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生放送ドタキャンから10年、7年ぶり来日時(2013年)のt.A.T.u.(C)ORICON NewS inc.

かつては人気テレビ番組の主流を成していたのが“生放送”。

シーズン中、ほぼ全試合生中継されていたプロ野球の巨人戦や、生放送が当たり前だった歌番組のほか、『8時だョ!全員集合』(TBS系)などバラエティでも生放送番組があったのだが、今は野球中継も歌番組もほとんど影を潜めている。

音楽番組『ミュージックステーション』(テレビ朝日系)が唯一牙城を守っているものの、今や生放送番組と言えば、日中の情報番組や各時間帯のニュースくらいで、一見生放送っぽい『ワイドナショー』(フジテレビ系)ですら収録。

“予定調和”を逸脱する生放送ならではのスリルやハプニングはテレビの醍醐味であったはずだが、録画のバラエティが当たり前になった現在、もうそれは味わうことができないのだろうか?

“伝説”や“名場面”が生まれていた過去の生放送番組

ただ、生放送のハプニングと言っても、制作側にしてみれば、社会問題になったり、CMスポンサーに迷惑をかけることもあるので、望ましいものではないかもしれない。

しかし、視聴者にとっては、生放送の緊張感やスリルがまさにテレビのおもしろさという意識が昔からある。だからこそ実際これまでにも、生放送では数多くの“伝説”や“名場面”が生まれているのだ。

「衝撃的だったのは、1989年に放送された『ヒットスタジオR&N』(フジテレビ系)での“FM東京事件”でしょうね。忌野清志郎さん率いるタイマーズのメドレー演奏でしたが、2曲目に突然、リハーサルになかったFM東京さんを批判する曲を歌い始めたのです。

これは清志郎さん作詞の歌が放送禁止にされたことや、RCサクセションの反原発ソングが発売禁止になったことなどへの抗議の意味合いがあったんですが、“腐ったラジオ”“政治家の手先”とさんざんコキ下ろしたあげく、放送禁止用語を絶叫するなど、まあそれはハプニング中のハプニングだったわけです。

でも、ロックしているし、カッコよかった。同番組に出演していた永井真理子さんなど歌手たちも大ウケでした。演奏終了後、司会の古舘(伊知郎)さんがお詫びのあとにメンバーと普通にトークをしているところはいま観てもウケます。

まあタイマーズは、大麻を礼賛するかのような歌を歌ったり、バンド名自体もそうですから、現在では存在自体が放送禁止になるかもしれません(笑)。

でも、あのときの演奏を途中で止めたり、差し込みを入れたりせずに最後の曲までちゃんと放送しているところがいい。ある意味で大らかというか、番組制作者も肝が座っていた時代でしたね……」(バラエティ番組制作会社スタッフ)

そのほか、『ザ・ベストテン』(TBS系)に出演した吉川晃司の扉破壊や、『オールナイトフジ』(フジテレビ系)でのとんねるずの1600万円のテレビカメラ破壊など、今となっては笑い話でもある“器物破損”系もあれば、『ミュージックステーション』でt.A.t.u(タトゥー)が出演直前にドタキャンし、急きょミッシェル・ガン・エレファントが2曲演奏して危機を救ったという“株を上げた系”。

さらには『27時間テレビ』(フジテレビ系)で笑福亭鶴瓶が泥酔して局部を露出、その後、高島彩アナ(当時)が神妙な面持ちで謝罪、という完全な“事故”もあった。

「今は歌番組やスポーツ番組も減りましたし、バラエティもBPO(放送倫理・番組向上機構)の規制に引っかかれば番組終了もありえるので、生放送は怖くてなかなかできません。

でも、お堅い系のニュース番組などは、番組の性質上生放送じゃなければ意味がないので、逆に意外とハプニングが多いんですよ」(前出・スタッフ)

予定調和から逸脱する“なにか”が起こることへの期待

確かに最近でも、『報道ステーション』(テレビ朝日系)における古舘氏とコメンテーター・古賀茂明氏との“生放送バトル”や、まさかの“号泣県議”会見、NHK山形放送局のお天気キャスターが言葉に詰まった末、番組中に泣き出してしまうなど、報道番組においては“ハプニング”が目立っているようだ。

一方で、バラエティなどのエンタテインメント系の番組で、すべてが予定調和のもとに進むことにはどこか刺激が足りないというか、おもしろみに欠ける。仮に“ハプニングっぽい”ノリがあったとしても、企画めいたものを感じてしまうのは否めない。

生でなければいくらでも編集できるから、そこに“危険なもの”は存在しないはずという意識があり、緊張感や臨場感が削がれていってしまうのだ。

老若男女が安心して観られるのが今のテレビのよさでもあるのだが、その一方で元気がないと言われることも、そうしたハプニングすらも想定内にあることに起因しているのではないだろうか?とくにバラエティのおもしろさは“想定外”にある。視聴者の多くがそう感じていることだろう。

よくもわるくも、かつて“伝説”はテレビから生まれていたことが多かった。数々の流行を生み出した『8時だョ!全員集合』にしても、生放送だったからこそ、いきなりオープニングから約10分間停電するという、いまで言うところの“神回”があったわけだし、出演者たちも機転を利かせた“神対応”をしていたのである。

現在は、『ミュージックステーション』が生放送の最後の砦と言ってもいいかもしれない。先日放映された10時間特番でも、放送開始直後に“タモリさんの声がガラガラだけど大丈夫か?”なんて声がネットニュースに即流れる時代になったわけで、生放送番組とネットニュース、SNSなどが絡む“ライブ感覚”を提供するテレビ番組が増えてもいいかもしれない。

ネットを探せば刺激的なコンテンツはいくらでもあふれている時代だが、“お茶の間”であるテレビには、なにげなく観ているなかで、そこに映し出される“テレビで放送できる健全な世界”に予定調和から逸脱するなにかが起こることへの期待が、視聴者には常にあるのではないだろうか。

そんな“ドキドキ感”があるのがテレビのおもしろさであり、それを満たしてくれる生放送番組が待ち望まれている。

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