記事提供:ORICON STYLE

初回放送で生放送企画を実施したドラマ『レンタル救世主』(日本テレビ系)主演の沢村一樹 (C)ORICON NewS inc.

今月9日にスタートした、俳優・沢村一樹主演の新ドラマ『レンタル救世主』(日本テレビ系)は、初回が一部生放送となり、“放送中に視聴者から募集したお悩みにメインキャストが答える”という日テレでは史上初となる特別企画が実施された。

ドラマの初回平均視聴率は10.2%(関東地区、ビデオリサーチ調べ)で、決して高いとは言えないが今期ドラマのスタートとしてはまずまずの結果に。

この取り組みはSNSでも話題となり、「面白い試みだった」から「期待していただけに興ざめした」まで、賛否両論の声が上がった。

“ドラマの一部を生放送にする”企画は、これまでもさまざまな作品で展開されてきたが、視聴率不振が叫ばれる近年の環境下で、これらドラマの生放送企画は有利に働いていくのだろうか?

生放送導入で“成功した”ドラマ作品たち

NHKドラマ『トットてれび』で黒柳徹子(右)の若かりし日を演じた満島ひかり(左) (C)ORICON NewS inc.

そもそも1953年に本放送が始まったテレビ放送ではドラマは生放送が当たり前。当時は実用的な録画手段がなく音楽番組や演劇はもちろん、テレビドラマも生放送で行われていた。

その時代の模様は、この春放送され好評を博したドラマバラエティ『トットてれび』(NHK総合)でも描かれており、すべてが生放送だったテレビ黎明期の盛り上がりと共に、生放送ならではのハプニングや人々の熱気や努力が、当時を知らない人々にも広く伝えられた。

1958年10月、ラジオ東京テレビ(現・TBS)でビデオ録画放送の技術的な先駆けと言われるドラマ『私は貝になりたい』が放送。本作では前半は録画放送、後半は生放送という形態だったが、ビデオ機材の発展やビデオテープの低価格化により、少しずつドラマも収録するスタイルへと移行していった。

だが『寺内貫太郎一家』(74年)、『ムー一族』(78年)、『ロックシンガーは闇に沈む』(85年)、『お坊っチャマにはわかるまい!』(86年)、『ザ・ワイドショー』(94年)、『ロングバケーション』(96年)など、たまに生放送パートを設けるドラマは各時代に点在。

2000年代も『ムコ殿2003』(03年)や『プリマダム』(06年)、『私が恋愛できない理由』(11年)、『PRICELESS~あるわけねぇだろ、んなもん!~』(12年)、『恋仲』(15年)など多数存在している。

“その時にしか見られない”ワクワク感を演出、生放送導入の醍醐味

「『ロングバケーション』の最終回ではロンドンの街を駆け抜ける瀬名(木村拓哉)と南(山口智子)の姿が生放送され視聴率36.7%を記録(以下すべて平均)。現場では日本とのタイムラグを考えて少し早めに走り始めたそうで、後々これら舞台裏も話題になりました。

ドラマ『私が恋愛できない理由』メインキャストの(左から)大島優子、香里奈、吉高由里子、稲森いずみ (C)ORICON DD inc.

『私が恋愛できない理由』の最終回では東京タワーにハートマークが灯され、視聴者も東京タワーを見上げるとテレビと同じハートが灯されているという心憎い演出で視聴率18.4%。『プリマダム』の最終回ではバレエの発表会部分を都内ホールから生中継。

吹き替えなしの体当たりで挑んだ俳優の演技に話題が集まり視聴率12.9%。これの亜流としては『CHANGE』(08年)の最終回、全国生中継という設定を生かした朝倉総理(木村)による20分以上にも渡る“生演説”シーンがあり視聴率27.4%。これらは各作品の最高および2番目となる高視聴率を記録しました」(某テレビ誌ライター)

まだテレビが娯楽の中心だった時代、例えば『8時だョ!全員集合』(TBS系)など生放送のバラエティが人気を集めたように、停電や火災など、いつどんなハプニングが起こるかわからないワクワク感があった。

視聴率の低迷が始まっている時代の『私が恋愛できない理由』でも、同ライターは

「リアルな恋愛物語を描くという同ドラマのテーマに沿って、東京タワーのイルミネーションというロマンチックな演出を取り入れました。
非常に上手い手法で、当時のフジのエース・中野利幸プロデューサーの面目躍如でした」と絶賛。

また『レンタル救世主』に関しても、

「お悩み相談の生放送部分はデータ放送には入っておらず、テレビ本来が元々持っていた“その時にしか見られない特別感”がありました。ネット時代だからこそ、リアルタイムでドラマを見ながらSNSなどを活用して参加する楽しみもあると思います」

と生放送の効果について語る。

生放送の導入は“使い方”次第で諸刃の刃に?

だが一方で、ネット時代だからこそ、それら“コマーシャル”的な情報だけに楽観してはならないのも事実。現に『レンタル救世主』初回放送の際には、ネット上で「いきなり生放送になって逆に白けた」などの手厳しい声も散見された。

キャスト陣と生放送を通して擬似的に触れ合えるという試みはファンにとってはたまらないことだが、これを冷ややかに見る視聴者もいる。

またこういった試みはネットなどでニュースとして取り上げられるケースも多いため、宣伝効果は安価かつバツグンと言えるが、「視聴率獲得のために制作側も必死だな…」と穿った見方をするネット民も最近は少なくないのだ。

ではどうすれば良いのか? 「同じ生放送、生中継でも例えば、サッカーW杯関連は高視聴率が望めます。また過去、音楽番組が大人気だった時代には圧倒的人気の音楽スターがいて、彼らを見るためにみなが放送時間にテレビの前に集まりました。

これらに共通するのは『ロングバケーション』の最終回も含め“お祭り的な盛り上がり”がそもそもあること。盛り上がりがあったからこそ生放送がウケたのであって、その逆ではないように感じられます。

古くからのテレビファンとしては、バブル時代的ではない、現代ならではの“盛り上がり”を模索してもらい、生放送を上手に導入していってもらいたい。その技術もポテンシャルも、テレビ局にはまだあるはずだと思っています」
(同・ライター)

現状、ドラマの生放送は“一部のみ”というケースがほとんどだが、1話まるごと生放送のドラマや、全話生放送の5分連ドラなどが登場してもスリリングで面白そうだ。テレビにとって厳しい時代だからこそ、攻めの姿勢で番組を作り続ける姿勢は必要不可欠。

その攻めの姿勢として“意味を成すのであれば”、テレビの原点である生放送を導入することが、視聴率不振から抜け出すひとつの突破口となるかもしれない。単なる“生放送企画”ではなく、“生放送ならではの面白いドラマ”が今後誕生していくことに期待したい。

(文:衣輪晋一)

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