9月17日、映画『聲の形』の全国ロードショーが始まりました。原作は大今良時氏によるマンガで、2015年に『このマンガがすごい!』オトコ編で第1位を獲得したほどの人気作です。

ストーリーは、主人公の男子小学生・石田将也が耳の聞こえない同級生の女子・西宮をいじめてしまい、その後の人生で罪悪感に悩まされるというもの。背負った罪の十字架は重く、彼の“弱さ”に多くの読者が共感したようです。

『ジョジョの奇妙な冒険』の作者・荒木飛呂彦氏や『バガボンド』の井上雄彦氏などは、ヒットするマンガの条件として、キャラクターの“欠点(弱さ)”こそが最も大切と語っていますが、それは具体的にどういうことなのでしょうか。

そこで、最近大ヒット中のマンガ3作品を例に挙げながら、筆者の独断と偏見も交えつつ、検証していきます。

“海賊王”はひとりじゃなれない

出典 https://www.amazon.co.jp

言わずと知れた『ONE PIECE』(尾田栄一郎/集英社)。主人公ルフィが海賊王を目指して仲間と一緒に冒険する話です。

ルフィの欠点は自分ひとり では何もできないところです。「おれは助けてもらわねェと生きていけねェ自信がある」という台詞からも分かるように、仲間がいなければただの大飯食らいの穀潰し。

航海士、料理人、船大工、音楽家などがいて、はじめてルフィは船長として自由に海を冒険できるのです。ただし、ルフィの場合、自分ひとり では無力であると言い切る“潔さ”を持っており、それに魅せられて仲間が集まってくるのです。

これをビジネスシーンに置き換えてみると、なかなかそんな上司はいません……。偉そうにふんぞり返って、給料を払っているんだから“365日24時間死ぬまで働け”とか、“きみたちは私を尊敬しなさい”といった理不尽な考え方のボンクラ上司だっているぐらいです。

NHK『クローズアップ現代』(2011年)によれば、同作の読者層の9割は成人とのこと。ルフィが持つ“求心力”は、今を生きるビジネスマンにとって“憧れ”なのではないでしょうか。

“妄想”がバレてもあなたと生きたい

今年の6月に映画化された、少女マンガ原作の『高台家の人々』(森本梢子/集英社)。30歳の地味な妄想系OLと、人の心が読めてしまうテレパス系イケメンとの恋愛ストーリーです。

主人公・平野木絵の欠点といえば、その残念すぎる妄想癖。取引先の社長の顔を“ランプの精さん”に見立てたり、同僚女を“マッチョな競泳選手”に脳内変換したり……。放っておくと妄想の翼を広げてどこまででも飛んでいってしまうあり様です。

とはいえ、人間誰しも妄想のひとつやふたつするのは当たり前。トレンド総研のアンケート(2014年)によれば、「あなたは、恋愛に関する妄想が好きですか?」という問いに72%の女性が「好き」と回答したそうです。

そんな彼女にとって、自分のお花畑な脳内が筒抜けなワケですから、テレパスのオトコは天敵のはず。しかし、彼女はその素直な性格ゆえに他人を悪く思わず、今年5月に発売された最新巻では、彼氏のテレパスの能力を知っても尚、一緒に生きていく道を選びました。

妄想女子の化身である平野木絵に“共感”が集まるのは必然であり、彼女が幸せになれるかどうかは、世の女性たちにとって他人事ではないのかも。

銃さえあればオッサンも“ヒーロー”

『アイアムアヒーロー』(花沢健吾/小学館)は、謎の感染症によって人類がゾンビ(ZQN)化してしまい、男女が世界の崩壊から生き延びようとする物話。今年4月には映画化もされ、大ヒットしました。

主役の鈴木英雄(35歳)は、他のマンガ作品では類を見ないほどにダメっぷりが目立ちます。元々、彼は内向的で妄想癖のあるさえないマンガ家でした。しかし、たまたま趣味がクレー射撃だったので、ZQNに支配された世界ではヒーローになります。

銃という圧倒的な“力”を持っていて、そこそこ腕もいい。となると、当然モテます。35歳のオッサンが若い女の子とねんごろ な関係にもなれちゃうワケです。

まるで今の現実世界を風刺しているような話ですよね。性格や人間性じゃないんです。今の社会にとって、力の象徴であるカネやコネに勝る武器なんてありません。

筆者はこのマンガの内容を人づてに聞いた時、“一体主人公はどんなツラしてやがるんだ”という“嫉妬”心を原動力にページをめくりましたが、同じように読み進めた人も多いのではないでしょうか。

ここでは3人のキャラを紹介しましたが、確かに有名マンガの主人公には欠点がありました。しかし、彼らの欠点には、読者に憧れ、共感、嫉妬を抱かせる力があるように思えます。

これらが果たしてヒットの秘訣なのか真相は不明ですが、皆さんも自分の好きなキャラの欠点について考えてみては?

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