記事提供:スゴいい保育

保育のニュースがもっと身近に。今さら聞けない、保育制度にまつわる素朴なQ&Aを、わかりやすく解説します。今回のほいQは、最近ニュースでよく目にする「企業主導型保育事業」について。

企業主導型保育って、なに?

企業主導型保育を一言で表すなら、「会社がつくる保育園」です。カテゴリで言うと、“認可外保育施設”に位置づけられる保育園。

「企業主導型保育」は、企業のニーズに応じた、保育所の柔軟な設置・運営を助成する制度で、平成28年度から始まったばかりの新しい事業です。認可外保育施設ですが、国から、保育所の運営費・整備費の助成金が出ます。

ポイントは下記の4つ。

1. 自治体を通さないでも補助金が出る
2. 従業員の多様な働き方に対応できる
3. 複数の企業の共同設置や地域の子どもの受け入れもOK
4. 利用者と施設の直接契約

1つずつ詳しく見ていきましょう。

自治体を通さないでも補助金が出る

認可保育所を新しくつくる際に、ボトルネックの一つとされてきたのが、自治体(市区町村)の消極的な姿勢です。本来であれば、基準を満たしてさえいれば、自治体は認可を拒むことはできません。

しかし、初期費用の自治体上乗せ部分の拠出を絞ったりすることで、実質的に新規開園が阻害されている事態が起こっています。

自治体が、将来の少子化、保育所余りを懸念して、新規開園数を過小に見積もっていたり、反対運動等で認可保育所の建設が難航していたりと、事業者が新しく認可保育所を作りたくても、なかなか開園ができないというジレンマがあるのです。

今回の「企業主導型保育」はそのプロセスを省略でき、かつ認可保育所なみの助成金が国から出る、ということで、待機児童対策の切り札として、期待が寄せられています。

従業員の多様な働き方に対応できる

企業によって、従業員の働き方は様々で、地域の認可保育所ではカバーしきれない部分が多くあります。待機児童が多い地域であれば、パートタイムだと子どもを預ける先がありませんし、夜間・休日シフトのある働き方の場合、対応できる認可保育所は非常に限られています。

「企業主導型保育」であれば、遅い時間までの延長保育や夜間保育、日祝の休日保育、1日4‐5時間や週2‐3回などの短時間保育など、柔軟に対応できるのが特徴的です。また、病児保育や一時預かりを行う場合は、施設の整備費が加算されます。

複数の企業の共同設置や地域の子どもの受け入れもOK

地域の複数の企業が共同で保育所をつくることができます。

子ども・子育て支援新制度の中の「事業所内保育事業」は、地域枠の受け入れ枠が義務として決まっていて、オフィス街など設置場所によっては、地域枠の子どもの利用が期待できない、といった部分がありましたが、この「企業主導型保育」は、任意で他の企業や地域のお子さんを受け入れることもOKと、地域の実情に応じて、かなり柔軟な運営ができるようになっています。

下記はモデル例です。

企業は保育所を設置後、自分で運営しても良いですし、実際の運営を別の法人へ委託することも可能です。

利用者と施設の直接契約

利用者は、施設の設置者と直接契約をします。認可保育所は、利用にあたって自治体に「保育の必要性」を認定してもらう必要があり、自治体が「保育の必要性」の度合いによって入園の可否を決めます。

待機児童の多い都市部では、”保育の必要性が低い”と判断された場合、認可保育所の利用は難しくなっています。しかし、「企業主導型保育」の場合、就労要件などを満たせば、自治体の認定いらずで契約ができ、さらには認可保育所並の保育料で利用することができます。

企業主導型保育所、出足は好調 まず3887人分助成(朝日新聞 2016.9.7)
企業主導型保育事業ポータルサイト(児童育成協会)ホームページ

今までの「事業所内保育所」とは何が違うの?

子ども子育て支援新制度の「地域型保育事業」の中に、「事業者所内保育事業」という種類の保育類型があります。

「企業主導型保育事業」は、この「事業所内保育事業」と何が違うのでしょうか。

東京都のホームページを見てみましょう。

「事業所内保育施設の運営は、区市町村の認可を受けて実施する方法(平成27年4月以降)と、認可外保育施設として運営する方法があります。」との記載があります。

子ども子育て支援新制度の「事業所内保育事業」とは、前者の区市町村の認可を受けて実施する方法です。制度上、特に都市部で待機児童数の多い0~2歳児が対象で、定員4分の1を地域(地元区市町村)に開放することが義務付けられています。

「企業主導型保育事業」と「事業所内保育事業」の大きな違いは、「認可事業かどうか」。「事業所内保育事業」は区市町村が認可する保育施設のため、上で述べたような「保育の必要性」による利用調整や、自治体の指導監査など、行政のチェック下に置かれます。

また、0-2歳児が対象、地域枠の義務付けなどの決まりがありますが、「企業主導型保育事業」は、無認可保育施設なので、都道府県に届け出れば開設できます。職員の配置基準や面積などは、大きく変わりません。

参考:内閣府ホームページ

企業主導型保育のメリットは、待機児童問題にスピーディーに対応でき、保護者の多様な働き方に柔軟に合わせられる点ですが、デメリットとしては、認可事業ではないため、行政の監視機能が働かず、質の担保が各事業者に委ねられている点があげられるでしょう。

また、ほいQ5回「もしも、あなたの保育園で事故が起こったら。」で取り上げたように、公的保険にも加入できません。

最近開所した「とちょう保育園」って?

先日開所式が大きく取り上げられた、東京都庁内の「とちょう保育園」。ここは、どのカテゴリの保育園でしょうか?「認可保育所」?「認証保育所」?「事業所内保育事業」?「企業主導型保育」?

「とちょう保育園」開所に小池知事「シンボル事業」

東京都のホームページをみると、「地域型保育事業(事業所内保育事業)・新宿区認可」とありますね。

地域型保育事業は0‐2歳児対象。「とちょう保育園」は、0~2歳児 合計48名が定員となっています。地域枠 24名(新宿区民)従業員枠 24名(近隣企業、都職員各2分の1程度)と、地域枠は、東京都が独自に少し多めに設定したようです。

待機児童解消のために、このような様々な取り組みがなされています。しかしながら、新しい制度をつくり、保育所の数を増やすだけでなく、保育士の処遇改善や質の向上といった、根本的な部分を忘れないように、両輪で政策を進めていく必要があると言えるでしょう。

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