ちょっと男子ー!

もはや風物詩にもなりつつある怒号。不真面目な男子が糾弾されがちな季節がやってきた。「ちょっと男子ー!」は合唱コンクールの練習風景として全国共通で持たれるイメージのようだが「ウチのクラスはみんな協力的だったよ」という人も少なくないだろう。合唱の楽しさ、個々のパートがハーモニーとして調和していく悦びは、他に代えがたいものがあった。

あの時、あの曲。

#18 「どれもこれも懐かしすぎる…実は90年代に生まれていた有名な合唱曲5選」

授業の休み時間、自然発生的に女子数人がソプラノとアルトに分かれてさえずる。その声その姿は歌うのが楽しくて仕方がない」といった様子で、あの時期にしかない美しさをそこに湛えていた。

多感な思春期に多くの人が経験した合唱。さまざまな合唱曲が各世代に受け継がれているが、の代表格と呼べる曲の中に90年代生まれのものが多く存在する。一度は聞いたことがあるだろう“あの”名曲を懐かしんでいこう。

1.「旅立ちの日に」

出典 http://www.amazon.co.jp

こちらより『旅立ちの日に』が一部視聴できます)

“白い光の中に 山なみは萌えて 遥かな空の果てまでも 君は飛び立つ”

出典小嶋登・坂本浩美『旅立ちの日に』

80年代後半、埼玉県秩父市立影森中学校の校長だった小嶋登校長は荒れていた学校に頭を悩ませていた。そこで小嶋はその校風を改善しようと合唱の機会を増やす生徒も最初は抵抗していたが、音楽科教諭の坂本浩美と共に粘り強く努力を続け、歌う楽しさを知ったことで学校は徐々に明るくなっていった。

「歌声の響く学校」を目指して3年目の1991年
2月、坂本はその集大成として世界にひとつしかない記念を残したいという思いから、作詞を校長の小嶋に依頼する。その時は「私にはそんなセンスはないから」と断られるも、翌日、坂本のデスクには書き上げられた詞が置いてあった。早速ひとり授業の空き時間を使って音楽室にこもり、作曲に取り組むと、湧き出るように旋律が思い浮かび、実際の楽曲制作に要した時間はたったの15分程度だった。

当初は3年生を送る会のサプライズで教員が歌うために制作したこの曲は、翌年から生徒が歌い継ぐようになり、次第にまわりの小中学校でも歌われるようになる。そして当時、中学校で音楽教論を務めていた作曲家の松井孝夫がこの曲を知り、合唱への編曲を行った。これが雑誌『教育音楽』に取り上げられたことで、知名度は全国区となり、1998年頃までに各地で歌われるようになった。

時は流れて2007年。SMAPがNTT東日本フレッツ光のCMで歌ったことをきっかけに、それまで卒業式の定番曲であった「仰げば尊し」や「巣立ちの歌」、「贈る言葉」などに代わり、全国で最も広く歌われる卒業式の歌となった。音楽の可能性と学校教育の在り方の両方を背景に持ったドラマのような楽曲、今後も永く定番であり続けるだろう。

2.「時の旅人」

“めぐるめぐる風 めぐる想いにのって なつかしいあの日に 会いに行こう めぐるめぐる風 めぐる想いにのって 僕らは時の旅人”

出典深田じゅん子・橋本祥路『時の旅人』

こちらより『時の旅人』が一部視聴できます)

時の旅人』は1990年に発表された楽曲で、深田じゅんこ作詞、橋本祥路作曲である。中学の合唱ではおなじみの「夢の世界を」やヨハン・パッヘルベルの「カノン」をモチーフにして作られた「遠い日の歌」と並んで橋本祥路の代表作の一つとされている。

曲の展開がドラマチックであり、歌うほどに楽しさが湧いてくる楽曲。ぐっと溜めて解放するような緩急が随所に散りばめられており、技術的に音を合わせていく緊張感も楽しさを感じる理由のひとつだと言える。また、過去を懐かしむノスタルジックな情景を歌う前半部分と、現在から未来に希望をもって進もうとする後半の爽快さの対比が心地よい。

隣のクラスが歌っているのを聞いていつの間にか覚えてしまった
という人も多いのではないだろうか。

3.「TOMORROW」

“Tomorrow Tomorrow また明日が すばらしい夢と素敵なメロディー 運んできてくれるだろう”

