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auのCM『三太郎』シリーズで歌った「海の声」が大きな話題となった桐谷健太。俳優として活躍しながらも、数々の音楽番組にも出演し、ついにはアルバム『香音-KANON-』も発売。「海の声」制作裏話から、TOKIO・長瀬智也らとの劇中バンドの話まで、彼の中の音楽の変遷をたどる。

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「俺、南から来てる」、中学時代にあった沖縄との接点

――今年は、俳優としてはもちろん音楽での活躍が目覚ましいです。CMで話題になった「海の声」では三線を演奏されて、映画『TOO YOUNG TO DIE! 若くして死ぬ』では地獄ロックバンド“地獄図”(ヘルズ)のドラマー役、そしてアルバム『香音-KANON-』の発売。そもそも高校時代は軽音楽部だったんですよね? どんな音楽を演奏してたんですか?

桐谷健太 THE BOOMにユニコーン……、洋楽ではオジー・オズボーンとかニルヴァーナ……もういろいろ。基本僕はドラムで、ときどきボーカルでした。

――そのとき、プロになりたいと思ったりは?

桐谷健太
ずっと役者をやりたかったので……。もちろん、「歌もええなぁ」と思ってましたよ。ステージで歌って演奏するってカッコイイ!って。ただ、歌の場合はそもそも……、自然に曲が生まれてきたことがなかったんですよ。

ちゃんと書こうとしたわけじゃないんだけど、生まれてこないってことは、自分は曲を作る才能はないんやろな、って思っていました。もしプロでやってくなら自分で創らないとあかんやろうし、じゃあ音楽は、今のまま、大好きなことでええわと。

――当時、どうしてドラムをやろうと思ったんですか?

桐谷健太
単純に、見ててカッコイイから。しかも叩いたら音が鳴るってなんてシンプルなんや、って(笑)。ギターの場合は、「コード? 難しそやな」と。実際、後に、Fコードでつまづきましたしね(笑)。

まぁでも、モテたいと思ったら、普通ギターにいきますよね。淀川かどっかの河川敷で、ポロ~ン、「歌います」って言って、女の子の前で歌うこともできるやないですか(笑)。ドラムなんて、ドラムセットがないと叩けない。

でもそのシンプルさが好きなんです。三線も、中学校の時に初めて親と一緒に沖縄に行って、空港に降り立って風を感じた瞬間、ぶわーって鳥肌が立った。「懐かしい!」って思ったんです。

「俺、ここからや、南から来てる」って。初めて行った場所であんな感覚になったことが、今でも忘れられへん。そこから沖縄民謡とかも聴くようになって。だから、俺の場合楽器は、何かに生かそうとかそういうことじゃなくて、単純に好きで始めたものばかりですね。

――三線に実際に触れたのは?

桐谷健太
23歳か24歳か……。中学の時「沖縄、サイコー!」と思って以来、ちょいちょい沖縄には行ってました。大阪に帰っても沖縄のことを思い出してたんです。で、あるとき、役者としてデビューしたあとで、撮影で大阪に帰ってオカンと一緒に実家の近くを歩いていたら、三線の音色が聴こえてきて。

バッと見たら、そこに三線屋があったんです。大阪に、三線屋さん。普通ないでしょ?(笑)。そこで初めて三線を買いました。今、音楽番組に出るときに弾いている三線も、その実家の近くの三線屋さんで買ったものです。

「好きでやってたことが仕事につながった。そこが自分らしい」

――ドラムも三線も、シンプルなんだけれど鮮烈な出会いがあって、今に繋がっているんですね。

桐谷健太
そうなんですよ。何かを狙って始めたんじゃなくて、映画の『BECK』でやったラップにしても、ドラムにしても、三線にしても、単純に好きでやってたことが仕事につながった。そこが本当にありがたいし、自分らしいのかな、と思います。

今回、「海の声」がいろんな人に受け入れられたことは、自分の中のちょっとした哲学にもつながったというか。

――哲学?

