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「今年のクリスマスは前妻と過ごしていいですか?」これは『フランス人は1割しかお嫁に行かない』(柴田久仁夫/東邦出版)の見出しである。フランス男はこんな言葉をさらりと現妻に言ったりするのだろうか?

「結婚」という形にこだわらないアムール(恋愛)の国の人々は、パートナー、家族、社会の関係をどう捉えているのか? 本書は、34年間、家族とフランスで過ごした日本人ジャーナリストによる最新の結婚事情をはじめ、21のテーマで日仏の違いを見つめた面白見聞録だ。

婚姻率10%、事実婚が全カップルの50%というフランス。結婚数の減少とは裏腹に、出生率は増え続けているという。その理由に同性異性を問わず、事実婚のカップルに対して、法的婚姻関係とほぼ同等の権利を認めた制度があり、手厚い家族手当もある。

さらに「同性婚法」では養子を迎える権利が認められているのだ。婚姻関係がなく、家族を作っても社会的な偏見がないところは、「未婚じゃない“非婚”の国」と言えるだろう。

個人が確立されているから…とは言っても、家族間のいざこざがそれなりにあるのはフランスも同じ。ただ、この国には「嫁」「姑」にあたる言葉がない。

日本よりはるかに激しいという嫁姑問題。ところが何か問題が勃発しても、納得がいくまでひたすら話し合い、激しくやり合っても議論の範疇ということで、ウェットな修羅場にならない。

お互いの主張をぶつけ合うことが終わると、ケロっとした顔で有名人のゴシップ話に2人で盛り上がったりする。それは「姑と嫁」ではなく、人間対人間という感じだから。

出典『フランス人は1割しかお嫁に行かない』(柴田久仁夫/東邦出版)

しこりを残さないのがルール。同居はせず、年に一度のクリスマスくらいしか会わないのもコツだが、家族の関係が軽いというのも特徴のようだ。

有名なのが、基本的にフランス人は自分の非を認めないという国民性だ。トラブルで自分が不利益を蒙りそうなことだったら絶対に謝らない。著者は日本では考えられない無責任体質を「セパ・マ・フォート」(私のせいじゃない)の章で記している。

しかしその一方で、「トラブルは楽しめてこそ一人前」いかにうまく付き合っていくか?ともある。

想定外のトラブルは起こるのが普通、「だったら、とにかくやっちゃえ」「問題が出たら、その都度臨機応変に」というプラスの無責任体質も書かれている。例えば旅先のホテルで機転が利くフロントについて…

会社の規則より、目の前のアナタ。臨機応変かつ血の通った対応をすべし。規則よりも、客の笑顔を優先しよう。自分の判断で行い、判断の責任はとる。個々の存在が立っている。組織の中にいても個人が埋没していない。

出典『フランス人は1割しかお嫁に行かない』(柴田久仁夫/東邦出版)

一見、矛盾しているように思うが、規則に対する「緩さ」「アバウトさ」があるからこそ、うまくバランスが取れて個人が活きているのかもしれない。

意外にも保守的なのがフランスだ。「いつも同じ」を美徳とし、頑固なまでに変化を嫌う文化がそこにあった。

買い物や食事、店、旅行先はいつも同じ。フランス人はある一定のレベルの快適さを手に入れると、それで満足してしまう。変わらないことの心の平穏に、より価値を置いている。

出典『フランス人は1割しかお嫁に行かない』(柴田久仁夫/東邦出版)

変わらないものを大事にすることは、新しいものを無制限に求めてしまう人間の欲望に対する戒めとなる価値観と言えそうだ。

家族に頼らず、セカンドライフはあえて「ひとり」という考え方も高齢化が始まるずっと前からある常識。

知り合い同士が出会った時に、お互いの持ち物を褒めまくるのが普通。あくまで目の前にいるあなたについての評価をする。相手もお返しをする。

そういうやりとりを繰り返してきたフランス。人から見られることを意識し続けることが、背筋をピンと伸ばし続けている理由かもしれない。

出典『フランス人は1割しかお嫁に行かない』(柴田久仁夫/東邦出版)

老境に差し掛かったマダムが老け込まず、おしゃれで凛とした雰囲気を持ち続けられるのはなぜか、わかった気がする。

異文化の中で驚きと戸惑いの連続だった著者の日常。憎たらしくも愛すべき、マイペースで人生を楽しむ彼らに、いつしか「ま、いいか」の精神を学ぶことに…。

軽さ、ゆるさ、アバウトさは、個人が快適に生きていく上で大事な「技」なのかもしれない。身軽な心と暮らしを大切にしているフランス人が、なぜ素敵なのか? その理由が本書には詰まっている。

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