出典杉本竜一『Tomorrow』

サビ部分のTomorrow~♪を折り重ねるリフレインが印象的な希望溢れる有名曲。映画・舞台音楽も手掛ける杉本竜一氏による作詞作曲だ。J-POP的構造を持つキャッチーな曲展開とメロディーでテンポも一定なため歌いやすく、中学1年生が歌うことの多い曲である。

NHK「生きもの地球紀行」のエンディング曲として、1992年に発表された『Tomorrow』。原曲の歌唱は立花優。1993年発売のアルバム『Tomorrow〜NHK「生きもの地球紀行」サウンドトラック』に収録された。

合唱曲の歌詞は歴史の1ページを切り取ったものや、自然や生命などの情景を描いたものなど大雑把な分類ができる。『Tomorrow』の「困難を乗り越えて未来へ」のような型はスタンダードということもあってか、混声のないヴァージョンを小学生から歌わせる学校も多い。未来ある子供たちがまっすぐに歌う姿は歌詞に妙な説得力を生み出し、親世代はそこに強く心震わされる。

4.「BELIEVE」

出典 http://www.amazon.co.jp

こちらより『BELIEVE』が一部視聴できます)

“たとえば君が傷ついて くじけそうになった時は 必ずぼくがそばにいて 支えてあげるよその肩を”

出典杉本竜一『BELIEVE』

『Tomorrow』に続き、イントロのピアノを聴けばすぐに思い出せる、杉本竜一作詞作曲の『BELIEVE』。1998年8月12日発売のアルバム「BELIEVE〜NHK生きもの地球紀行 サウンドトラックIII」にオリジナルが収録されている。

こちらも「平熱のAメロ→しゃがみのBメロ→解放のサビ」のように気持ちの良いシンプルな展開で進み、最後に迎えるサビの転調が感動をより強めている。

この曲は幼稚園の卒園式でも歌われることがあり、テレビドラマでは「Dr.コトー診療所・2004」「斉藤さん」「Woman」「Oh,My Dad!!」の劇中で歌われるなど、定番曲として浸透していることがわかる。

5.「COSMOS」

“光の声が天(そら)高くきこえる 君も星だよ みんなみんな”

出典アクアマリン『COSMOS』

こちらより『COSMOS』が一部視聴できます)

ボーカリストSachikoとキーボーディストミマスによる音楽ユニット「アクアマリン」のオリジナル楽曲。

1998年8月、長野県八ヶ岳の麓で開催された原村星祭りというイベントで初披露がされ、演奏後に販売したデモテープを東京の小学校の先生が購入。その先生の働きかけにより合唱版のアレンジが生まれた、という変わった経緯がある曲だ。

「COSMOS」は古代ギリシアの言葉で「宇宙」を意味する。作詞作曲のミマスは、思春期に訪れる「自分の存在の意味や価値」について問うた答えを、星空を見上げ見つけていたという。宇宙という悠久の時間をかけて奇跡的に成立する「すべて」と自分を見つめる歌『COSMOS』はまさに、中高生が歌うことに大きな意味があるのだ。

ヒットチャートを賑わせたポップスを懐かしむのと、あのとき歌った合唱曲を懐かしむのとでは異なった心の動きがある。「あの曲に決心する勇気をもらった」、「あの曲に失恋の傷を慰めてもらった」とは違って、歌っていた風景や練習時のエピソードなどの合唱そのものを思い出して懐かしむ。それは『旅立ちの日に』で紹介した話に通じる「歌うことの楽しさ」を身をもって実感した原風景がどれほど心に刻まれているかを示している。

これらの曲は今やカラオケでは「合唱曲」カテゴリーでまとめられている。あの頃の思い出を幼馴染と、同窓会で久々に会った面々と語り合って一緒に歌ってみればきっと、素敵な時間を過ごせることだろう。

この記事を書いたユーザー

Spotlight編集部 なーろ このユーザーの他の記事を見る

分野を問わずなんでも飛びつく雑食な人。うんちくを収集しがちで、会話の中でナチュラルに差し込めるよう、大縄跳びが苦手な人みたいにタイミングをうかがっています。

得意ジャンル
  • 音楽
  • 動物
  • カルチャー

権利侵害申告はこちら

Spotlightのライターなら1記事最大3000円もらえる!日本最大級メディアでライターデビューのチャンス