出典『なぜ、あの人は自分のことしか考えられないのか 「ナルシシスト」の病』(加藤 諦三/三笠書房)

今、「自分のことしか考えられない人」が増えている。一見いい人なのに、自分にしか興味がない人。不幸自慢ばかりする人。些細なことですぐに不機嫌になる人…。このような、端からみれば付き合うのが面倒な特徴を持つ人たちは、もしかしたら「ナルシシスト」という病を抱えているのかもしれない。

そう分析するのは、心理学者で早稲田大学名誉教授の加藤諦三氏。彼の著書『なぜ、あの人は自分のことしか考えられないのか 「ナルシシスト」の病』(三笠書房)では、「ナルシシスト」な人の特徴と、彼らへの対策法が述べられている。

加藤氏によれば、ナルシシストは、一見、自信過剰で強気な人間のように見えるが、本当はネガティブな自己イメージに囚われ、苦しんでいるのだという。彼らは、意識的に「私は魅力的だ」と思わなくては生きていけない。とにかく劣等感が深刻。

心の底では、「誰も自分を相手にしてくれないかもしれない」とビクビクと怯えているのだ。加藤氏は、ハーヴァード大学のパーソナリティー論の教科書『パーソナリティー Personality』を引いて、ナルシシストには、以下の8つの特徴があるとしている。

1. 人からどう見られているか、人にどんな印象を与えるかいつも考えている
2. 人から冷笑されたり、軽く批判されたりしても簡単に傷つく
3. 自分のことばかり話す
4. 注目の的になることがとても好きだ
5. 自分は特別だと思っている
6. 他人がいろいろなことをしてくれることを期待する
7. 他人の幸福をうらやむ
8. 自分が値すると思っているものを得るまでは納得しない

いろいろな青少年の犯罪が起こるたびに、「最近の青少年は自分の衝動を抑える力がなくなった」と言われるが、加藤氏によれば、それは、むしろ本質的には「最近の青少年は極度のナルシシストである」ということだという。

本当は自分自身に全く自信のないナルシシストは、他人からの賞讃や感謝の言葉だけを心の拠りどころとしている。とにかく周りからチヤホヤされ、特別扱いされて大切にされていたい。

だから、少しでも批判的な言葉を浴びせかけられただけで傷つき、機嫌を損ねてしまう。ちょっと悪口を言われたり、注意されただけでカッとなって殴ってしまったり、ナイフで刺してしまったりするのは、ナルシシズムが原因。

かつて、少年犯罪は自己評価の低さと攻撃性が関連づけられて議論されてきたが、近年は、アメリカなどでは、それに変わってナルシシズムが注目を集めるようになってきた。

また、ナルシシズムは犯罪を巻き起こすだけでなく、家庭生活においても問題となる。ある調査では、ニューヨークの家庭裁判所の数千の離婚訴訟を調べると、夫が家を出る主な原因は「妻が口うるさいから」。

おそらく事実は、普通の家の妻とそれほど違いがないケースも多いだろうが、夫がナルシシストである場合は、妻からの些細な言動に簡単に機嫌を損ねてしまう。とにかく褒められたいと思っているのにも関わらず、妻からの「こうしてほしい」という要望は不愉快だ。

ナルシシストは自分の優位さをつねに確認していなければいられないのにも関わらず、妻の言葉はその立場を突き崩してしまうのだろう。

その他にも、引きこもりの問題も、離職率の問題も、すべてはナルシシズムに起因する問題だと加藤氏はいう。では、ナルシシストと出会った時にどう接すればいいのだろうか。それは、相手の感情に寄り添うことが大切だ。

特に何かを達成した時に、褒めてあげると良い。達成の喜びと褒められることの喜びが一緒になり、相手を前向きにさせるだろう。本来ならば、両親がその役割を担うべきなのだが…。

そう接していくなかで、ナルシシストは孤独感から少しずつ解放されていくかもしれない。では、自分がナルシシストと自覚する人はどうやってそれを克服すれば良いのだろうか。そのためには、「自分は劣等感が強いだけなのだ」という自己理解が欠かせない。

人は、自分を信じることができた時に、はじめて人は、人の評価に傷つかなくなる。人から悪口を言われることで傷つかなくなり、悪口をいわれることが怖くなくなる。まずは、自分の悩みをひたすら紙に書き出すなどして、悩みを吐き出して、「現実の自分」を受け入れることが大切だ。

ナルシシストの人は極めて臆病だ。劣等感を抱えて、どうして良いのか分からなくなっているだけなのだ。そう理解してあげるだけでも、相手への接し方を少し変えることができそうだ。

この記事で紹介した書籍

権利侵害申告はこちら

Spotlightのライターなら1記事最大3000円もらえる!日本最大級メディアでライターデビューのチャンス