「自分を纏うものがなくなり、生身になることは恥ずかしい。だからその分、“人生の層”を厚くしなきゃいけない」

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彼の名は「田中聖」。12歳で芸能事務所入りをし、アイドルグループでの歌手、俳優、タレント活動を経て、2014年、ロックバンドINKT(インク)のボーカリスト・KOKIとしてリスタートを果たされました

国内だけでなく、自分たちの存在を誰も知ることのないシンガポールやブラジル、フィリピンでもライブを敢行し、INKTを圧倒的な存在へと昇華させていた彼ら。そんなライブ活動を“武者修行”と名付け、真摯に、そしてひたむきに向き合い続けている田中聖さんが単独取材で語った、“あれから”と今の自分とは…。

“前略、今どうしてる?” Special interview

ロックバンドのボーカリスト・KOKIとしてリスタートを果たした「田中聖」の今

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「2年前ですね。INKTが結成したときに、メディアで「元アイドルの田中聖が率いる」や「あの田中聖が所属するバンド」と報じられることへ、ジレンマというジレンマはありませんでした

バンド結成にあたって、“俺の名前”という使えるものがあるならそれを使えばいい。誰も不幸にしないならば、使われていいと思いましたね。バンドを始める以前の自分のことを、できればお客さんが知らないほうがいいとか、知っているのがイヤだなって気持ちは全くないです。そういった時代があってこその、今だと思っています。

まだ、俺がバンドをやっているとを知らない方も多いと思っていますYouTubeなどに出演する“ネット活動”をしているのは、入り口がなんであれ、ちょっとでもINKTのことを“いいな”って気になっていただきたくて。やっぱり1番の願いは、“生でINKTのライブを観てほしいこと”なので、キッカケになればという気持ちです」

出典 https://www.youtube.com

(ニコニコ動画やYouTubeで人気を博している、恭一郎さんの「恭チャンネル」に、突然降臨したことも話題となりました)

後輩に言い続けてきた、「俺を踏み台にしてほしい」

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昔から、けっこう後輩に言ってきたことがあるんです「俺を踏み台にして上がってほしい」。メンバー、周りのバンド仲間、友達が、俺を踏み台にすることでどんどん上がっていってほしいと思っていました。それでも、いざ踏み台になったら「チクショー!されてたまるか」って俺自身もどんどん上がっていける。

ボーカルやってる以上、目立ちたい願望は強いけど、バンドマンは全員“横並び”がいいな。INKTの結成当初はメンバー5人が、1人脱退してしまった今は4人。そのバンドメンバー全員がフロントマンじゃないんだったら、カラオケで歌うのと同じになっちゃう。いわゆるフロントマンと呼ばれるボーカルと同じぐらいメンバーが前に出て、横並びになった瞬間に、全員がカッコいいロックスターでいるのが理想ですね」

なんと、INKT新アルバムの制作費を「クラウドファンディング」で募る!

ニューアルバムの制作費を、クラウドファンディングで募るという試みは、良くも悪くもたくさんの声をいただきました。ファンの子の中には「クラウドファンディングってなに?」って戸惑った方も多かったかもしれないけれど、おかげさまでたくさんの協力をいただいて、スゴくいいアルバムを作ることができました。

戸惑う方が多いだろうなと予感していたので「じゃあ、自分らのできる精一杯の恩返しってなんだろう?」って考えたんです。それでコースによっては思いきって、特典に「打ち上げ参加券」や「公演終演後のKOKI誕生会参加券」をつけたんですけど、当日どうなることやらその瞬間まで分からない…だってこの歳になって、自分で自分のお誕生日会を開くんですよ!?

30歳を迎えて。「正直、10年前の時点では今の自分が…」

「三十路の節目、感じるは感じます(笑)。節目にあたってスッゴイ悩んだわけではないですけど、漠然と“10年後どうなってるかな…このままで大丈夫か!?”ってなりますもん。逆に10年前は…うん…正直、自分がバンドをやるとは思ってなかったし…30歳になったときに、自分はどうしているだろうと想像すらしていなかったですね

2年ほど前、俺がそれまでとは違う道を歩むことになったときに、ソロアーティストとして生きようと考えたことはなかったです。自分の中である程度整理をつけることができてから、ギターのKeiに「なぁ、バンドやらない?」って声をかけて。

彼は彼で偶然、ベースのmACKAz、ドラムのSASSY、それから今はINKTからは脱退してしまったキーボードのkissyと「4人でバンド組みたいけど、ここに入るインパクトの強いボーカルいないよね」っていう話をしていたんですよ。だから「あ〜、スゴいあくが強いの来たわ」って思ったらしい(笑)」

