今年の「ボジョレー・ヌーヴォー」の解禁は、日本時間で11月17日午前0時。

と言ったところで、すでにブームは過ぎ去り、まったくもって盛り上がりに欠ける。今年も百貨店やワインショップに、少人数のワイン愛好家が集まり、淋しいまでの静けさの中で、新酒の誕生を祝うのだろう。

あれほど騒がれたブームが、なぜここまで廃れてしまったのか。

ワインの魅力がなくなったのだろうか。ワインの世界は奥深く、その味わいに魅了された人間は、生涯ワインを愛し続けるものだと思う。

ならば、「ボジョレー・ヌーヴォー」が騒がれなくなったのはなぜか。

理由のひとつは、「ボジョレー・ヌーヴォー」がワイン本来の味ではないからである。

その年できた新酒の“出来”をテイスティングするとともに、“蔵出し”のお祝いをすることが目的である。本物のワインは、ここから熟成させることで完成するので、まだ未熟な味だと言える。私も何度か飲んでいるが、飲みやすいだけで、美味しいとは言えない。

本来なら、ワイナリーで静かに祝っていたものである。冷蔵設備のない時代、人びとは近くの醸造所へ行き、ワインを量り売りで買っていた。そして、新酒の頃になると、周辺の限られた地域の人たちだけが、その味を楽しんでいたのである。美味しさを味わうというより、新酒を静かに祝う意味合いが強かった。

だが、冷蔵や輸送技術の発達により、もっと広めようという動きが醸造家によって始まった。そこから世界へ。そして、日本に。世界にも“ヌーボー“の愛好家はいるが、ワインの世界にどっぷりと浸かった人たちが、あくまで新酒を祝うために飲んでいる。日本のように、イベントとして“ヌーボー”だけで盛り上がることは無い。

日本では異常なまでに盛り上がってしまったのである。「ワイン=お洒落」にかぶれた人たちが、味など関係なく群がった結果、「ボジョレー・ヌーヴォー」が“有り難い存在”と化したのである。

だが、やがて人びとは気づく。「それほどでもないのかも……」と。結局は、商社や百貨店が仕掛けたブームに過ぎなかったのである。

また、ブームを作り出すために、人びとが熱くなるようなアピールもしている。解禁前に、その年の「ボジョレー・ヌーヴォー」の評価をキャッチコピーとして発表するのである。

「10年に1度の出来で、芳醇な味わい」などである。これを聞いて、人びとの期待はますます高まり、解禁日に向けてそわそわし始める。実に上手い演出である。

ところが、毎年発表されるキャッチコピーに、疑問を感じる人が出てきた。毎年代わり映えせず、「10年に1度」という言葉が度々登場したりしているのである。これでは、嘘臭いと感じても仕方がない。信頼できる評価だとは思えない。

これまでのキャッチコピーを見て欲しい。

1995年:ここ数年で一番出来が良い。
1996年:10年に1度の逸品。
1997年:1976年以来の品質。
1998年:10年に1度の当たり年。
1999年:品質は昨年より良い。
2000年:出来は上々で申し分の無い仕上がり。
2001年:ここ10年で最高。
2002年:過去10年で最高と言われた01年を上回る出来栄え。
2003年:100年に1度の出来、近年にない良い出来。
2004年:香りが強く中々の出来栄え。
2005年:ここ数年で最高。
2006年:昨年同様良い出来栄え。
2007年:柔らかく果実味が豊かで上質な味わい。
2008年:豊かな果実味と程よい酸味が調和した味。
2009年:50年に1度の出来栄え。
2010年:1950年以降最高の出来と言われた2009年と同等の出来。
2011年:2009年より果実味に富んだリッチなワイン。近年の当たり年である2009年に匹敵する出来。
2012年:史上最悪の不作だが品質は良く健全。糖度と酸度のバランスが良く軽やか。
2013年:ブドウの収穫量は少ないが、みずみずしさが感じられる素晴らしい品質。
2014年:近年の当たり年である2009年と肩を並べるクォリティ。
2015年:記憶に残る素晴らしい出来栄え。

これだけ似たような言葉が並ぶと、誰も信用しなくなるのではないか。あまりにも“下手”なキャッチコピーである。「化けの皮がはがれた」「ボロが出た」と言ったところか。

ブームの終焉は、こんなところにも原因があるのではないかと思う。

ちなみに、2016年のキャッチコピーは、本コラム執筆時点では発表されていない。「フランスの食品振興会」や「ボジョレー・ワイン委員会」のコメントをもとに作られるようなので、私の予想を記しておく。

『天候に恵まれ、熟成度の高いブドウとなった。味わい深く、バランスも良い』

はてさて?

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佐藤きよあき このユーザーの他の記事を見る

1961年兵庫県生まれ。神戸学院大学法学部中退。1981年、広告デザイン会社にコピーライターとして勤務。93年、プランナー・コピーライターとして、フリーランスに。仕事を継続したまま、96年、木のおもちゃ制作を開始。ネット販売に着手。その後、「販売の現場」を知るために、5年間スーパーに勤務。これにより、「メーカー」「販売現場」「広告・販促」のすべてを経験。この経験を生かし、2003年より、中小企業・個人商店向けメールマガジン「繁盛戦略企画塾・『心のマーケティング』講座」を発行。関連する情報販売、コンサルティングを開始。メールマガジン他、ブログ9本「Marketing Eye」「ビジネス界隈・気づきの視線」「企画する脳細胞・ビジネスの視点」「まちづくり・村おこしの教科書」「行列のできる『MENU』の創り方」「中高年のための新規開業サポート」「独立・起業の成功法則」「販促の知恵袋」「スキルアップでビジネスぶっちぎり!」を執筆中。現在、繁盛戦略コンサルタントおよび中小企業経営研究会のビジネス・カウンセラーとして活動。著書に「0円からできる売れるお店の作り方(彩図社)」がある。

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