記事提供:CIRCL

話している人の顔を見ながら音声を聞いたほうが効果的に英語を学べる。そう信じて、映画や動画などを教材として取り入れる人は多い。

確かに、本来ならば口の形の変化から得られる視覚情報は、耳から入ってくる音情報の処理を助けるが、日本人は例外だということが最新の研究で判明した。

日本人は聴覚野と視覚野のつながりが英語を母国語とする人よりも弱く、母音の数や発音に必要な口の形のバリエーションが少ないことが起因しているのだという。

英語話者と日本語話者の音声処理の違いを調査

札幌医科大学、熊本大学、国際電気通信基礎技術研究所の合同研究チームは、英語を話す人と日本語を話す人が互いに相手の話を聞く際、音声と視覚情報の処理にどのような違いがあるかを調査した。

実験に参加したのは英語ネイティブスピーカー22人と日本語ネイティブスピーカー24人。「ba」「da」「ga」の中から聞こえてきたものを正確に素早く選ぶタスクを以下の3つの条件下で行い、そのときの反応速度を測定した。

・音声と視覚情報
・音声情報のみ
・視覚情報のみ

またタスク中、参加者の脳内では視覚情報と音声情報がどのように結び付けられているかについてもfMRI(functional MRI)を用いて分析した(※1)。

相手の表情で音情報の処理がよりスムーズに

実験の結果、正確さに違いはなかったものの、英語ネイティブの人は日本語ネイティブの人よりも回答が速く、音声と視覚情報の条件下ではこの現象が特に顕著だった。一方、日本語ネイティブスピーカーはどの条件下においても反応速度に違いはなかった。

また、奥行きや物の動きに関する情報を処理する脳部位の「MT野(第5次視覚野)」と「一次聴覚野」とのつながりは、英語ネイティブのほうが強かった。

英語がネイティブの人は耳と目で言語を理解

これは、英語をネイティブとする者の脳内では音声情報処理のプロセスにおいて早い段階で視覚情報が統合されるが、日本語ネイティブの場合では、処理がさらに進んだ段階でないと統合が行われないことを示している(※1)。

反応速度に違いが見られたのはそのためだ。

素早い言語処理の決め手は母音の数と発話時の口形バリエーション

日本語を母国語とする人は、唇や顔の動きを見て音声を即座に判断できないことがこの研究で判明したが、なぜ日本人に限ってこのような現象が起こるのだろうか。考えられる理由の一つとして、研究チームは英語と日本語の間にある「言語的特徴の違い」を挙げている。

日本語には母音が5個しかないのに対して、英語の母音は14個ある。そして、音声を発するときの唇の形が日本語では3種類しかないが、英語ではその倍の6種類あることが影響しているのではないかという(※1)。

周りは笑っているのに自分だけ聞き取れない。そんな経験ない?

雑音が多い環境下や強いアクセントを持つ人との会話、英語でささやかされたときのように相手が何を言っているかが曖昧なとき、周りの人たちは聞き取れているのに自分だけ聞き取れないという状況に心当たりはないだろうか?

視覚と聴覚を同時に利用するビデオ教材が日本人には効果が薄い(※2)のも、耳で聞いた音情報と目で見た情報を組み合わせることが苦手な日本人の特質からくる弊害の一つだろう。

本来、会話を理解するうえで重要な視覚情報を効果的に利用できないという事実は、ただでさえ難しいと感じやすい英語習得の道から、日本人をまた一歩遠ざけたようだ。ビデオ学習にお金をつぎ込んでいる人は、一度学習方法を見直してみるのも手かもしれない。

▼参考・引用
※1:Impact of Language on Functional Connectivity for Audiovisual Speech Integration Jun Shinozaki., et al.
※2:熊本大学 日本人と欧米人で異なる脳内ネットワーク活性化
http://www.kumamoto-u.ac.jp/daigakujouhou/kouhou/pressrelease/2016-file/release160812.pdf

参考:京都大学 前頭前野から高次視覚野への物体認知のためのトップダウン信号 

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