桐谷健太
今、目の前にあること、今、出会ったものを愛して、遊び心を持ちながらも全力でやれば、いいことにつながっていくねんな、と思いました。ヘンに、「こうしないといけない!」とかより、ただ好きなことをやるっていう、シンプルな動機が大事なんじゃないかと。

――小さい頃から、歌うことも好きだったんですか?

桐谷健太
もともと音楽が好きな家族で、オトンは、シャンソンみたいなのをよく歌っていて、オカンと兄貴はアコギが弾けて、ようみんな歌ってました。兄貴も風呂場で大音量で歌ってて、次の日小学校で、「昨日、お前の兄貴歌ってたな」とか友達に言われて、「はずかしー」みたいな(笑)。でも、自分もよう歌ってましたね。

でも子供の頃は、あんまり歌が上手いとか思ったこともないし、言われたこともない。20代後半になって初めて、いろんな人に「声がいいね」って言われるようになって。「え? ホンマ?」って(笑)。

長瀬智也らと出演した音楽フェスで、クドカンに確認をとり……

――2013年には、主演ドラマの役名でイナズマ戦隊とコラボしてシングル「喜びの歌」をリリースされています。

桐谷健太
あのときは、単純に「CDを出せる」ってことが嬉しかったです。カッコええ楽曲やったし、お世辞は言わない役者仲間たちが「これが音楽だと思った」なんて言って褒めてくれたり、いろんな人に紹介してくれたり。

でも不思議なのが、音楽の作品は、楽器の練習をずーっとやっても全然しんどくならない。楽しくてしゃあないんですね。そして、この時初めてボイトレをやらしてもらったんですけど、出ない音が出るようになったり、意外と喉強いとか、発見もありました。

――音楽系の作品ではしんどさを感じないということは、1時間半かかるという地獄図のメイクも……? 5月に行われたフェス『METROCK 2016』では、朝からフルメイクでのパフォーマンスが印象的でした。

桐谷健太
落とすのにも40分かかるんです(笑)。でも音楽をやっているときって、体力は使うけれど精神的にどんどん解放されていくから、疲れない。寝たらいいだけ、寝たら回復。『TOO YOUNG~』の撮影もメチャメチャ健康的でした。

めっちゃ体使って、寝て、また体動かして。心の風通しが良かったから。

――『METROCK 2016』では、間奏のときにドラムの桐谷さんがステージの前にぐいぐい出てきて、叩いていないのにドラム音は鳴っているというコント風の演出が、会場でものすごくウケていました。ロックフェスで、あのパフォーマンスは勇気があるな、と。

桐谷健太
予想以上にウケましたね(笑)。僕は後ろなんで、事前に「前に出ていいですよね?」って確認をしたら、宮藤(官九郎)監督も「いいよ」と言ってくださって(笑)。エアードラムの出来上がりですね。

やっぱり、音を楽しむと書いて“音楽”だから、俺は常に全力で楽しんでやってます!

「三線の先生からは“弟子にしたい”とまで言ってもらえました」

――「海の声」のレコーディングでは、三線をご自分で弾きたいと言ったそうですが。

桐谷健太
やっぱり、自分で弾かないと説得力がないなと思って。レコーディングのときは、プロの先生にも来ていただいていたんですけど、その先生からは「弟子にしたい」とまで言ってもらえました。

――今年を代表する歌になりました。

桐谷健太
いろんな奇跡が重なったんです。歌詞は、CMプランナーの人が書いたものだし、まさかこんなに話題になるとは誰も思っていなかった。曲をもらったのも、CM用のレコーディングの3日前。

先に歌を録って、そのあとで三線もレコーディングしたんですけど、ずっと触ってなかったから、工工四(くんくんしー)っていう楽譜と睨めっこしながら、必死で弾いたんです(苦笑)。最初にこの曲を聴いたときに、「誰かを、何かを、想う歌だ」と直感したんですね。家族でも恋人でも自然でもいい。

何か大切なものを思って歌えばいいやん、って想いだけで歌いました。で、CMが流れて、あれよあれよという間にYouTubeの再生回数がすごいぞ、と……。三線も歌も、好きでやってたことがCMになって、大勢の人に受け入れられて。役者人生でも、浦島太郎の役をやるなんてまさか思っていなかった(笑)。

目の前のことを愛して全力でやっていれば、面白い、予想外のことにつながっていくねんな、って思たんです。浜辺で歌うののも、浦ちゃんやから成立することやし。全部、狙わなかったのがええねんなって思う。狙ってうまくいっても予想通りで感動はないし、うまくいかなかったら落ち込むでしょ?

