人生とは食である。人は食事をし、その都度「あぁ、ウマかった…」と感動したり、「くそったれ、マズいもの食わせやがって!」と激怒するなど、食べ物に感情を揺さぶられることが少なくない。

しかも、外食の場合は、当たりはずれも多く、せっかく高いカネを払ったのに残念過ぎる店というのも存在する。となれば、その感情の揺れは自分で作るよりも幅が広くなり、時に悔しく、時に幸福を感じることだろう。

だからこそ、「いい店・ダメな店の見分け方」を我々は身につけたい。そこで、食に詳しいライター・編集者の松浦達也氏を先生とし、こうした見分け方を知ろうではないか。今回は「総論」としての「いい店・ダメな店」だ。次回以降は「食べログ」などの活用方法に加え、「ラーメン店」「焼肉店」など、様々なジャンルの店について各論を教えてもらう。

先生のプロフィール

松浦達也●事務所であろうがどこであろうが料理をパパッとやってしまうことで知られるライター・編集者。最近は「フード・アクティビスト」という肩書きも持ち、食の産地や数々の飲食店の取材も行う。

数百人で行うバーベキューでは、牛肉をまるごと一頭分焼くという噂も。「給食系男子(三合)」というユニットなどでの活動も行い、著書に『家呑み道場』や『レッツ! 粉もの部』『家メシ道場』などがある。

1. アルバイトが楽しそうに働いている店はイイ!

まず、客に対して上から目線はダメですね。少なくとも客や同業者の話に耳をかたむけられる店主じゃないと。聞いてもいないのに、押しつけがましくあれこれ講釈を垂れる店にロクな店はありません。寡黙でもいいじゃないですか。客のニーズに合った、快適な時間を提供するのがいいお店でしょう。

アルバイトさんが楽しそうに働いている店は間違いないですね。はつらつとした女子バイトや元気で気の良い兄ちゃん、かわいいおばちゃんがいる店は客もつられて楽しい気分になりますから。

ほかにいい店の基本的な条件としては、掃除が徹底されていること。ちょっと手が空くといつも掃除をしている。ピカピカの内装である必要はないけど、何十年も使い込んでいるシンク、ステンレスなどが、底光りするように鈍く光るような店はいい店でしょう。

2. 開店前の店の様子も重要ポイント

店主の姿勢は店の良し悪しには当然反映されますよね。例えば、開店直前に店主がやってくるような店はやっぱり×。店の規模にもよりますが、店舗で調理をする飲食店は営業時間と同じくらい、仕込みや片づけに時間がかかるはず。

以前、知人にすすめられた飲食店に行こうと、早い時間から近辺をうろうろしていたら開店1時間前くらいに店主がやってきて近所のオッサンと茶飲み話をしている姿を見かけました。

いやな予感はしたんですが、知人にすすめられたので開店直後に入店してみると、店主の態度は偉そうだし、生ビールは、サーバーを洗浄していないのがありありとわかる味。店主は料理も出さずに厨房から出てきてうんちくを垂れる。口を出すな、料理を出せ。同行したビール好きのプランナーは、そう激怒していました(笑)。

カウンター数席のバーやスナックならともかく、開店3時間前にもなってシャッターを開けた気配すらない店は避けるべきですね。

3. 店主のヒゲをチェック

ほか注目したいのは店主のヒゲ。ビストロやフレンチのシェフのように整えているならともかく、店主が不精ヒゲの店は味つけや掃除、オペレーションなどいろいろと雑なことが多い。たまにいい店に当たったと思っても、押しつけがましい持論がある面倒くさい店だったり。不精ヒゲが客からどう見られるか、想像できていないんです。

結局のところ、飲食店の評価は客が決めるもの。いい店は、客からどう見えるか、どう思われるか、どう楽しんでもらえるかということを必ず考えています。客からの要求をわかった上で、敢えて接客、味、価格など一部のサービスを切り捨てることもありますが、客の好みを想像することなく、王様のように振る舞う店には行かないほうがいい。

4. うんちくを垂れる店はハッタリ君

いきなり結論めいた話になりますが、全体的に言えるのは、良い店はうんちくが少ないんですよ。料理や飲み物に自信がない店は、「○○産の肉を契約農家から分けてもらってる」とか「燻製は自分でやっている」とか、過剰にうんちくを語り出す。でも、うんちくなんて、客が「おいしい」と言ってくれたあとで聞かれたら答えればいい。

食べる前から店内中にうんちくを垂れ流すなんて、ネタばらししながらのマジックみたいで興ざめです。おいしければ客が勝手に根掘り葉掘り聞いて、おいしい話を拡散させますよ。事前のうんちくはハッタリであって、おまけにもなりません。

5. 看板メニューが3つ以上ある店は怪しい

あとは、いわゆる「看板メニュー」が3つ以上ある店も気を付けた方がいいです。せめて2つまでかなぁ……。様々なものにこだわり、うんちくを述べ、「これもお勧めです、あれもお勧めです」とやられてしまうと、「結局じゃあどれを食べればいいの?」と客は迷ってしまう。

こういうお店はメニューだけでなく、整理できていないんです。看板メニューが多いということは、色々なメニューに原価を投資していることになる。店は、客に対し、その割高な値段に見合うサービスを提供しなくてはいけません。

すべての素材にいいものを使える店は、よほど腕があって高い単価が設定できるか、繁盛していて薄利多売で回しているかのどちらかで、そんな店はごく少数です。

一人3万円取れるフレンチならともかく、大衆的な料理店で、看板メニュー3つ以上はあり得ません。最近繁盛している飲食店にしても、魚居酒屋なら魚、肉バルなら肉と、看板メニューが業態に密接に関わっている。しかもメニューを絞って、客単価を抑えている。

【番外編】コスパ追及で看板メニューばかり頼む客が店を潰すことも

工夫しないとお店も厳しいんですよ。昔「あれもこれも」で繁盛していた店だとしても、他の店のレベルアップが著しいいまは、ものさしを見直さないと。どのメニューで利益を出すのかを考えずに営業するには、日本の外食産業は成熟しすぎるくらい成熟しています。

たとえば、肉バルのステーキなどは看板であり集客用メニューでもある。店としては割りきって出している面もあるわけです。そういう店はサイドメニューで利益を出している。まあどうしてもコスパばかりが気になる人は、お店にとって利益率の高いアルコールやサイドメニューを注文せず、看板メニューばかり注文する手もあるかもしれません。

そんな客ばかりになったら、店はつぶれるでしょうが、そのときには客である自分の選択のせいだと割りきってください。いや、本当に笑いごとじゃなく、そういう客が店をつぶすケースもあるんです。

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