“ミレニアル世代“によるNEOトーキョー・フィールドワーク・マガジン「SILLY」が、社会に埋もれた20代の声を代弁するコーナー「アノニマスリポート」。早熟で、ちょっと頭でっかちだった彼は、いかにして”行動する男”になったのか。

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“意識高い系”という言葉が登場してからかなりの時が経つ。もともとはセルフブランディングに余念がない就活生を揶揄する言葉として広まったこの言葉、今ではすっかり痛い人の代名詞になってしまった。いくらプロフィールを盛ってみたって、いくら名の知れた会社でインターンをやってみたって、結局、中身がなければいつかは化けの皮が剥がれる

もちろん、そんな上っ面のプロフ作りには興味を示さず、着実に夢に向かって行動し続ける学生だっている。

今回会ったのは、昨年北海道から上京して以来、「いつか飲食店の経営者になる」という目標に向かって日本中を巡り、さまざまな経営者に会い続けてきた19歳だ。

出典SILLY編集部

中学生時代からマネジメントや自己啓発に没頭

「初めまして!よろしくお願いします!」

真っ白なTシャツ。洗いたてのデニム。待ち合わせの場所に現れた彼は大きな声でそう言うと、深くお辞儀をした。あ、この人、運動部出身なんだ、と思った。訊けば、高3まで野球をやっていたという。しかも、出身校は甲子園に出場するような強豪校だ。それなのに彼は「でも、野球が好きなわけじゃなかったんですよ」と、こちらが拍子抜けするようなことを言ってのける。

「中2のときにキャプテンに任命されたんですけど、当時のコーチが面白い人で。キャプテンをやるなら読んでみろと言って、経営者の自伝本とか自己啓発本とかを貸してくれて、“キャプテンの仕事はチームの環境を整えることだ”って教えてくれたんです。それで本を読んでいくうちに、野球以上にそのことにハマっていったんです」

14歳の彼が特に衝撃を受けたのは、有名な実業家の成功体験に基づくベストセラー。「僕もいつか日本一の社長になってやる」――そんな強い想いを抱いた彼は、以来、それだけを目標にして日々を過ごしてきた。

出典SILLY編集部

部活はあくまで“成功へのステップ”!?

「野球は人並み程度にできるっていうくらいの、めちゃくちゃ平凡な選手」。それでも高校には、野球で進学した。彼がやりたかったのは“野球部というひとつの組織のマネージメント”。彼は3年間の部活生活を“社長になるための準備期間”と考えていたのだ。

「うちの高校では、選手がマネージャーも兼ねていました。規模の大きな部なのでまとめるのは大変だったけど、絶対に将来のプラスになると思った。それで、マネージャーを志望したんです。部活って理不尽なことがいっぱいあるじゃないですか。そんななかで、起こり得る問題を予想しながら、どうやったら組織がうまくいくかを考えるのって、僕にとっては面白かった。会社運営の予行演習だと思ったら、いろんなことを楽しめたんですよ」

もし当時、彼の部活仲間がその真意を聞かされていたとしたら、きっとイラッとしただろう。でも、賢明な彼はもちろんそんなことは口にせず、ただただ部活に邁進した。卒業したら、東京に出よう。そこで分かり合える仲間を見つけよう――3年間、心の中でそう思い続けた。

「部活を引退した後、東京の大学に行きたいと言ったら、親は大反対。担任もそうだし、周りの友達も“なんで東京なんかに行くの?札幌で何がダメなの?”って。でも、これまで百数十人もいる野球部を引っ張ってきた自分なら、東京にさえ行けば学生ベンチャーで頭角を現すことができるはずだと思っていました」

出典SILLY編集部

東京で思い知った、井の中の蛙だった自分

そして迎えた春。反対を押し切り東京の大学に入学した彼は、早速行動を開始する。起業したいと考えている学生の集まるセミナーやイベントにはどんどん参加。ためらわずに声をかけ、人脈作りに奔走した。そこで出会ったのは、自分よりもうんと先に進んでいる、”行動する”学生たち。彼らのネットワークの広さにも驚かされた。本当にこれが同じ18歳なのか――自信満々で乗り込んだはずの東京で、彼は初めて敗北感を味わうこととなる。

