【朝倉秀雄の永田町炎上】

■政治資金パーティー会費の領収書は「白紙」が常識(?)

筆者は先に小池百合子都知事の国会議員時代の「白紙領収書」の問題を指摘した。案の定というか、菅義偉官房長官や稲田朋美防衛相にも飛び火したようだ。

他の議員の政治資金パーティーに出席した際、金額が空欄の「白紙領収書」を受け取り、自分たちで金額を記入し、2012年から14年までの3年間の「政治資金収支報告書」に添付していたのだという。

某新聞などは『社説』で「世間の常識とかけはなれた『慣行』である国会議員が他の議員の政治資金パーティーに出席した際に白紙の領収書を受け取り、自分の事務所で金額を記入する手法が常態化していた疑いが浮上している。…パーティーの白紙領収書も、裏金作りなどに悪用される懸念は否定できない。…世間の常識に、政界は早く追いつくべきだ」などと手厳しい。

だが、かつて政策秘書として17年間、政治資金パーティーの段取りや後援会作り、カネ集めなどさんざん「泥水」を飲んできた筆者に言わせれば、そんなことは何も菅や稲田に限った話ではない。

「常態化している疑い」どころか、永田町では「常識(?)」だ。

というのは、受付係が「白紙領収書」を切るには、それなりの理由があるからだ。

■まるで「互助会」にも等しい自民党の「政治資金パーティー」

選挙費用や事務所の維持費、私設秘書の給与、冠婚葬祭費、子分たる県議や市議への小遣いや陣中見舞いなど選挙に打ち勝ち、「センセイ」と呼ばれる快適な身分を維持するには、湯水のようにカネがかかる。

そんな年がら年中、カネに追いまくられている議員たちの「生活の知恵」が生み出したのが「政治資金パーティー」だ。誰が最初に考え出したのかは知らないが、これはカネを集めるには実にうまい方法だ。

1人の人間が何千万円もの大金を献金するのは大変だが、1万円や2万円ならあまり苦にはならない。1人当たり2万円でも千人集まれば2000万円になる。

要するに「負担の分散化」を図ることで政治資金を集めるアイデアで、いまは政治家個人だけでなく、自民党では「派閥(業界用語で「ムラ」と言っている)」の年中行事ともなっている。

自民党では招待状は同じムラの議員を中心に、たとえムラが違っても多少とも縁がある議員には秘書が持っていく。なかには強欲にも日頃付き合いもないのに、同じ党の議員の全員に送りつける者もいる。

パーティー券には儀礼上「御招待」のスタンプを押すが、むろん形だけで、それを真に受け、手ぶらで出席する者など誰もいない。カネ集めが目的だとわかっているのだから、当然であろう。

そればかりか、議員本人や代理の秘書が出席しなくとも2万円の会費だけは部屋に持参するしきたりが確立している。そうしておけば、自分の時も「お返し」があり、互いに損はないからだ。

「美しい助け合い精神(?)」と言おうか、まさにお互い様の一種の「互助会」である。

■「金額が空欄」なのは議員の「格」によって中身が違うから

会費の相場は都内で開く場合は2万円、地元では1万円だが、それはあくまで一般議員の場合であって、「来賓」として呼ばれる総理や議長、党三役や有力閣僚、ムラの領袖、大幹部などの、いわゆる「大物」ともなれば、とてもそんな金額では済まない。

きらびやかな水引きをかけた「祝儀袋」の中に10万や20万くらいは包まないと格好がつかない。「大物」らしく「太っ腹」なところを見せなければならないわけだ。

筆者も現職秘書時代、何度か「政治資金パーティー」の段取りをしたことがあるが、元総理のご子息にして大臣を二期勤めた同じムラの大幹部からいただいた祝儀袋を後で開いてみたところ50万円入っていて感激したくらいだ。

むろん受付係としては、「偉いセンセイ」が差し出した祝儀袋をその場で開き、額を改めるような失礼な真似はできない。いくら持ってきたのか分からなければ、金額を書き入れようがなく、「白紙領収書」を渡さざるを得ないのは致し方ないことだろう。

■「将来の総理候補」としてはセコすぎる稲田防衛相

ちなみに菅義偉官房長官は約270枚の領収書で約1875万円。1回当たり約7万円包んでいることになる。菅は閣僚歴は2度目だが、当選回数は7回。その点からは必ずしも「大物」とは言えないが、「最強の官房長官」としての矜持があったのであろう。

それに比べ稲田朋美防衛相は約260万枚で約520万円だから、1回につき一般議員と同じ2万円しか包んでいないことになる。稲田は当選回数こそまだ4回だが、閣僚歴は菅と同じ2回。

おまけに大臣より偉い党三役の政調会長までやっているのだから、経歴としては菅よりも「格上」で、本来なら2万円では済まないはずだ。

にもかかわらず2万円しか持っていかなかったのは、女性議員特有の「吝嗇さ」からであろうが、「将来の女性総理候補」としては、いかにもセコイような気がする。

いずれにせよ「白紙領収書」よりも、稲田の「器」の小ささの方が問題ではないだろうか。

稲田といえば、辻元清美や蓮舫など過去の言動と防衛相としての答弁の整合性のなさを追求され、特には「涙ぐむ」場面などもあって、さかんに「大臣としての資質」を問題視されているが、一議員としての発言と内閣の一員としての答弁が違うのは、立場上、当たり前の話であり、むしろ稲田の防衛相としての資質を問題にするなら、いざ有事の際の自衛隊に対する総理に次ぐ高級指揮官としての能力の方であろう。

文・朝倉秀雄(あさくらひでお)

※ノンフィクション作家。元国会議員秘書。中央大学法学部卒業後、中央大学白門会司法会計研究所室員を経て国会議員政策秘書。衆参8名の国会議員を補佐し、資金管理団体の会計責任者として政治献金の管理にも携わる。

現職を退いた現在も永田町との太いパイプを活かして、取材・執筆活動を行っている。

著書に『国会議員とカネ』(宝島社)、『国会議員裏物語』『戦後総理の査定ファイル』『日本はアメリカとどう関わってきたか?』(以上、彩図社)など。最新刊『平成闇の権力 政財界事件簿』(イースト・プレス)が好評発売中。

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