「人肌恋しくなる季節」? ああ、そんなものもあったかもね。家事に追われた今のわたくしをまるっと包み込んでくれる存在が、もはや“肌着”ぐらいしかない日がくるなんてーー

いや、優しく包み込んでくれる肌着があれば、それでいいじゃない!自分の肌にぴったり馴染むブラジャーやショーツに出会うのって、実は物凄く難しいんだから…。

妙な自問自答を繰り返したところで、改めて自分の肌着について考えてみたわたくし、肌 寒子。そういえば、最後に買い替えたのっていつだったっけ…。買い替えなくちゃと思って試着は何度かしたけれど、しっくり馴染まなかったんだよね…。

そう考えると、ずっと着けているこの肌着、本当に心地良いよなぁ。よくぞ女性の身体をここまで理解してくれた。

……開発した人って、男性だったりする?

その可能性も十分否めない!一体肌着メーカーの男性社員は、なぜ女性のことがそこまで分かるんだ!つけ心地など実感しづらいことが多くあるはずなのに、どうやって意見を出すの?じつに気になるところ。

…というわけで、CMなどでもお馴染みのワコールさんに「男性社員による“女性肌着”の開発現場事情」を伺ってみることに。

やって来ました、ワコール!

出典Spotlight編集部

なんと、ビル全体が「ミシン」の形をイメージして設計されているんだそう。

肌 寒子「おじゃまします……」

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ランジェリーがいっぱい…ドキドキ…。

「お待ちしておりました!」

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肌 寒子「ヒィッ!」

なんと爽やかな男性社員さんが、肌着とともに(?)お出迎え。今回、本社のある京都から出張で東京支社に訪れていた、ワコールブランド事業本部で商品開発を行う深田高史さん。今回、直撃取材に応じていただけることになりました!

「自分以外、全員女性」の現場

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――まず、ワコールは男性向けの商品もありますが、一般的にはやはり女性下着のブランドというイメージが強いと思います。社員の男女比はどのくらいでしょうか?

深田さん:ビューティーアドバイザーも含めて、会社としては、9:1くらいの割合で女性が多いですね。中には、男性が多い部署もありますが、基本的には女性に囲まれて仕事をしています

――おお、やはり圧倒的に女性の方が多いんですね!深田さんは、女性下着の開発をされているんですか?

深田さん:はい。僕はMD(マーチャンダイザー)として、幅広い年代の方向けの下着・ランジェリー類の開発から予算管理までを行っていますが、チームのメンバーは女性が多いですね。最近発売したばかりの新商品の開発に携わっていたときは、デザイナー、パタンナー、パットの開発担当などのチーフからアシスタントたちまで、僕以外は全員女性でした。

“自分の胸”について説明する女性職員に戸惑ったことも…

――その女性社員の方々とブラジャーなどについて話し合っているときに、思わず恥ずかしくなっちゃうことはないのでしょうか?女性の肌着に関するものなので、デリケートな話題もあると思うのですが…。

深田さん:そうですね…最初の頃は、目の前で一緒に話すのが恥ずかしかった覚えがあります。たとえば、女性のデザイナーがブラジャーの話をするときに、自分の胸を指さしながら「私のここがですね…」と説明してくることがあります。今では、社内のよくある光景として慣れましたが、最初は戸惑ったものです。

――ほう…。確かに、それはドキッとしそうです。

深田さん:胸を指さすデザイナーに対して、視線のやり場に困ってしまうというか。「どの程度、見ていいのかな…」とか「どこまで自分の口から女性の下着について語っていいのかな…」と考えてしまうことがありました。

でも、今では恥ずかしさはあまり感じなくなったと思います。日々ブラジャーと向き合っているからか、自分が気づかぬ内に、躊躇なく商品や試作品のブラジャーを取っていて、女性社員に驚かれることもあります(笑)。

ブラジャーのストラップがどの位置についているか、パットがどのように収まっているか、また縫製はどうなっているかといった構造からつくり方まで、ブラジャーの深いところまで知っているがゆえの「慣れ」かもしれません

際どい発言をしても、決して“いやらしさ”は感じさせないキャラクター

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――女性社員の方々は、企画会議などでの深田さんの言動に対して、どんなリアクションをするのでしょう?

深田さん:みんなは僕がブラジャーの話をしていても、男性だからといって見方を変えず、ちゃんと話を聞いてくれます。いい意味で、何も思わないみたいです(笑)。

僕は女性に囲まれて育ったこともあり、もともと女性とのコミュニケーションに慣れているのも大きいと思います。そのせいもあってか、女性の前で、平然と下着についての会話ができるキャラクターができあがっているようです。

――キャラ、ですか?

深田さん:商品開発を進めていく中で、女性の胸やブラジャーについて、際どいことを言わなきゃいけないこともありますが、そういった話をしても許されるキャラというか。ワコールの商品開発にかかわる男性社員は、そんなふうに「いやらしさ」を感じさせにくいキャラの人間が多いと思います

まるでブラジャー!女性を「包み込んで持ち上げる」コミュニケーション

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――では、女性たちと一緒にお仕事を進めていく上で、コミュニケーションで気をつけていることはありますか?

深田さん:「喧嘩にならないようにすること」は気をつけていますね。あくまで経験上ですが、男性同士の喧嘩と比べて、女性対男性や、女性同士の喧嘩はけっこう後を引きやすいような気がします。僕と誰かの意見が合わないときでも「一歩も譲らない」ことはしないようにしています。

一般的な会社のリーダーというと、みんなをガンガン引っ張っていく姿が求められるものですが、ワコールの場合は、開発チームのメンバーを優しく包み込んで、持ち上げて、各々の力が発揮できるように働きかけるようなリーダーが多いですね

――まさにブラジャーですね…!!