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「嫁を3人、見つけることなんてできない」

「そうして結成当時のメンバー5人が集まって「軽くスタジオ入ってみるか〜」って音を出した流れで、もうアルバムを作り始めてましたね。

バンドメンバーを見つけるのって、多分嫁見つけるのより大変。人間としての相性はもちろん、人生をかけなきゃいけないし…。かと思いきや、シビアに“仕事”という面もある。現在のメンバーでいえば、そういう人を3人見つけなきゃいけなかった。嫁を3人見つけることなんてできないですよ…。ホント、このメンバーに出会えたことは“運命なのかな”って思ったし、“いい嫁たちを見つけたな…恵まれているなァ”って感じています」

昔から“背負わなきゃいけないもの”に囲まれていた中で

自分がこういったお仕事を始めてからは18年以上経っているけれど、バンドとしてはまだ2年目でルーキーだと思ってるので、今のうちにいろんなものを吸収したい。音楽に対しても、人生においてもいい経験ができている2年だったと思っています。

この2年の間に「ああ、ひとりじゃなにもできないんだな」って考えをしっかりと持っていきました。歌ひとつ歌うのも、周りの方がいなきゃできないし、お客さんがひとりでもいなきゃ歌えない…。ひとりいてくれたら、5万人であろうが10万人であろうが同じモチベーションでやるけど、そのひとりがいなきゃできない。そういうことをしっかり自覚したからこそ、感謝やリスペクトの気持ちを忘れたくないなと感じるようになったのかもしれない。

家庭を持っているメンバーもいるので、フロントマンと呼ばれる以上、俺はそういうところまで背負わなきゃいけないと思っています。“いろんな人のいろんなところまで責任を持たなきゃ”って。もちろん、昔から背負わなきゃいけないものはたくさんあったし…もしかしたら昔のほうがたくさんあったのかもしれないけれど…自分が30を越えたから分かるようになったことも大きいかもしれないですね。大人になったのかな…」

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「考えが変わったことがほかにあるとすれば、昔は単純に“この人みたいになりたいな〜”、“親父みたいな男になりたい”と、誰かに憧れることもあったんですけど、今はむしろ、自分以外、出会った人間みんなを尊敬しているぐらいです。

せっかく出会った以上は一期一会。裏切るのも裏切られるとかも嫌なので、まずは「信じすぎず、信じるところから」って想いを持っています

男5人兄弟!田中家特有の「ルーティン」に驚愕

(おばあさまと兄弟のみなさんと。事務所に所属しているため残念ながら写真にはうつっていませんが、四男の弟さんももちろん一緒です)

「信じあえて、尊敬できている人に、4人の兄弟がいます。仲いいですね〜。それでも1回、兄弟全員がぶつかる大げんかをしたこともあったなぁ…。原因があったというより、全員が全員、いろんなことが積み重なってキャパオーバーになっちゃった感じなんですけど、数ヶ月口もきかないほどになってしまって。でも「いうても家族だから離れることはない」って想いが根底にみんな持っていたので、それを経てさらに仲良くなったかな。

意外とね、男5人兄弟ですけど「ごはんの取り合いでケンカ」っていうのはなかったんですよ。好きなもの早く食べないとなくなる!っていうのはあるんですけど、歳が離れてるから食べ盛りがかぶってなくて。兄貴が俺の10コ上で、すぐ下の弟が6コ下、その下は10コ下で、末っ子は14コ下。田中家はひとり食べ盛りが終わったら、次が食べ盛りになるルーティーンでやってきました(笑)

「お袋のこと、大好きですね。それを“マザコン”っていうなら俺ら兄弟は全員マザコンだろうなと思います。ベッタベタに「ママがいないとなんにもできなぁい」ってことではないけど、マザーコンプレックスっていうならマザーコンプレックスだし!ファザーコンプレックスで、ブラザーコンプレックスです

そういえばお袋は、INKTのファンクラブのプレミアム会員なんですよ。あるとき急に「明日のチケット、ファンクラブで取ったんだけど〜」って言われて。俺に言ってくれたら招待したのにって思うんですけど「いいから、貢献する」って。1枚買ったらしいです。50人ぐらい連れて来てくれたらいいんですけど…(笑)。

そんな家族に、さすがに面と向かって「大好きです」とは照れくさいから、メールとか電話で伝えています。ハタチの誕生日の瞬間に、お袋には「生んでくれてありがとう」ってメールをしました

