記事提供:VICE

ポートランドでは、ハンバーガーもステーキも食べなかった。ピザは食べたけど、いわゆる昔ながらのアメリカン・ピザではなくて、クールでイケてるピザ屋さん。

そのピザのお皿には3本の足があって、アッツアツのピザは宙に浮く空飛ぶ円盤スタイル。糞オシャレで糞美味かった。そのほかのゴハンも、どこの料理かわからないカラフルで個性的な「Yummy!Yummy!」なものばかり。

ツナサンドのツナも、知らないツナだったし、緑のスパゲッチーもモッチモチの昇天味。サイゼリヤ、日高屋、松屋飲みをしている私にとって、なんともセレブな毎日なのでした。

行政が地元優先の店舗誘致を行ったため、ポートランドにはナショナルチェーンのお店が少ない。もちろんマックもバーガーキングもタコベルもあったけど、この街では「すいません~、ほんのりやらせてもらってます~」感が強い。

うん、ここではやはりローカルのお店が主役なのだ。

アビーちゃんのインタビューにもあった通り、「チェーン店だと、信用出来ない部分もある。素材をどこから仕入れているのか…とか、ここまで大きくなるには、どういう手段を取ってきたのか…とか、とても気になるの」と。

ポートランダーの生活には、この感覚が普通に染み付いているのだ。だからこそローカルのお店は増える。そして頑張る。美味しいもの、身体に優しいものをつくり続ける。ポートランドのパンク~DIYパワーは、ゴハンから生まれているのだー。

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そこで、ポートランドを代表する飯パンクなお二人に、ポートランドの食生活について訊いてみた。おひとりは、シーンを代表するガールズ・ギターバンド、SLEATER KINNEYのコリン・タッカー(Corin Tucker)。

そしてもうお一方は、伝説のワシントンDC産ポストハードコアバンド、CIRCUS LUPUSのメンバーであり、フードライターもやっていたセス・ロリンチ(Seth Lorinczi)。

コリンおすすめのラーメン屋「Noraneko」で、ズルズルしながら、ゴハン、子育て、そしてポートランドの変化について語ってもらった。麺伸びちゃってゴメンねー!

お2人は、ポートランドに住んでどれくらいになりますか?

コリン:私は20年。

セス:僕は13年。

以前に比べると、ポートランドの食文化も相当変わったのではありませんか?

セス:僕がフードライターをやっていた頃は、通常の買物ですら、食材を探すのに苦労していたんだ。見つけたら「あった!」なんて感動していたからね。

今はなんでもすぐに見つかるようになった。確かに便利になったけど、ちょっと面白さは無くなったかもね。

レストランも増えましたよね?外食もよくされますか?

コリン:お金に余裕があるときはね(笑)。でも子供が2人いるから、テーブルをゲットするのにちょっと苦労するわ。自分の食生活を考えてみると、確実に味のレベルを求めるようになった。

例えば、ニューヨークの有名なレストランに行っても、「この値段でこの味?」って感じるようになったの。確かに、ポートランドも高くなってきてはいるけど、ニューヨークとかと比べると、まだまだ良心的。

昨日も「Broder Nord」っていうスカンジナビア系のレストランに行ったんだけど、二人合わせて30ドルも出せば、とっても美味しいものがたくさん食べられる。ニューヨークだったら60~70ドルくらいするんじゃないかしら。

セス:昔はニューヨークにあるものが一番注目されていたけれど、今はポートランドの店が、ニューヨークに出店している。食の中心が変わってきんだ。

最近の流行でいうと、キュレーションされたレストランだね。1人50ドルとか高いんだけど、テイスティングメニューになっていて、ちょっとずつ高級食材でつくった料理を食べるシステムなんだ。でも正直、お腹には物足りない(笑)。

それにしてもこのラーメン美味しいですね!普通に日本で食べられる和風出汁と動物系のWスープ。これまでアメリカで食べたラーメンとはまったく違います。

セス:ベーコンが上に乗ってるような変なラーメンばかりだったもんね。「白人アメリカンラーメン」だよ(笑)。

コリンさんは、どうして「Noraneko」に通うようになったのですか?

コリン:子供の同級生のお姉ちゃんが大のラーメン好きでね。その子が「絶対行かなくちゃダメ!」って言うのよ(笑)。そしたらまんまとハマったわ。日本で食べたラーメンと同じだった!

日本ではどこ行きました?

コリン:覚えているのは「桂花」ね。

はい(笑)。でもラーメンも含め、遥か彼方の国の食文化が、ポートランドで広く受け入れられている状況はちょっとビックリです。

セス:例えば、「Pok Pok」っていうタイ北部料理レストランもすごく人気があるんだけど、インターネットを通して生まれた食文化の象徴って気がするんだ。

インターネットで僕みたいな「食オタク」は、タイ北部料理の情報をゲットする。そして、近くに「Pok Pok」というお店ができたら、躊躇することなく食べに行く。

今までだったらタイ北部料理なんて、物凄くマイナーな存在だったんだけど、インターネットで身近な料理になった。だから、みんな普通に食べに行く。特にポートランドでは、その感覚が強いんだ。

お二人のお子さんもラーメンは好きですか?

