドラマとなった、福山雅治さん主演の『パーフェクトラブ!』。第1話では、福山さん演じるナンパ好きの歯科医・楠武人が、悪友・中西リュウ太(ユースケ・サンタマリアさん)とバリ島へバカンスに出かけ、玉の輿狙いで“イイ男”狙いに余念がない四流企業OL・小山田千草(木村佳乃さん)とあっさり一夜をともにしてしまうところからスタートする。

“ここではないどこかへと 胸を焦がすよ 無邪気な季節を過ぎ 今誰もが戦士達”

出典GLAY『ここではない、どこかへ』

日本レコード協会の集計でミリオンセラーに認定された、主題歌『ここではない、どこかへ』。ナンパな男性と、計算高い女性が、一見今の自分を誇らしく思っているようで、内心もがきながら“本当の恋”を探し求めるシチュエーションに「ここではない、どこかへ」という言葉が重なりあっていくようだ。

GLAYにとって最後の8cmシングルになった同曲。一方の『パーフェクトラブ!』も90年代ラストの月9ドラマとなり、時代の変化を大きく思わせるターニングポイントとなったのも確かだろう。

出典 YouTube

3. 『ビーチボーイズ』(1997)

「Forever / 反町隆史 with Richie Sambora」

“風がゆれてる 波が唄ってる 俺は今日も歩いてる”

出典反町隆史 with Richie Sambora『Forever』

反町隆史さんと竹野内豊さん。その字面だけでも、ときめきを及ぼしてしまうお二人が、主演をつとめ、“どっち派?”なんて盛り上がったものだ。都会では出会うはずもない彼らが、しばしの休息を求め海の見える地へと向かい…辿り着いたのは、寂れた民宿“ダイヤモンドヘッド”。

看板娘の女子高生役に広末涼子さん、経営者に“日本ではじめてサーフィンをやった男”が自称のマイク眞木さんを迎えた。広末涼子さん演じる“真琴”のポジションが、単純に羨ましかったという世の女性は数知れず…。

Forever』は、反町隆史さんが“with Richie Sambora”名義で発表した、歌手デビューシングル。ボン・ジョヴィのリッチー・サンボラさんをギタリストに迎えるだけでなく、反町隆史さんご自身が「僕は僕自身の言葉で語りたい」と歌詞を作られたことも特筆すべきところだ。

“変わらずに流れて行く 時は止められない これからの道で何があっても 今を忘れないさ”

出典反町隆史 with Richie Sambora『Forever』

やっぱ、海じゃん?”。カラッとした明るさをもたらす男たちのイメージが前面にあったようで、常に別れの切なさを滲ませていた同作。“ずっとこの海の側にいられたら”という想いの一方、“変わらずに流れて行く 時は止められない”という歌詞の内容を持ち合わせていたからこそ、彼らは眩しく存在していたのかもしれない。

また、それまでラブストーリーが主流だった月9作品としては、珍しく男同士の友情を軸に描き、夏クールの月9としては現在まで本作を越える平均視聴率を記録したドラマ作品はないほどの人気を博した。以後、月9は男性俳優を主演としたストーリーを展開するなど、その幅を広げていく。

4. 『恋のパラダイス』(1990)

「JEALOUSYを眠らせて / 氷室京介」

出典 http://www.himuro.com

こちらから、一部視聴ができます)

のちに、“トレンディドラマの集大成”と呼ばれた『恋のパラダイス』。90年代に突入した初夏を彩った同ドラマの主演をつとめるのは、トレンディドラマ女優の代名詞・浅野ゆう子さん。三姉妹の長女という設定で、2人の妹たちに鈴木保奈美さん、菊池桃子さんを迎えます。さらに浅野ゆう子さん演じる長女・津波を巡る男性陣は、石田純一さん(元夫)、陣内孝則さん(お見合い相手)、本木雅弘さん(妹の恋人)と、全員が主演級の顔ぶれとなった。

タイトルバックでは、黄色いボックスカー、ヤシの木、青い海と空といったコントラストが描かれ、まさにトレンディを匂わせる演出。三姉妹の住む家は、鎌倉・七里ヶ浜に構えられ、全編を通して“七里の海”が舞台となっていたことが思い出される。

“抱き合う指に眠れないジェラシー おまえのすべてを奪うものがあれば許せないヨ”

出典氷室京介『JEALOUSYを眠らせて』

“シーツの Dress にくるまって今おまえは まどろみを続けてる そして真夜中のランデブー 何度目かの運命に出会うだろう”

出典氷室京介『JEALOUSYを眠らせて』

JEALOUSYを眠らせて』は、氷室京介さんの楽曲の中でも数多くのバージョンが存在し、その都度、新規レコーディングが成されているナンバー。ドラマを彩った歌詞には、“90年代初期のまばゆさ”が散りばめられながらも、今なお彼すべてのベストアルバムに収録され続けていることから、普遍さを感じずにはいられない。

5. 『海まで5分』(1998)

「海まで5分 / 森高千里」

鎌倉の海を舞台に、義理の両親と同居することになった夫とその妻。薬丸裕英さんと沢口靖子さんがコミカルに演じられていた。ただでさえ薬丸さんの演じる夫は義理の両親との新生活にたじたじ。さらには沢口さんは4人姉妹という設定で、いつの間にか“姉夫婦2組”も同居が決定…という、賑やかなひと夏を描いたホームドラマ。

“海まで5分 歩いてみよう 波の音が 聴こえてきたよ”

出典森高千里『海まで5分』

主題歌は、まさかのドラマと同名『海まで5分』。ドラマと主題歌が相互作用するように親しまれたのはいうまでもない。実は、ファンや音楽通にはお馴染みだが、森高千里さんはほぼすべての楽曲の“作詞”を担当している。その数は200曲ほど。

ホーンの音色が心地良い同曲も、もちろん森高千里さんが作詞。作曲にはあの久保田利伸さんを迎え、“まばゆい夏”を象徴するナンバーとして歌い継がれている。

出典 YouTube

いかがだっただろうか。どれも、“夏まっさかり”の楽曲というよりはむしろ、季節が過ぎゆく今だからこそ沁みるナンバーだと感じさせる。

海辺と舞台にした、それも90年代のドラマとなると、極端に数が少ない事実がある。そのわずかな作品の主題歌が、どれも切なさを掻き立てる楽曲だったこともあり、“海辺の夏ドラマはキュンとする”という概念を作り上げたのかもしれない。

「夏の終わりは自分で決める」。改めて、今年の夏に想いを馳せてみるのはどうだろう。その瞬間に今回ご紹介した楽曲が側にいてくれたら…きっとひと夏を、より愛おしい記憶へと変えてくれそうだ。

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