――さっきの哲学が(笑)。

桐谷健太
好きなことを、楽しみながら、一生懸命やる。そこで連れて来てくれるものがあれば「ありがとう」やし。それがシンプルで、俺らしくてええな、と。

「音楽が好きで、全力で音を楽しんでる限り、引け目なんて全っ然感じない」

――アルバムを作るにあたって、『香音-KANON-』では作詞を手がけています。

桐谷健太
初めてアルバムを出させてもらうのに、詞も曲も全部人に任せて「歌います」だけやったら、説得力がないなと思ったんです。それじゃあ役者の延長線だな、と。アーティストの醍醐味って、0を1にすることだと思う。

今回は詞を書かせてもらって、曲も高校の同級生と一緒に切磋琢磨しながら作れた。そこが、大切な、自分の中での納得感になりました。

――歌詞はどうやって書いたんですか?

桐谷健太
曲先やったんですけど、最初、その高校の同級生にすごく感覚的なオーダーを出しました。「木漏れ日のな、葉っぱが揺れて光が入ってくる、夕暮れの帰り道のあの感じ」みたいな(笑)。でも、出来たものを聴いて「ちゃうねん」とか言ったりもした。

「このアーティストのこんな曲、みたいなイメージは?」って聞かれたりもしたけど、俺はそれと似たのが出てきても、いいと思うかわからない。「香音」は直感的にいいと思ったから、「これに歌詞をのっけてく!」って決めて。

世界観を崩さへんような詞が生まれるまで待ちました。きっと生まれてくれる、って自信はありました。

――ところで、先日は、『SMAP×SMAP』(フジテレビ系)の特別編で、木村拓哉さんとキャンプに行ったり、バラエティでの活躍も目立ちます。俳優の方は、バラエティが苦手な方も多いですが。桐谷さんは違いますね。

桐谷健太
バラエティは、すごくお声がかかります(笑)。

――弟にも兄貴にもなれるようなところがあって、誰とでも馴染むところも個性の一つなんでしょうか。

桐谷健太
どうなんでしょうね、でもたとえば、中学校って、不良グループ、面白いヤツらの集まり、オタクなメンバーのグループとかに分かれるじゃないですか。普通はグループ同士は全然行き来がないけど、俺は全部のグループに行き来してました(笑)。

「◯◯に所属してるからこうあるべき」みたいな決めつけを、もともと持ってないんですよ。最近、取材で「役者が本業ということで、音楽番組に出ることに引け目を感じたりはしませんか?」と聞かれることがあるんですけど、そういう発想は全然ないですね。

音楽が好きで、全力で音を楽しんでる限り、引け目なんて感じない。「好きじゃないのに歌わされてるんです」とかなら失礼だと思うけど(笑)。音楽は楽しんでいる以上、誰だってアーティストです!

(写真/宮坂浩見 文/菊地陽子)

【プロフィール】

キリタニ ケンタ。1980年2月4日生まれ、大阪府出身。

ドラマ『ROOKIES』、『JIN-仁-』(ともにTBS系)、映画『クローズZERO』、『TOO YOUNG TO DIE! 若くして死ぬ』など出演作多数。auの人気CM『三太郎シリーズ』で披露した「海の声」が話題となり、多くの配信サイトで1位を獲得。

9月28日にアルバム『香音-KANON-』を発売。10月17日スタートのドラマ『カインとアベル』(フジテレビ系)に出演する。

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