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「俺は多分、ずっと“隣のあんちゃん”です」

「Twitterなどをみた方から、親しみやすいと言っていただけることが多くて。俺は多分、ずっと「隣のあんちゃん」みたいな感じです(笑)。ステージの上からはエラそうに「夢は叶うぞ」みたいなことを言うこともあるけど、でも育ち方とか環境が違っただけで、フロアにいるお客さんと俺らってなにも変わりはないだからこそ、ステージ上ではカッコよくいなきゃな、絶対にカッコ悪くなっちゃダメだなって想いを持っています。

俺は趣味は多いんですけど、特筆してずば抜けてっていうものがあるかっていわれたらそうでもないので、1番好きな音楽しかできない。ゴく辛かったときも音楽に助けてもらったな…って考えると、“ああ、音楽にも恩返ししなきゃな”って思う。だから音楽には真摯でいなきゃなって。

なので、自分がINKTのメンバーになるときはスゴく悩みました。ほかのメンバーは、みんなそれまでのバンド経験の中で素晴らしいボーカルにたくさん出会ってきた。その中に自分が入っていくので「まず彼らを納得させられる歌を歌えるか?納得させられる歌詞がかけるのか?」。悩んで悩んで、必死にボイトレ通って…作詞についてアーティストの方に相談させていただいて…」

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「以前Rapをやっていたときは、深いRapをしたり、はたまた聴き心地が楽しいRapをしながら、自分の中で“言葉を遊ぶ”ことができた。でも歌の歌詞となると、ボーカルが楽器に変わる。声っていう楽器と、歌詞っていうそれぞれ独立した楽器を2つ持たなくちゃいけないと思うので、どっちも研ぎ澄まさなきゃって感じでした。

常に考えているのは、歌詞の中に「どれだけ人生を詰め込めるか」ということ。知り合いの方に「作詞って、タマネギの皮を剥いていく作業だよ。何十個も皮を剥いて、自分をさらけ出してくんだ」って教えてもらった。

どんどん生身になっていくことは恥ずかしいし、纏っているものも少なくなっていっちゃうから、
その分“人生の層”をちゃんと厚くしなきゃいけないなとも思いました。同時に、だからこそ自分にしかかけない歌詞でもあるんだろうな、って気がつくこともできた」

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“決してデッカイ夢を持つ必要はない”

「人生の層を厚く、多くしなきゃいけないけれど、決してデッカイ夢を持つ必要はないと思うんです。ちっちゃい夢でもいいんだと思う。そう考えて1度だけ「未来日記」みたいなものを書いたんですよ。10年後、自分はこうなっていたい。死ぬまでにこれがしたい、ほしいって思うものを素直に全部書き出して、じゃあそのために3年後こうなっていなきゃな、そのために今これをしようっていう…「人生予定表」。できたことを消していくと「次はこれかァ〜デカいなぁ…よし頑張るぞ!」ってなる。

「明日、肉喰いたい!」でいいんです。「今年中にスゴく美味しいステーキ喰いたい」っていうちっちゃい夢でいい。俺にとっては、それ何個叶えていけるかっていう人生のほうが楽しいかな。そのほうがきっと、終わりがなくって、ずっと楽しくいられると思うんですよね

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ーー若干12歳のときから生きてきた眩しい世界。16年のキャリアを誇るその場所を突然離れることになるも、“背負わなきゃいけない存在”への自覚を抱き、2年前、ロックバンドのボーカリストとしてリスタートを切った田中聖さん。

30歳という新たな地点に経った今、彼は“人生の層”を厚くしなければと自戒を込めているさなかでした。ともすれば、がむしゃらに「人生予定図」を掲げてしまいかねない状況。ですがそこに「ちっちゃな夢でいいんだ。それを何個叶えていけるかっていう人生のほうが楽しいかな」と零した田中聖さんの飾らない優しさに、音楽や人間関係において真摯でひたむきな姿が、重なり合わさっていくようでした。

【田中聖(たなかこうき)プロフィール】
1985年11月5日生まれ。千葉県柏市出身。2014年10月1日に、ロックバンドINKTのボーカル・KOKIとして始動を発表。唯一無二の歌声と変幻自在のRAPが特徴のボーカリスト。

9月21日にINKT 3rdミニアルバム「Life’s Color」をリリース。2016年10月よりアルバムを引っさげた「INKT LIVE HOUSE TOUR 2016」の開催も決定している。またその端正なルックスと高い演技力から、俳優としても積極的に活動を行っている。

Interview&Text / Spotlight編集部、黒川沙織 Photo / 梅田直子 Location / レインボー倉庫2

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