ファイナンシャルプランナーである筆者が、あまり長いとはいえない人生の中で、火災保険のお世話になる事故に遭ったのは2度。それも同じ年に起こったのですから、災難としか言いようがない出来事でした。

天井が抜けるほどの水漏れ被害

一つめの事故は約8年前、梅雨の頃のことです。当時、賃貸マンションの1階の部屋に住んでいました。

仕事から帰宅後、寝室の天井からポツポツと水滴が落ちてくるのに気が付きました。空腹だった筆者は、とりあえず洗面器やバケツを置いて部屋を後にし、先に夕飯を済ませてから、様子を見ようと部屋の電気をつけて驚きました。今にも抜けて落ちそうなほど、天井が水気を含んで、膨張していたのです。

原因は上の階の部屋。洗濯機に取り付けられていた水道の蛇口が外れたことによる水漏れでした。住人は外出中で、洗濯機のホースと蛇口をつないでいた栓が外れ、開いたままの水道から、ひっきりなしに水が出続けていたのです。

季節が梅雨だったこともあって、水気を含んだ部屋は一層湿っぽくなり、とても住める状態ではありません。修復工事が終わるまでは寝室で寝ることもできないし、本来であれば、その間はホテル住まいでも……と考えるのですが、他に寝ることのできる部屋があったので、具合の悪い寝室の隣で3週間を過ごしました。

もちろん、ホテル住まいとなれば、その経費は保険会社、もしくは上の住人に対して請求するつもりでした。

賃貸契約者が加入・請求するべき対象は「家財」

ではここで、保険金請求をした筆者に保険会社から支払われた給付金は幾らだったか、考えてみてください。

まず、住んでいたのは「賃貸物件」です。天井や床、建物に対する保険は、オーナーが加入するものです。たとえ「保険代」として、賃貸契約時に保険料を管理会社に支払ったからといって、住民が保険契約者になるわけではありません。あくまでも「所有者」であるオーナーが「保険契約者」となるのです。

住民(賃貸契約者)が保険契約者となって、保険会社に請求できる対象は「家財」です。家財保険は、対象が「家財=住民の所有物」なので、契約者および請求者は、このケースでは「筆者」になります。

火災や爆発、給排水設備の事故による水漏れが、賃貸住宅に損害を与えた場合、その部屋の居住者には、部屋のオーナーに対する法律上の損害賠償責任が発生します。これを「借家人賠償(しゃっかにんばいしょう)責任」といいますが、今回の事故では、筆者には過失がありません。筆者にはオーナーに「借家人賠償」する必要がなく、単純に、自らの所有物および筆者が被った被害について、請求をすればよいだけでした。

保険会社の親切を期待してはいけない

その頃、すでに保険会社に勤めていた筆者は、デジカメで寝室やクローゼットの中の家財を撮れるだけ撮りました。

汚れた家財がありましたら、写真を撮っておいてくださいね――

などといった親切なアドバイスを、加入している保険会社の担当者がしてくれることを期待してはいけません。全て自分自身で証拠を押さえておく必要があります。

ちなみに、家財1点につき30万円を超えるものは、契約時に個々に申告記載しておく必要があります。当時、筆者の家には今はなき高級ブランドバッグがたくさんありました。

そして、家財の汚れや損壊の他に、事故発生当初はあまり感じられなかった体の不調が日に日に強くなるという、想定外の不幸もありました。

理由として考えられたのはこの2点。

1.上の住人が謝りに来なかったこと
2.湿気、天井裏の成分、工事の影響いずれかによる想像以上の不快感

一つめは、一見ささいなことかもしれませんが、事故当事者からすれば精神的な被害が大きい部分です。

二つめに関しては予想以上のダメージがありました。どうしようもない不快感が1カ月近く続き、保険金請求をする頃には、請求書を書く筆者の筆圧で紙が破れてしまうほどに、心身のコントロールが効かなくなっていました。

強気の「請求」と誠実な「給付金額」

後日、保険会社から届いた「給付金お支払通知書」には、支払合計額80万円の文字が。

実際に請求した額はそれ以上の120万円程でしたが、家財の損失額だけで見れば、十二分といえる金額でした。では、残りの請求は何だったかというと、「精神的苦痛による賠償請求」です。事故が起こらなければ感じることのなかった「不快感」に対しての請求でした。

自宅は、本来なら安らぎが得られるはずの場所です。それが、工事のために毎夜人が出入りする異常事態と異常な湿気。これらによる落ち着かない生活が続いたことへのストレスを、保険会社はある程度はくんでくれたようです。

この保障は、上の住人が加入していた保険の「個人賠償責任特約」から支払われたものでしょう。「家財の汚損」は筆者自身の保険で支払われ、「精神的苦痛の賠償請求」は上の住人の保険から支払われるのが通常です。

というのも、筆者と上の住人は、ともに賃貸契約で同じ管理会社の仲介保険会社に加入していたことから、明細書には「これは誰の保険から下りた」などの記載がなかったのです。

もし、上の住人が無保険の状態であったら、「精神的苦痛」の被害については、上の住人に直接請求をしなければならなかったでしょう。保険は、お互いがお互いを守るためのものなんだと感じられた事故でした。

さて、冒頭でお話しした火災保険にお世話になった事故、その二つめについては、また別の機会にお話しするとしましょう。読者のみなさん、くれぐれも、洗濯機の水道の元栓は、日ごろから必ず閉めておくようにしてくださいね。

佐々木 愛子
ファイナンシャルプランナー(AFP)、証券外務員二種、相続診断士。国内外の保険会社で8年以上営業を経験。リーマンショック後の超低金利時代に、リテール営業を中心に500世帯以上と契約を結ぶ。FPとして独立し、販売から相談業務へ移行。10代のうちから金融、経済について学ぶことの大切さを訴え活動中。FP Cafe登録FP。

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