こんにちは、中国人漫画家の孫向文です。

2016年9月8日、中国メディア『亜洲通信社』の社長で知日派ジャーナリストとしても知られる徐静波氏が、中国のSNS「新浪微博」のアカウント上に日本の安倍晋三首相(61)を賛美する内容の文章を投稿しました。

・SNSで公開された安倍首相の感謝状

徐氏の文章は「友人が私に送った画像によると、杭州市で行われたG20開催時、現地のホテルに宿泊していた安倍首相が、清掃員の中年女性に感謝の気持ちを表した手紙を送りました。私が筆跡鑑定したところ、この手紙は本物だと思います」という内容でした。

この「美談」ともいうべき安倍首相の行為は、中国はおろか日本のメディアもほとんど報道しません。僕は安倍首相に批判的なメディアの上層部が故意に情報を隠蔽していると勘ぐっています。

中国では清掃業の社会的地位は非常に低く、多くの中国人たちは清掃に携わる人々を卑下しています。それに対し一国の宰相が清掃員に感謝状を送ったという今回の件は、中国人にあらゆる意味で衝撃を与えました。

徐氏の投稿に対する返信を見ると、「アジアの光だ」、「すごい、とても親和性の高い首相だ!」「安倍さんはリオ五輪の安倍マリオといい、一国のトップとは思えないほど腰の低い人物だ」、「俺は安倍が嫌いだが今回は敬服する」「安倍首相は日本の国益にとってもっとも有能な政治家だ。中国と敵対しているのはまた別の話だ」と安倍首相の人間性を賞賛する声や、

「俺の字よりきれいだ、中国人として恥ずかしい」、「字に品格が表われている」、「この手紙は額縁で飾るべきだ!」「名家の出身であるため、高い教養を身につけている」などと手紙の文字が非常に達筆だったことを受け、安倍首相の教養の高さを語る声が多数寄せられていました。

・対比的に批判される中共体制

多くの中国人が安倍首相を賞賛した理由は、自国の政治に対する反動もあるようです。

上述のような言葉以外に「安倍さんは達筆だ!X大々(習主席の隠喩)の字とは桁違いだ!」、「民主vs独裁」と安倍首相と比較して習近平国家主席(63)を批判したり、「安倍首相は善人だが、中国のメディアは彼を悪人と報道している」、「かつて共産党政府は蒋介石を悪人と吹聴した。結局中共は自分たちの都合で対抗勢力を故意に貶めるのだ」と、国内の報道の偏向性を訴え、

「日本の首相はこんなに教養があるのに、日中が仲良くできないのは誰のせい?(中共政府のせい)」と自国の体制を皮肉る返信もありました。

一方、反日的な愛国層は「ただ礼儀正しいだけの悪人だ」、「(安倍首相の行為に肯定的な発言を受け)売国奴どもめ、興奮するな!」と否定的な声を投稿しましたが、肯定的な意見が圧倒的多数だったのです。

普段、安倍首相を批判し中国を擁護する日本の左派層の人々には、このような事実を知ってもらいたいと思います。

中国の国家主席は、かつての皇帝たちと同じく民衆の上に君臨する絶対的権力者です。そのため習主席が清掃員に感謝の手紙を送るという事態は絶対にありえません。それに対し日本の安倍首相は対等の目線で清掃員に接しました。

この話は日本社会の教養の高さ、差別心の低さ、そして「良いことをしてもらったら必ずお礼をする」という誠実さを表していると思います。

「日本人は教養が高い」、「書道と漢字はもともと中国のもの、それを吸収しさらに洗練させている」、「礼儀正しさは日本人の特性だ」と日本の社会や文化を賞賛する声も多く寄せられていました。

「安倍首相と仲良くしたら漢奸(裏切り者)扱いされて逮捕される」という意味の「この掃除のおばさんは大変だ!」という皮肉じみた意見が、今回の件を明確に象徴していると思います。

僕は自著『中国が絶対に日本に勝てない理由』(扶桑社)の中で、さまざまな視点から日中両国を比較しているのですが、今回の件も「中国が絶対に日本に勝てない理由」の一つだと思います。

首脳の教養の高さは、世界中から尊敬される国家を形成するための重要な要素だと思います。

著者プロフィール

漫画家

孫向文

中華人民共和国浙江省杭州出身、漢族の31歳。20代半ばで中国の漫画賞を受賞し、プロ漫画家に。その傍ら、独学で日本語を学び、日本の某漫画誌の新人賞も受賞する。近著に『中国のもっとヤバい正体』(大洋図書)など。

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