記事提供:ORICON STYLE

演技派と呼ばれる若手女優のなかでも、とくに作家性の強い作品に多く出演しているように見える橋本愛。

作品の規模に関わらずにこだわりをつらぬく独自のスタンス、セルアウトしない女優魂を突き動かすものとは?成長中の女優の素顔に迫る。脚本作りにも深く関わった新作『バースデーカード』についても聞いた。

ベタをやることに勇気が必要だった

――橋本さんがこれまで出演してきた作品に比べても、『バースデーカード』は王道の感動作になりました。

橋本愛 最初はベタをやることに勇気が必要でした。でも今は王道の作品が少なくなってきているとも思っていたので、やるなら絶対に丁寧にやらなくてはいけないなと。

吉田監督も「王道を堂々とやりたい、母娘のバディムービー(相棒映画)にしたい」とおっしゃっていて。そうなったらカッコいいし、実現させたいなと思いました。

――脚本作りの段階で、吉田監督と積極的に意見を交換し、脚本作りにも深く関わったそうですが。

橋本愛 
子ども時代から大人になるまで、人の半生をじっくりと描く作品というのは、今までほとんどやってこなかったんです。

だから、人生の冒とくになるようなことだけはしたくない、そのひとの人生にそれだけ深く関わるなら、演じるうえでの恐怖心だけは取り除いておきたいと思いました。

少しでも観る人の気持ちに隙を作りたくないというか、そこは違うんじゃないとか斜めからの視線を取り除きたかった。私自身は役者としての気持ちでお話をしたんですが、それが結果として脚本を変えることになってしまって。

その責任は重いかなと思ったんですが、でも私はその人生を生きるために必要なことをやったという感覚が一番近いです。

――具体的にどのような意見を交換したのでしょうか?

橋本愛 
結婚に対する考え方ですね。確かに結婚というのは人生における幸せの象徴だと思いますが、でも結婚が幸せのゴールであるような考え方は怖いですと。

結婚した後も人生は続くわけだし、その人の人生がちゃんと幸せであると納得させられないのはダメだと思ったんです。それから母親に反抗する、ということですよね。

最初の脚本では、(橋本演じる主人公)紀子は母親の手紙に素直に向き合って成長していくんですけど、それだとちゃんとひとりで、二本足で立っている人間という想像ができなくて。

成長の過程で自我を持って、手紙とぶつかるということは健全なのではないかと。そう伝えさせていただきました。

撮影現場のメイキングカット。

監督から演出を受ける橋本愛。

――普段からそういった意見は言う方なのでしょうか?

橋本愛 
私は普段、そのセリフは言いにくいとか、この役はこういういことはしないとか、脚本に対してそういったことは言いません。むしろ、脚本通りにできない自分の方がおかしいと思うタイプです。

でも今回は、観ている人にちゃんとまっすぐに感じて感動してほしいという気持ちになっていたというか。観た人全員を感動させるんだ、くらいの気持ちでいきたいと思っていました。

――今作を経て、この先の作品への向き合い方が変わりました?

橋本愛 
基本は完成された脚本に添って作品を作っていくということです。今回は、登場人物の人生をドキュメンタリーのように追っていく作品だったので。そこに必要なのはその人生に対する尊敬かなと思ったので、たまたまそういう手段をとったというだけなんです。

私に少女漫画原作の話自体が来ないです(笑)

――橋本さんは、今までどこか影のある役が多かったようにも思うのですが。

橋本愛 
私の顔の造形上、レンズを通せば影が出るようになっていますから(笑)。見た目的なことだけでなく、内面的にも影があるような役で私を映したいと思っていただけて、そういった役をくださるわけですから、ありがたいことですし、それ自体に抵抗があるわけではありません。

でもそういった影のある役をやってきた私だからこそ、今回は今までと違う顔を見せたいと思ってくださってこの役が来たと思うんです。私から役柄や作品を選んでいるということはないです。お話をいただいて、おもしろそうな作品ならやるというだけです。

――共演者の宮崎あおいさんも映画にこだわってきた女優さんのひとりだと思いますが、橋本さんにも同じ匂いを感じます。映画へのこだわりはあるんですか?

橋本愛 
もちろん映画はすごく好きですし、映画の現場も大好きです。でも、映画という場所にこだわっているわけではなくて、脚本が好きならドラマでも舞台でもやりたいと思っています。

そういうなかで、たまたま映画が多くなっているだけですかね。すごくいいなと思うドラマはいくつもありますし、この人の書いたセリフをしゃべりたいなと思うこともたくさんありますから。

――同世代の女優さんがキラキラした高校生役で出演する映画がヒットしていますが、例えば少女漫画原作ものとか、そういった作品にも興味はありますか?

橋本愛 
そもそも私に少女漫画原作の話自体が来ないです(笑)。私のキラキラした姿なんてそんなに見たくないんじゃないですかね……(笑)。

もちろん少女漫画は素敵な作品が多いですし、同年代の役者さんやスタッフの力ですばらしい映像作品になっているものも多いので、興味はあります。お話をいただけて機会がうまくあえば、私もきっとやるんだろうなと思います。

イメージを壊したいというより、飽き性だから次は違うことをやりたい

――とはいえ、女優としての立ち位置にはブレがないような気がします。結果としてかもしれませんが、作家性の強い作品を選んでいるようにも見えますが。

橋本愛 
たまたまというのはあると思います。そういう運があったんだと思うし、そういう顔や雰囲気だったんだろうなと思う。そういう意味ではすごく恵まれているなと思います。自分がどういう女優になりたい、ということはあまり考えていないんです。

その時その時でやりたいと思ったものをやりたい。あとはこういう取材で作品を宣伝する時に、ちゃんと自信を持って話せるものだけをやりたい、というわがままな気持ちもあります。

――自分のイメージを壊したいという気持ちはありますか?

橋本愛 
イメージを壊す……。そう思っていた時もあったのかもしれないですけど、今はあまりしっくりこないですね。イメージを壊したいというよりは、今まで何回もやってきたから、次は違うことをやりたいという気持ちはあります。

それは単に自分が飽き性というだけなんですが。基本的に自分では何でもやりたいと思っているので、とにかく先入観で見切らないようにしようと思っています。

――デビュー当時と比べて、作品への向き合い方もだいぶ変わっていると思いますが、女優としての意識の変化はいつ頃から? やはり『桐島、部活やめるってよ』あたりからですか?

橋本愛 
そうですね。それ以前の私は仕事が全然好きじゃなかったですし、いつ女優を辞めてもいいという気持ちでした。でも『桐島~』は、スタッフさんも含め役者さんも、本当にプロフェッショナルな人たちばかりで。

そこで意識が変わって、ちゃんと女優として仕事がしたい、自分が今いる場所をよくしていかなくてはいけないと思うようになりました。今は女優を辞めないようにがんばろうと思っています(笑)。

(文:壬生智裕/撮り下ろし写真:鈴木一なり)

バースデーカード

引っ込み思案な性格で落ち込む紀子(橋本愛)をいつも励ましてくれたのは母・芳恵(宮崎あおい)。紀子が10歳の時に、優しくて明るい芳恵が病気で亡くなってしまう。

20歳を迎えるまで毎年手紙を贈ると生前に約束していた母から、本当に手紙が届き、たくさんの出会いと大切なものを教えてくれた。

監督・脚本:吉田康弘
出演:橋本 愛 ユースケ・サンタマリア 須賀健太/中村 蒼/宮崎あおい
2016年10月22日(土)公開
(C)2016「バースデーカード」製作委員会
【公式サイト】(外部サイト)

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