コリン:ええ。でもここのラーメンは、ちょっとまだ早いかな。マルちゃんが好きなのよ(笑)。うちの子はゴマがダメなの。

アメリカの子供は、食べ物の好き嫌いが激しい。私自身は、アジア料理とか多文化的な食べ物を出しているけど、結構苦労しているわ。特に娘がダメなの。

セス:うちの子もラーメン大好きなんだけど、ベジタリアンだからちょっと難しい。

お子さん、ベジタリアンなんですか?

セス:うん。友達の家に遊びに行ったら、そこが「食用うさぎ」を飼っていたらしく、捌かれているところを見ちゃったらしい。それからベジタリアンになったんだ。色々自分なりに考えたようだよ。

なるほどー。でもやはり子供さんがいると食生活って変わりますよね。うちも相当変わりましたけど、コリンさんのお嬢さんは、やはりハンバーガーとかピザとかが好きなのかしら?

コリン:息子は15歳だから、もう大丈夫だけど、やはり娘にアドベンチャーはまだ無理ね。子供の好き嫌いに、親が左右されるっていうか、私自身はもっと色々食べたいんだけど(笑)。

せっかく素敵なレストランに行っても、ブーたれるし。娘はパスタ食べてればニッコリなのよ。

わかります(笑)!私も休みの昼間は、もう焼き鳥とビールにしたいんですけど、子供が「お父ちゃん、カレー!」って言われたらカレーになりますもの。じゃあ、お子さんのことを考えなかったら、どこに行きたいですか?

コリン:LUCE」に行きたいわ。美味しいイタリアンなの。あと「Nicholas」っていう中近東料理のレストランも。9ドルあれば十分なの。

セス:9ドルは安いね。最近はラーメンでも10ドル以上するからね。そんな新しいお店への反動なのかもしれないけど、「THE WOODSMAN TAVERN」ってお店があってね。

STUMPTOWN COFFEE」のオーナーがやっているんだけど、ここはアメリカの典型的なビストロで、ビンテージなものを提供しているんだ。

モダンじゃなくて、昔ながらのやり方をしている。オイスターとかカクテルがめちゃくちゃ充実していて、若い人に向けてやっているんだ。新しいポートランド・スタイルなのかもしれないね。

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オレゴン飯ガイド:セスお薦めのTHE WOODSMAN TAVERNも登場。

ちなみに日本の普通のお父さんのランチ代は、500円以内とかなんですよ。ポートランドでのランチ、日本のお父さんはありつけますか?

セス:ブリトーとかでも最近7ドルくらいするからねぇ。昔は5ドルで買えたんだけど。ファストフードだったらなんとかいけるかなぁ。

お二人に聞くのもなんですが、ポートランドのお父さんのお小遣い事情を教えていただけますか?

コリン:お小遣い制度がないのよ。

どういうことですか?

コリン:ほとんどの女性が働いてるでしょ。だから「奥さん=家庭担当」みたいな考え方が、まずないの。両方の給料から「毎月、これだけは家庭用にとっておきましょう」っていう感じ。家計もふたりでサポートするスタイルが、普通になってきている。

そんなパパ・ママ・ポートランダーの生活が、とても自然に、かつクールに見えるのですが。

コリン:ポートランドの人たちは、家賃の使い方だったり、自転車通勤とかして、お金をセーブするのに長けている。使えるお金をちょっと持っているのよね。それで美味しい物を食べるとか。でもちょっと使い過ぎなんじゃないかしら(笑)。

セス:ポートランドもそうだけど、ニューヨークとか西海岸とかシアトルでは、30代くらいにならないと子供を産まないというケースも少なくないから、子供が産まれてきた頃には、ある程度キャリアもあるし、お金も持っているんだよね。

ポートランドの変化については、どう思っていますか?

コリン:どっちに転ぶか、今はそこがポイントになっていると思う。特に家賃の問題ね。土地がどんどん高くなっているので、このペースでいけば、お金持ちの人しか住むことができなくなる。お金持ちしか住めないような街には住みたくないし。

どんどん人がポートランドに来ているから、もちろん、たくさんのことを経験してもらいたいけど、経済的にフェアで、お金持ちしか住めない街にならないように気をつけないと。

セス:もちろん、シアトルとかサンフランシスコに比べれば、まだ安いかもしれないけれど、それもいつまで続くかわからない。ポートランドだけ上がっている状態なんだ。街が変わっていく状況に対して、危機感を感じる人と、可能性を感じる人にわかれる。

昔は本当に静かな街だった。22時以降はレストランも開いてないような街だったし、普通のまともな仕事も見つからないような街だった。

それが良かったっていう人もいれば、エネルギーがある今の方が良いって人もいる。僕は、総合的に見るとプラスの面の方が圧倒的に多いと感じているよ。

コリン・タッカー:1994年に結成されたSLEATER‐KINNEYのヴォーカル/ギター。2015年に復活し、10年ぶりのアルバム『No Cities to Love』は、ビルボードチャート18位にランクインした。

メンバーであるキャリー・ブラウンスタイン(Carrie Brownstein)は、ポートランドを舞台にしたコメディ・ドラマ『Portlandia』に出演し、女優としても活躍している。

セス・ロリンチ:名門DISCHORD RECORDSに所属していたワシントンDCのポスト・ハードコア・バンド、CIRCUS LIPUSのベーシスト。

バンド解散後は、BLUE GIANT、THE GOLDEN BEARS、CORIN TUCKER BANDでプレイしながら、MODEST MOUSEの作品などで、エンジニアとしても活動している。

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