「マネージャーを兼務して経験を積んだ気でいましたが、結局僕は野球しかやっていなかったんだと思い知らされました。焦ったし、落ち込みましたね。でも、それじゃ東京に出てきた意味がない、とすぐに気付いて。そこからは好奇心の赴くままに動き続けることにしました。ダメもとで起業家の人たちに連絡して会ってもらい、話を聞く。今では、僕が会った起業家は300人を超えてます

“300”という数字を口にするときの彼の自信たっぷりの表情を見て、私はそのポジティヴさにちょっと気圧されそうになった。彼は矢継ぎ早に言葉を繰り出してくる。

「起業家の人たちに会うと感じるのは、みんなすごく楽しそうで、生き生きしてるってこと。それって、やりたいことを仕事にしてるからだと思うんですよね。僕が街で見かけるサラリーマンって、悪いけど、死んだ目をしてる。あんな風には絶対になりたくないっていつも思うんです。何をすれば自分は幸せなのか、そういう“幸せの自分軸”をきちんと持っていなければ、成功も程遠い。僕は起業家の人たちからそれを学びました」

出典SILLY編集部

僕には夢はない。 あるのは目標だけ

東京生活2年目の今、彼が力を入れているのは、ヒッチハイクで全国の食材生産者に会いに行くこと。実際に自分で足を運び、ネットワークを広げ、いつかは応援したいと思える生産者に空間を提供するビジネスをやってみたいと考えているそうだ。しかし、なんでヒッチハイク?

「自分のワクワクできることの手段を考えたら、ヒッチハイクだっただけ。手を挙げて待っていると、結構車って停まってくれるんですよ。で、そうやってあちこちの農家とか養鶏場とかにアポなしで会いに行って、お手伝いをさせてもらう。だいたい受け入れてくれますね。泊めてくれる人もいます。直感に従って行動していますが、ある意味では戦略的だったりもする。実際、彼らから特別に分けてもらったものをイベントで販売したりもしています」

相手を真っ直ぐ見つめるキラキラの瞳。大きくはっきりした発声。こういう話し方も、立ち居振る舞いも、彼が成功した起業家たちから学んだことなのだろう。

出典SILLY編集部

「マニュアル就職術 < ワクワク」が 幸福につながる

そんな彼は大学の同級生の多くを見て、言葉にできない違和感を感じるのだという。

いわゆる“意識高い系”っていうか……一年生のうちからどんどんインターンに行っている子とかって結構いるんですよ。でも、そういう子たちって“すごいね、頑張ってるね”と言われることで、承認欲求を満たされたいだけなんじゃないの?って思っちゃうんですよね。

彼らには何がやりたいとか、何になりたいとかはないように見えるんですよ。早いうちからいい会社、話題の会社でインターンをすれば就職に有利だからとか、そういうことだけ。お前らがワクワクすることって何なんだよ? お前らの考える幸せって何なんだよ?って思っちゃう。心のワクワク度が100%であれば、お金は何とでもなるじゃないですか。僕はワクワクできて、納得できて、人が喜んでくれる仕事がしたいです」

出典SILLY編集部

夢を与える存在でいるために、お金を稼ぎたい

ある意味、優等生的な答え。でも、なんかモヤモヤする。それって本当に本心だろうか。じゃあ、お金はどうでもいい?いくらあれば足りると思う?

「そりゃ、経営者は世の中に夢を与える存在でなきゃならないと思うんで、最低でも年収1000万円は欲しいですね」

彼は笑いながら、あっけらかんと言い放った。意外と、清貧じゃないんだ――なんだかちょっと安心した。でも、それならもう少し目標額を高く掲げてもいいんじゃないか。


今のところ、彼の挑戦は順調に見える。でもこの先ビジネスをやっていくうえでは、騙されたり、裏切られたりすることもあるだろう。ワクワクだけでは済まされない、厳しい現実

それでも、ゆとりだとか打たれ弱いとかと言われがちな世代でありながら、いい意味での図太さを既に身に着けている彼なら、きっとうまく切り抜けていくに違いない。


text:廣井 紫陽(リベルタ) / Shiyo Hiroi
photographer : 延原 優樹 / YukiNobuhara

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