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なかなか起きない子どもに「早く起きないと学校に遅刻するよ!」と母親が叱るのは、朝のよくある光景。そこで子どもが「頭が痛いから休みたい」などと言おうものなら、「夜更かししてたせいでしょ!」と小言のひとつも言いたくなるかもしれない。

確かに、夜中までスマホやゲームをしていて睡眠不足のケースもあるだろう。でも、それがもし病気のせいであったら……?

「朝、起きられない病気」というのが実際にあるのだ。「起立性調節障害」という耳馴染みのない病気であるが、なんと中学生の10人に1人が発症するという。つまり、水面下ではクラスに3人ほどの子が、この病気を患っていることになる。

やさしくわかる子どもの起立性調節障害(田中大介/洋泉社)では、小児科の医師によって病気の正しい理解とサポート方法が丁寧に解説されている。起立性調節障害になると、立ちくらみやめまい、頭痛、吐き気などによって朝起き上がることが困難になる。

なぜ、こういった症状が起こるのだろうか。それは、自律神経が関係している。自律神経は、心臓の動きや消化活動、体温コントロールなど、人間の生命維持に欠かせない働きを担っている。

自分の意志とは関係なく、自動的に体のさまざまな微調整を行っているのだ。自律神経には、体の活動を促す交感神経とリラックスさせる副交感神経の2種類があり、それぞれが交互に働きながら体全体のバランスを調整している。

小学校高学年から思春期に発症する起立性調節障害は、身体的な成長に自律神経のネットワークの発達が追いつかないことに原因があるらしい。さらに交感神経と副交感神経のバランスも悪く体調を崩しやすくなって、立て直しに時間がかかるそうだ。

ただ、ベッドに寝ている間は、通常ほとんど症状が出ないという。寝ている状態は、血液を送り出す心臓と脳がほぼ同じ高さに保たれているため、脳には充分な血液が行き届いている。

しかし、ベッドから起きて立ち上がると、重力によって全身の血液が下半身に移動してしまい、脳は血流不足となってしまう。そうならないために自律神経が働いて、下半身の血管を収縮することで脳への血流を確保しているのだ。

このとき、自律神経システムがうまく働かないと、血液は下半身に溜まったままで血圧が下がり、脳への血流も低下してめまいや立ちくらみが起こってしまう。これが、起立性調節障害の起こるメカニズムである。

この病気の大きな特徴は、午前中は具合が悪くても、午後から夜にかけて調子が良くなる傾向があること。そのため、日内変動がある「うつ」とも間違われやすい。実際に、うつ病と誤診されて抗うつ薬を処方され、症状が悪化してしまった子もいるそうだ。

朝、頭痛やめまいなどで起きられなくても、夜には別人のようにテレビを見て笑っていたら、起立性調節障害の可能性が高い。ただ、こうした様子は周りに「怠け」や「サボり」としばしば誤解されてしまう。

学校の先生やクラスメイトのみならず、自分の親からも理解されないケースが多々あるらしい。そうなると、子どもは心も体もツライ状況に追い込まれてしまうだろう。決して子どもは怠けているわけではなく、「学校に行きたくても行けない」状態なのだ。

学業の遅れや自分の未来にも不安を感じている。引きこもりなどの二次障害を防ぐためにも、周囲の正しい理解とサポートが重要だ。

起立性調節障害の治療は、それぞれの症状に合わせて血圧を上げる薬や血管を収縮される薬が使用される。それだけでなく、日常生活、運動、食事などの非薬物療法も大切になる。

たとえば、ベッドから起き上がるときはゆっくり起き上がるなど、病気を改善するコツについても本書で詳しく解説されている。起立性調節障害は、大人になれば症状が軽快すると言われているが、先の見えない不安に押しつぶされそうになることもあるだろう。

病気の早期発見・早期治療とともに、やはり周囲のサポートは欠かせない。誤解に苦しむ子どもがひとりでも減るように、本書を読んで病気の正しい知識を得ることが、私たち大人にできる第一歩だ。

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