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海上保安庁といえば、佐藤秀峰氏の漫画『海猿』で海難救助のスペシャリストとしての印象が強いのだが、他にも海上の警備や海図の作成に船の交通整理などで活躍する、いわば海の警察である。

それらの仕事がとてもハードであることは容易に想像できるが、その体力を支える日々の食事はどのようなものだろう。機能性を優先し、片手で食べられるゼリー飲料やクッキーバーのような携行食を想像していないだろうか。小生は今までそんなイメージを持っていた。

そんな折に見つけた1冊が『初公開!海保レシピ 海上保安庁のおいしい船飯』(公益財団海上保安協会:監修、海上保安庁;協力/扶桑社)だ。ローストポーク、ビーフストロガノフ、骨付き鶏のスープカレー。

このメニューだけを見ればレストランの食事かと思うだろうが、これこそが巡視船内で海上保安官たちに提供されている「船飯」なのだ。本書は各地の「船飯」をページごとに写真入りのレシピで紹介している料理本である。

まず第1章では、宮城県塩釜港で巡視船「くりこま」の潜水訓練と調理に密着取材している。潜水士たちが船から飛び込み、ロープ1本で甲板に戻る訓練を繰り返す。写真で見るだけでも、その過酷さが伝わる。

その体力を支える今回の昼食メニューは、3日前から仕込まれた仙台名物牛タンシチュー。決してレストランに引けを取らない本格的な出来栄えに驚かされるばかりだ。もっとも、海上保安官たちはのんびりと味わってはいられない。

いつ何が起きても対応できるよう昼食は10分、夕食も15分で済ませるのだ。やはり大変な仕事である。その船内での調理の中心となるのが「ライスボイラー」という万能釜。興味深いことに火を使わず蒸気で加熱し、炒め物に煮物、炊飯とこれ一台でこなす優れものだ。

勿論、先ほどの牛タンシチューでも大活躍。船の揺れに備えしっかり床に固定され、時と場合に応じてハンドルで傾けられるようになっている。かといって揺れる船内で全てが固定されているわけでもなく、海の荒れる日は、やはり包丁などに気を遣うそうだ。

それでもベテランになると、前後左右に揺れる中でも深鍋で揚げ物を作るというのだからさすがである。船内で作ることの大変さに思いを馳せつつ、第2章以降のレシピ集を読み進めると、その中で意外にシンプルなメニューを見つけた。

それが「なめたけチャーハン」だ。このレシピを提供した海上保安官いわく「決まった予算をやりくりし、満足感のある料理を作ることが求められます。嫁さんの料理もよく参考にしています」とのこと。

日々の献立は計画的で、長いときには1か月分の食材を備蓄し、それを無駄なくやりくりするには、こういったお手軽メニューも必要なのだ。これなら小生でも…と思い、さっそく作ってみた。

まず3センチ幅に切ったベーコンを炒めておき、いったん取り出す。次いでフライパンに溶き卵を流し入れ、半熟になったら御飯を入れて混ぜながら炒める。そして、瓶詰のなめたけと先ほどのベーコンを加えてひと混ぜし、塩、コショウ、うま味調味料で味を調えれば出来上がり。

簡単だと侮ってはいけない。食べてみると、なるほどこれは体力勝負な仕事にもぴったりなのだ。ベーコンとなめたけの旨味が御飯によく絡み食欲を誘うし、当然腹持ちも良い。アレンジも利くので、是非とも自宅で試してほしい。

「船飯」は、過酷な任務に臨む海上保安官の胃と心を満たす重要な役割を担っている。その任に当たるのは主計科職員たちだ。船内では調理以外にも庶務や経理、看護なども行なうのだが、それはあくまで船内での役割。

いざ事件発生となれば、潜水士や捜査官としての任務もあるのだ。たとえ 調理中でも、出動命令があれば即座に対応しなければならない。それは他の科でも同様だ。普段は海を舞台に活躍する彼らを間近に感じることは少ないだろう。

だが、小生は本書を読んでから海上保安官に興味津々である。交流イベントなどには、是非とも参加したいところ。そしてそこに「船飯」があればと切に願う次第である。牛タンシチュー食いたい!

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