激動の昭和の時代を振り返るとともに、現代に残したい当時の学びを探るコーナー「昭和土産ばなし」

昭和の子供たちを魅了した「街頭紙芝居」ですが、今ではすっかり街から姿を消してしまいました。

しかし、なんと現在も街頭紙芝居のパフォーマーとして活躍している三ツ沢グッチさんという方がいるんです。芸名は、かつて神奈川県横浜市の三ツ沢に住んでいて、“タレントのグッチ裕三さんにそっくり”ということにちなんで名付けられたそう。

新横浜ラーメン博物館で演じた役がきっかけで、本当に「街頭紙芝居のおじさん」に

出典三ツ沢グッチさん提供

子どもたちの関心は、最新のゲームやアニメなどに向かう中で、なぜ街頭紙芝居という昭和の娯楽を掘り起こされたのでしょうか?グッチさんご本人に伺いました。

———まずはじめに、「街頭紙芝居」のパフォーマーを目指したきっかけを教えてください。

三ツ沢グッチさん(以下、グッチ):元々役者を目指して上京し、時代劇役者の付き人などをしながら芸能活動をしていました。その空き時間に、新横浜ラーメン博物館にある昭和33年を再現した街の中でキャストとして勤務し、街の住民やお巡りさんなどあらゆる役を8年間演じました。

その中で「街頭紙芝居のおじさん」役を演じたとき、街頭紙芝居を使って子どもたちを喜ばせることにやりがいを感じ、もっと多くの人たちに昭和当時の街頭紙芝居の面白さを知ってもらいたいという気持ちが芽生えたんです。

新横浜ラーメン博物館のキャストとして演じた役がきっかけで、本当に「街頭紙芝居のおじさん」になってしまったグッチさん。もちろん、すでに街頭紙芝居は一般的ではない時代ですが、どのようにして、街頭紙芝居のパフォーマンスをするようになったのでしょうか?

グッチ:新横浜ラーメン博物館の先輩役者さんが演じる街頭紙芝居を見て覚えました。他にも上野で活動じていたプロの紙芝居師さんを生で見学したり、街頭紙芝居のCDを聴いたりすることで、口上について自分なりに研究しました。

そして、新横浜ラーメン博物館を退職後、街頭紙芝居のパフォーマーとして活動するために紙芝居道具を一式揃えました。地域の祭り、教育・高齢者施設などからの依頼を受けたら、イベント会社経由で出向いています。基本的には自営業なので、年中スケジュールが合えば請け負っています。

グッチさんは、イベントにゲスト出演する形で営業しているようですが、中には昭和期のように専門の紙芝居屋として、公園などに自主的に出向いて営業している方もいるそうです。

お客さんとのコミュニケーションを大切に

出典三ツ沢グッチさん提供

グッチ:街頭紙芝居の魅力は、単に裏面のセリフを読むことではなく、見ているお客様との会話のキャッチボールなんです。子どもたちと会話をしながら演じるので、「前にもおじさんの紙芝居を見たことあるよ!」「他の紙芝居をやってよー」などと言われることがあります。常連の子どもたちもいて、いつの間にかその子の顔も名前も覚えてしまう楽しみもあります。

常連だからこそつい出てしまう本音ですが、そういった鋭い投げかけからは、いかにグッチさんが子どもたちにとって親しみやすい存在かが伺えます。グッチさんは、子どもたちとのそういった直接的なやり取りも大切にしているのだそう。

グッチ:
私は幼少時代、街頭紙芝居を見終わった後に水アメを買って食べた覚えがあります。しかし、なぜ街頭紙芝居と水アメがセットなのかわかりませんでした。そんな疑問を幼心に抱いていたので、街頭紙芝居にもっと興味をもってもらいたいという願いを込めて、当時は水アメが見物料代わりだったということも説明しています。

300本以上の中から厳選した特に人気の作品

出典三ツ沢グッチさん提供

昭和当時は、紙芝居を自ら発注したり、制作したりしていたようですが、グッチさんは昔の紙芝居屋が使用していた紙芝居を300本以上所有しているそう。その中から、今でも子どもたちに人気の高い作品を教えてもらいました。

まずは、「ヒロちゃん」(新友会)

茶目っ気のある小学5年生の男の子、ヒロちゃんを主人公としたコメディー。お客の子どもたちと同世代のヒロちゃんの、無邪気でおどけたキャラクターに子どもたちは共感し、思わず笑いが生まれます。(上写真)

そしてこちらも不動の人気を誇る、「黄金バット」(話の日本社)


by yoppy

赤マントを羽織った金色骸骨の怪盗バットの活躍を描く冒険ファンタジー。かつて人気の高かった、悪の怪盗「黒バット」を倒す正義のヒーローとして誕生しました。

昭和5〜10年および戦後の作品で、「街頭紙芝居」の人気を上げた作品だといわれています。あまりの人気ぶりに、当時は「偽黄金バット」を作る業者も現れるほど。

「黄金バット」は、昭和40年代に大ヒットしたテレビアニメ版をご存知の方もいるかもしれませんが、実は紙芝居が原点だったのです。昭和期に人気を上げて以来、80年以上経った今でも子どもたちから支持されるのは、悪を退治するたくましいヒーローはいつでも子どもたちの憧れの存在だからかもしれません。

「街頭紙芝居は娯楽の魅力が詰まった総合エンターテインメント」

出典三ツ沢グッチさん提供

街頭紙芝居を見てみると、実はさまざまな娯楽の魅力が詰まった総合エンターテインメントではないかと思います。

漫画やアニメは、それぞれ街頭紙芝居の手法を引き継いでいるといわれており、漫画はコマ(絵)で、そしてアニメはさらに音で楽しませる効果があります。セリフを言いながら絵を一枚一枚めくって場面展開をする「紙芝居」の特徴は、まさに者の特性を持つ優れものだったのです。

また、漫画やアニメは、一人だけでも十分に楽しむことができますが、「街頭紙芝居」とは、演じ手と観客がいなければ成立しません。そういう意味では、ミュージカルのように、その場でしか味わえない“生きるパフォーマンス”だといえます。

しかし、街頭紙芝居は、ミュージカルのように演じ手と観客の間に隔たりがあるわけでないので、“双方向のコミュニケーションを取ることができます。それこそが、まさに街頭紙芝居独自の魅力。つまり、一方的に観客を楽しませるのではなく、その場にいる観客の反応が反映されたパフォーマンスをリアルタイムで楽しむことができるのです。

現代でもその持ち味は色あせてはいなかった街頭紙芝居。それはグッチさんのように街頭紙芝居を推進する人たちの手によって生き続けていたのです。

【取材協力:三ツ沢グッチさん】

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