各企業ともヒット商品を生み出すために様々な努力を重ねていますが、「今まで誰も気付けなかったニーズを発見すること」で大ヒットとなったのがワコールの「大きな胸を小さく見せるブラ」です。

無料メルマガ『店舗経営者の繁盛店講座|小売業・飲食店・サービス業』では、著者で店舗経営コンサルタントの佐藤昌司さんが、ワコールの戦略について分析しつつそこに隠された商品・サービス開発のためのヒントを探っています。

大きな胸を小さく見せるブラがヒットしているワケ

ワコールが販売する「小さく見せるブラ」は、ワコールウェブストアで累計16万4,000枚(2010年4月~2016年2月までの累計。ワコール調べ)を突破するヒット商品となりました。2016年上半期人気ブラジャーランキングで堂々の1位を獲得している商品です。

小さく見せるブラは、大きな胸を小さく見せたいと悩んでいた女性のためのブラジャーです。胸が大きいと太って見える、シャツのボタンの間に隙間ができるといった不満や、女性としてではなく一人の人間として見られたいといった願望を抱いていた女性のために開発されました。

特に男性は意外に思われた方が多いのではないでしょうか。「逆の間違いでは?」と思われた方もいるでしょう。これは間違いではありません。小さく見せるブラは、大きな胸を小さく見せるためのブラジャーなのです。

ワコールによると、「ブラに求める機能は?」というアンケートで「胸を小さく見せたい」と答えた人が全体の18%いるとのことです。圧倒的なニーズは「大きく見せたい」ですが、それでも胸を小さく見せたい人は少なからず存在します。

これは盲点だったといえます。多くの人は「胸を小さく見せたい」というニーズを見落としていました。ニーズが実際にはあったにもかかわらず、そのニーズに対応したブラジャーがないという女性の不満に気づくことができていませんでした。

商品化する前にワコールが行ったアンケート調査では「バストをコンパクトに見せたい」というニーズが10.7%ありました。この結果に着目し、商品化を実現しました。大きな胸を小さく見せるだけでなく、機能性やデザイン性も重視しました。幅広の脇おさえシートで脇をすっきりさせました。

カップには厚みを抑えた不織布を使用し、控えめのボリューム感を実現しています。小花刺繍をあしらい、可愛らしい色を取り揃えました。

常識や思い込みに隠れたニーズがある

「胸を大きく見せる」という機能が主流の中で商品化を実現したことは特筆できるといえるでしょう。当たり前と思われていることにも隠れたニーズや不満があることを表しています。

また、世の中は思い込みで満ち溢れていることの表れともいえます。女性は「女性」として見られたいと思っていると、多くの男性は思い込んでいました。「女性」ではなく一人の人間として見られたいという願望があることを見落としていたのです。

もうひとつ特筆すべき点があります。「大きな胸を小さく見せたい」というニーズが商品化前では10.7%だったのに対し、その後の調査では18%になっていることも見逃せません。調査の条件が同じではないので単純比較はできませんが、商品化によりニーズが拡大した可能性は十分考えられます。

「実はこういう不満がありませんか?」と問いかけ、それに対して「その不満を解消するための商品があります」と提示したことにより、今まで消費者自身が気づいていなかったニーズを顕在化させました。ニーズを掘り起こしたともいえます。

小さく見せるブラのヒットには商品・サービス開発のためのヒントが隠されています。まずは、世の中の常識や思い込みを疑うことにあります。「本当にそうなのだろうか?」と疑ってみます。あえて「真逆」のポジションに立ってみます。

そして、隠されたニーズや不満があると予見できた場合、それが本当に存在するのかどうかを確かめる必要があります。ワコールが行ったようにアンケートをとることが有効です。

ニーズを調査する余力がないのであれば、損切りできるという条件のもと見切り発車で商品化して実際に消費者に問うのもありでしょう。一定期間販売して売れなければ販売を中止すればいいだけの話です。

思わぬヒット商品を生みだすためには、世の中の常識や思い込みを疑う必要があることを「小さく見せるブラ」のヒットが教えてくれました。

image by:Wacoal Web Store

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