知られざるママの実態や本音を紹介するコーナー「ママのホント。」

育児書をひらくと、“母乳のすばらしさ”について書かれていることが多いですよね。赤ちゃんと触れ合えること、ママの栄養と免疫をダイレクトに与えられること…。筆者も“母乳育児が一番望ましい”といった内容の特集ページを幾度となく見てきました。今回お話しをしてくださったSさんも、その1人。

「妊娠中は完母でいこうと思っていました。母乳パットや搾乳機も用意して、母乳育児をする気満々でいたんです。でも、出産してみたら思うようにはいかなくて…」

完母というのは“完全母乳で育児をする”ということ。粉ミルクのような人工乳を使用せずに、母乳だけで授乳期を過ごすことによって、より母子の絆が深まるとされています。しかし、事情があって母乳育児ができない人だっているのです。

乳腺炎でダウン。医師と相談して母乳をストップ

Sさんは産後まもなく高熱を出してしまいました。出産後、根気よく乳首を吸わせて母乳を出そうとしたものの、乳腺が詰まってしまったことが原因で、乳腺炎になってしまったんです。昔は“おっぱい熱”ともいわれていた症状で、作られたおっぱいを十分に出し切れずにいると、乳腺が炎症を起こしてしまいます。乳腺炎の発症には食事も大きく関わるとのことでしたが、入院中できっちり管理された食事のもとでの発症…。Sさんは医師と相談し、母乳育児を諦めることにしました。

体質的なものもあると言われました。搾乳をして一時的に炎症を解消しても、また母乳が作られるので赤ちゃんが十分の飲んでくれないと延々と搾乳をすることになる。熱は40度にもなり、赤ちゃんを抱くことさえままならない状況でした。粉ミルク育児に抵抗を感じる反面、これでは育児も家事もままならないと思って、医師と助産師さんのいう通り母乳は諦めました

こんなはずじゃなかったのに…とふさぎ込む間もないくらいに、すぐに退院の日はやってきました。退院の日には熱は微熱まで下がり、赤ちゃんは病院で粉ミルクを少しずつ飲んで問題なく退院できたのだそう。しかし、帰ってからが本当の闘いのはじまりだったのです。

哺乳グッズを買うことだけで、もう大パニック!

「出産前は母乳育児をしようと思っていたから、哺乳ビンなんて用意していませんでした。なにを買ったらいいのかわからないし、そもそも生まれたての赤ちゃんを連れて人混みへ買いに行けないので、主人に買い物を頼むことにしました」

退院の日、家に送り届けてもらったあとにご主人が急いで哺乳ビンを買いに行ってくれたといいます。ご主人は消防士で家を空けることが多く、退院の日だけはなんとか休みが取れたのでした。しかし、ご主人にとっても父親になるのは初めてのこと。「哺乳ビンと粉ミルクを買って来て」と言われても、なにをいくつ買えばいいのかもわからず、途方に暮れてしまったんだとか。

「後日、主人から『店員さんに色々聞いて、とにかく足りなくならないようにいっぱい買ってきた』と聞きました。主人は哺乳ビンをいろいろなメーカーのものを購入してきてくれたんですが、哺乳ビンにつける乳首にも、小さな丸とか十字型があるのも知らなかったですし、哺乳ビンの殺菌消毒の仕方も、粉ミルクのメーカーもわかりませんでした」

しかし、せっかく苦労して買ってきてもらった哺乳ビンと粉ミルクでしたが、赤ちゃんは思うように飲んでくれなかったといいます。飲んでは吐き戻し、泣かれ、2時間も持たずに授乳…。粉ミルクは案外高く、精神的にも金銭的にも大きな負担になってしまいました。

殺菌・消毒・温度管理…粉ミルクの大変さを痛感

完全母乳育児を実践しているママさんからは、なぜか冷たい目で見られることが多かったと話すSさん。実は筆者も粉ミルクでの育児経験者なのですが、その気持ちがとてもわかります。近年の母乳育児信仰は徹底しており、中には「粉ミルク使ってる親は悪だ」といったような記載まであるんです。お酒が飲みたいから粉ミルクを使っているのではないか?好きなものを食べたいから粉ミルクにしているんじゃないか?そんな悪い憶測ばかりで粉ミルク育児をしているママは悪だと誤解されることも多いようです。どうしようもない事情で、泣く泣く母乳を諦めたママさんがたくさんいるのに…。

「やってみて思うのが、とにかく殺菌消毒の大変さ。哺乳ビンをたくさんストックしておくわけにはいかないですし、決まった時間煮沸しななければならない。電子レンジでの加熱殺菌も試しましたが、その前にまず丁寧に底から乳首まですべてのパーツをしっかり洗わなければならないし。授乳して、洗って殺菌して、また授乳して…という生活でした」

母乳には母乳の大変さがあることでしょう。しかし、粉ミルクには粉ミルクの大変さがあるのです。

「赤ちゃんが飲める温度にミルクを作ることも、最初は苦戦しました。熱過ぎたらヤケドしてしまう。でも、ぬるくなり過ぎたら気に入らないのか飲んでくれない。そのさじ加減がとても難しかったです」

育児は楽しいもの。育児はかけがえのないもの。それはどのママさんもわかっていることです。でも、それと同時に育児は大変で、責任重大なこと母乳も粉ミルクも、ママさんが我が子のために大変な労力を費やすことには変わりないのです

「救われたのは、主人からの一言でした。子供を遊ばせるために市が運営している子育て支援センターに行ったとき、母乳育児のママさんからイヤミを言われたんです。それを話したら主人が言ったんです。

『かわいそうな人だね。みんなそれぞれ、一生懸命に育児をしているのに』

わたしだって母乳で育児をしたかった。でも出来なかった。それでも一生懸命に毎日授乳してきました。それを主人はわかってくれていて、救われる気持ちでした

現在、娘さんはもうすぐ2歳。無事に卒乳となって、授乳がひと段落したSさん。粉ミルクでの育児について、率直な感想を聞いてみました。

「大変でした!でも…もう哺乳ビンを消毒することもないのかな、とか思うとなんだか切なくなりますし、一生懸命にミルクを飲む娘を見ることはもうないんだな…って寂しい気持ちです。その当時はいろいろ悩むことはありましたが、母乳でも粉ミルクでも、きっと授乳期ってアッという間なんですね」

笑って話すSさんの目は、輝いていました。取材中ずっとゴキゲンでいてくれた娘さんにも感謝です。こうやってママさんは皆、思い通りの育児とはいかなくても、貴重な毎日を味わって過ごしていくのですね。

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Spotlight編集部 コンテンツハートKIE このユーザーの他の記事を見る

代表を務めるのは元船舶料理士、フリーライターとして活動し6年目になるKIE。仕事、育児、家庭、家事…”なにも諦めない生き方”の実現を目指し、やる気に溢れたママさん達とライター集団を結成。心にそっと寄り添う、日常に彩りを添える記事の執筆を目指し活動しています。

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