深田さん:はい(笑)。そもそも、ワコールは男女の垣根自体が低いと思います。社では「相互信頼」という言葉をよく使いますが、そういった社風なので「女性だから」「男性だから」といった考え方よりも、「ひとりの人間としてどうなのか」といった考え方がまずあります。それが男女間の信頼関係につながっているのかもしれません。

「セクシーかどうか?」男性の率直な意見も大事

――企画会議などで、男性ならではの意見はどのように活きるのでしょうか?

深田さん:いい商品を生み出すためには、男性の意見をしっかり伝えることが大事です。男性らしい視点には2つあると思っていて、1つめが、その商品を女性がつけたときにセクシーかどうか、勝負下着として活用できるかといった、まさに男性の視点といえるものです。

「女性がつける下着なら、こんなデザインや色がいいな」といった、男性の率直な意見はメンバーにちゃんと伝えるようにしています。その意見が重宝されるときもあれば、あまりにも女性の感覚とかけ離れた意見だと「何言ってんだこいつ…」と、スルーされることもあるんですけど(笑)。

2つめの視点は、構造や素材へのこだわりです。男性はプラモデルのように組み上げていくものが好きなので、糸などの素材のよさや、パーツの組み合わせや機能性を追求していくのは、男性特有の視点だと思います。女性下着を開発する上で、パーツの一つひとつの造りや機能性については、どうしてもこだわってしまいますね。

「第2の皮膚」と呼べる、極上の新商品が発売!

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――深田さんのこだわりが表れた商品をぜひ拝見したいです!

深田さん:最近では、この「GOCOCi(ゴコチ)」ですね。「ラクしてちゃんと女子」というコンセプトの商品で、今年の7月から販売してるのですが、おかげさまで大好評です。この商品名には、「着心地(キゴコチ)」の意味が込められていて、バストラインの美しさを追求しながらも、つけごこちにとことんこだわりました

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――確かにこのパッド入りキャミソールも、一般的なものとはちょっと見た目が違いますね。

深田さん:このシリーズ用に開発したパットには秘密があって、左右のカップがピーナッツ型のように一体となっていることで、つけていてラクなだけでなく、形もしっかり支え、シルエットがキレイになるんです。

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――ふむふむ、このつながっているパッドに秘密があるんですね!

深田さん:しかも通常のパットは脇から入れる仕組みですが、これは中央の部分から入れることによって、より安定感が出て、ずれにくい仕組みになっています。今の女性に求められていることは「開放感」「安定感」「造形感」の三拍子だと考え、この「GOCOCi」の開発にいたりました。

僕のお気に入りは、デザイナーが手書きで描いたイラストの柄のこのブラジャーですね!

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(あたかも、ご自分に胸があるようなジェスチャーをし始める深田さん)

深田さん:あ。この仕事をしていると「自分が女性だったら…」みたいな想像が常にあるので、ついジェスチャーをしながら自分に照らし合わせて考えることが多いです。

自分が女性だったらどんな服を着るのかなと考えて百貨店に行ったり、どのシャンプーを使おうか考えることもあります。自分が女性だった場合のライフスタイルに考えを巡らせることは、女性下着の商品開発のアイデアにつながるんです

――そこまでされるんですね!ご自身でつけ心地を試したりは…しませんか?

深田さん:さすがに自分では身につけませんが(笑)、家族など身近にいる人に身につけてもらって、意見を聞くことはよくありますよ。

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女性にとって「一番身近なもの」に関われる喜び

深田さん:女性が喜んでくれることが嬉しいんです。自分が作った下着に対して「やっぱりワコールの商品はいいね」「GOCOCi(ゴコチ)はつけていて気持ちいいね」と褒めていただけると、頑張って開発してよかったなと思います。

――女性の喜びが、深田さんにとっての喜びでもあると。

深田さん:僕は女性が好きなので、女性に関係する商品に携われることが嬉しいです。この「好き」というのは、いやらしい意味ではなくて(笑)。ワコールの男性社員には、性的な意味とは別な意味での「女性が好き」な社員が多いと思います。女性のライフスタイルに関わることが好き、といいますか。

――深みのある「好き」ですね。

深田さん:実際に、ワコールに入社するときに、面接で「女性は好きですか?」という質問がありましたが、そこで自信を持って「好きです」と答える人が職員に多いんじゃないかなと思います。ワコールの姿勢として「世の女性に美しくなってもらう」というのが根源にあるように、うちには女性をキレイにすることにモチベーションが高い男性社員が多いです。

――なんだかもう、こちらこそありがとうございます!これからも女性たちを支えてください!

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“世の女性に美しくなってもらえることが純粋に嬉しい”、“女性のライフスタイルに関われていることが幸せ”。その真っ直ぐな想いを打ち明けられ、肌 寒子の心はポカポカに、肌はすっかり温まっていた。

9:1という圧倒的に女性が多い環境の中、女性のために肌着を開発し続ける男性社員さんのコミュニケーション術は、ずばり「包み込んで持ち上げる」というブラジャーさながらの接し方。「それでも時には男性ならではの率直な意見を伝えることも大事」と語る深田さんの言葉には、どんな人でも当てはめて活かしていける大切なことが、盛り込まれていたように思う。

…盛り込み。

そういえば、長く使い込んだブラジャーは、形が崩れ胸が盛り込めなくなっていたな…。ちょっと上手いこと言った気分で完全にテンションがあがったわたくしは、おNEWなブラを買いに、そのまま百貨店へと向かうことにしたのでした。

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