記事提供:VICE

マウント・ロスキル(Mount Roskill)はニュージーランドのオークランド郊外にあるのどかな地域だ。どんよりと曇った空の下、休火山の斜面に集まった袋小路が印象的だ。

ニュージーランドによく訪れるニューオリンズの写真家オーブリー・エドワーズは、あるとき自転車のハンドルバーにどでかいサイレンをつけて路を走っているティーンエイジャーたちを見かけた。

すぐにSNSで彼らを見つけた彼女は、翌日には彼らの写真を撮るために非公式の彼らの本部、ハウエル・クレッセント通りという小路へ向かった。

「Straight Outta Roskill」と自称する地元のグループは、高性能のカーバッテリー・システムを利用し、爆音で音楽を流せるサイレンを自転車に装備している。

これは街全体で流行っており、警察は、若者たちが自転車に装着するために地元の学校からサイレンを盗んでいる疑いがある、としているが、創始団体のStraight Outta Roskillは、自分たちは決して盗んでいない、と主張している。

彼らは敬虔な信徒なのだ。

オーブリー・エドワーズは、どこまで爆音チャリンコ団に肉薄できたのだろう。

バカでかいサイレンをつけて自転車を乗り回してる少年たちは、どういう素性なんでしょうか。

大勢がモルモン教徒で、トンガ人です。なかには、他国の少年、カトリックもいます。教会の延長上にある活動なんです。ギャングではありません。

このポイントは、彼ら自身もかなり明確にしていますよ。お年寄りのそばを通るときは音楽のボリュームを下げるのが、彼らのルールです。安息日には音楽を鳴らしません。とても健全です。

どうやってはじまり、どんな活動をしているのですか。

私がこういったプロジェクトを始めるには、サブカルチャー調査を積み重ね、誰が創始者なのかを明らかにします。グループ設立者の年齢は24歳くらい。彼が16歳のときに活動を開始したそうです。最年少は5歳程度。

スピーカーを積んだ車を見て、運転ができない自分たちはどうすればいいか、と思案したそうです。そこで、同じようにスピーカーをつけよう、となったわけです。ただし、ショボい自転車にですが…。

試行錯誤を繰り返し、このフォーマットであれば、バッテリーとスピーカーをつなぐのがベストだ、と発見したんです。そしてそのシステムを広めました。彼らが「ストラッピング」と呼ぶシステムです。

自転車をしっかり整備して、街を走ります。その目的はだいたい、誰の自転車が一番大きな音を出せるかを競うためです。

あなたが写真を撮っている路が、発祥の地なのでしょうか。

そうです。ハウエル・クレッセント(Howell Crescent)通りです。Straight Outta Roskillは、自団がオリジナルだ、と主張しています。「Farm Boys」というグループも、そう主張しています。もう少し南に、同じ主張をしているグループがあります。

バトルに勝ったら何が手に入るんですか。

若者たちからのリスペクトです。自ら「キング」と称するのを許されます。だけど毎回、どちらが本当に勝ったのか、という議論が噴出するので、またバトルします。

勝つにはどういう音楽がいいんでしょう。

トンガの音楽を流していますね。母国をレペゼンするわけです。高音が多用される音楽は最悪で、なによりも五月蝿い音楽です。なのでバトルではとんでもない音の応酬ですよ。MAROON 5、ビヨンセ、それから、セリーヌ・ディオン。

あの巨大なスピーカーはどこで手に入れるんでしょう。

サイレンですね。中古ショップや、警報器屋さんです。彼らは盗んだことはない、と言明しています。自転車1台につきだいたい5台のスピーカーが付いてますね。

勝つためのサウンド・システムを構築するための秘訣は。

それぞれの自転車にそれぞれの方法があります。皆、カーバッテリーを積んでいます。すべてがカーバッテリーを固定するカゴにつながっています。

そこからレシーバー、AUX端子、電話につながっています。ちゃんと試験済みで、試行錯誤を繰り返して綿密に設計されています。

メディアは否定的に取り上げたりもしますが、彼らは、あなたが撮影するのに対してどれだけオープンなんですか。

私のバックグラウンドは視覚人類学です。その分野では、対象の信頼を得て、自ら意図が何かを明示しなくてはなりません。Instagramで彼らを発見した、タトゥー入りのアメリカ人女性ですから、彼らも割と興味津々だったはずです。

最初の日は、ハウエル・クレッセントで彼らが集まるのを待ってました。そして彼らに話しかけて、明日写真を撮りに来ていいか、って尋ねたんです。だから彼らにも自転車を準備しておく時間があったわけです。

どうして「Straight Outta Roskill」という名前なのでしょう?

もちろんN.W.A.の『Straight Outta Compton』です。だけど、彼らがアメリカン・カルチャーから引き出したものと、クリスチャン的信条は全然違うのでおもしろいですよね。

私自身はLAで、Ice Tとかそういう音楽を聴いて育ちました。彼らは、この名前はそこから取った、といいます。理由を聞いたら、「ただ好きなだけ」と答えてました。きっと、なんとなくハードなイメージがあるからでしょう。

Straight Outta Roskill。

ストラッピング。

マウント・ロスキルの空。

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