記事提供:幻冬舎plus

東京には、観光スポットとしても人気の浅草寺・増上寺といった大寺院から、地元の信仰を集め続ける霊験あらたかなお寺まで、大小さまざまなお寺があります。

身近なところに意外な歴史を持つ古刹があったり、なんとなく通り過ぎていたお寺に有名人のお墓があったりと、街歩きの目的としても興味深い寺院が、じつはたくさん佇んでいるのです。

自然を残し、静かな時間が流れる境内は、都会の癒しスポット。都内39のお寺を紹介している『ぶらり東京・仏寺めぐり』を片手に、涼しい秋風を感じながらの仏寺めぐりはいかがでしょう。思わず訪れたくなる素敵なお寺を、全6回にわたってご紹介します。

吉祥寺(きちじょうじ/曹洞宗)

「吉祥寺」のルーツにして、駒澤大学の前身。経蔵と山門だけが、空襲を生き延びた。

「栴檀林」の額を掲げた山門。空襲による焼失を免れた。

「吉祥寺」といえば武蔵野市東部にあるJR中央線沿いの街。「住みたい街」ランキングの常連として知られている。しかし、現在の吉祥寺の街に、吉祥寺という寺はない。地名の由来となった吉祥寺は、駒込の寺町にある。

古刹・吉祥寺の発祥は室町時代後期に遡る。長禄二(一四五八)年、太田道灌[どうかん]が江戸城を築いた際、井戸の中から「吉祥」の金印が発見された。これを瑞祥[ずいしょう]とし、城内(現在の皇居外苑・和田倉門付近)に建てられた寺院が吉祥寺の始まりとされる。

天正十九(一五九一)年、徳川家康が江戸に入ると、吉祥寺は水道橋の北に移転した。現在、神田川に架かっている水道橋は、当時の吉祥寺の表門橋であり、かつて吉祥寺橋と呼ばれていた。

駒込に移ったのは「明暦の大火」後のこと。「振袖火事」とも呼ばれたこの大火は、本郷の本妙寺[ほんみょうじ]から出火し、江戸のほぼ全域を焼き尽くした。大火を機に江戸の大改造が行われ、多くの社寺が郊外に移転した際、吉祥寺も駒込に移転した。

駒込が寺町になったのは、郊外でありながら、檀家の残っている江戸市中に近かったからだという。一方、吉祥寺の門前に住んでいた農民らが移住したのは武蔵野の地。農地を開墾し、吉祥寺村と名付けた。これが現在の武蔵野市吉祥寺の始まりである。

美しい佇まいの吉祥寺大仏。

駒込に移った吉祥寺は、僧侶を養成する学校「栴檀林」を擁する名刹として栄えた。千人以上の僧侶が学ぶ「栴檀林[せんだんりん]」は、幕府の昌平坂[しょうへいざか]学問所と並び称されるほどの名声を誇り、後に駒澤大学や世田谷学園へと発展した。

しかし、昭和二十(一九四五)年の空襲でほとんどの伽藍を消失。焼け残ったのは経蔵[きょうぞう]と山門のみだった。

青銅製の宝珠を頂く経蔵。栴檀林の図書収蔵庫だった。

経蔵は栴檀林の図書収蔵庫。歴史を感じさせる佇まいゆえ、境内でひときわ存在感を放っている。文化元(一八〇四)年に再建された二層からなる建物で、屋根に青銅製の宝珠(思い通りに願いをかなえてくれる宝)を頂く「二重宝形造[ほうぎょうづく]り」である。

江戸時代に建てられた経蔵が都内に残っている例は珍しい。昭和八(一九三三)年にも大修復が行われ、大切に守られている。

境内には「二宮金次郎」として知られる江戸後期の農政家・二宮尊徳[そんとく]、幕末から明治にかけて八面六臂の活躍を見せた榎本武揚[たけあき]などの墓所がある。

本郷通り沿いに建つ堂々たる山門には「栴檀林」の額が掲げられ、往時の威容に思いを馳せることができる。

1964年に再建された本堂。

【お寺データ】

東京都文京区本駒込3-19-17
[山号]諏訪山
[寺号]吉祥寺
[本尊]釈迦如来

【アクセス】
地下鉄南北線 本駒込駅から徒歩5分

『ぶらり東京・仏寺めぐり』

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長田幸康(おさだ・ゆきやす)

1965年、愛知県生まれ。早稲田大学理工学部卒業。仏教とチベット文化に造詣が深い。インドでダライ・ラマ14世に出会って仏教に目覚め、チベット寺院に住み込んで理論と実践を学ぶ。

現在、日本各地に伝わる仏教説話を訪ねる聖地巡礼に励むかたわら、毎年夏には、チベットに渡航し、仏教文化を巡るツアーの現地コーディネートを担当している。

著書に『知識ゼロからの仏教入門』『知識ゼロからの仏の教え』『知識ゼロからのダライ・ラマ入門』(以上、小社)、『仏教的生き方入門 チベット人に学ぶ「がんばらずに暮らす知恵」』(ソフトバンク新書)、『心の安らぎに出合える仏教の教え』(双葉社)、『ブッダに学ぶ生きる智慧』(東洋経済新報社)など。

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