記事提供:CIRCL

アメリカでは、若者の行動や健康を守る目的で、飲酒や酒類の購買、所持が法的に許される最低年齢(Minimum legal drinking age;MLDA)を21歳に設定している。

この法律が大学生を除く若者のアルコール関連慢性疾患の発症リスクを下げているという調査結果が報告されている。

飲酒可能年齢21歳の設定は有益

ワシントン大学(アメリカ)研究チームは、1990~2010年の、肝疾患やアルコール関連がんなど複数の死因記録からデータを分析した。

また、1967~1990年に18歳になった若者の行動を、国勢調査および地方自治体の人口データなどを利用して分析している。

分析によると、21歳に設定したMLDAは21歳未満に比べ長期的に有益であるという。例えば、成人期におけるアルコール依存症や、アルコール関連疾患の発症リスクが低下すると考えられる。

しかし、この効果が期待できるのは、大学に通っていない若者に限られるのだという。大学生の多量飲酒は近年、問題になっている(※1)。

飲酒運転による事故で大学生1,825人が死亡

アメリカでは昨今、大学生の多量飲酒、アルコール依存症の増加に警鐘が鳴らされている。ある全米調査によると、18~22歳の大学生の60%が過去1カ月間に酒を飲み、3人に2人の割合で泥酔しているのだという。

2009年のデータでは、18~24歳の大学生の約1,825人が、自動車事故などアルコール関連の不慮の死を遂げていることが明らかになっている。

また、約696,000人が飲酒している他の学生から暴行を受け、約97,000人が飲酒絡みで性的暴行、あるいはデートレイプを受けたという報告がある(※2)。

飲酒可能年齢引き上げで自動車事故は減るか

アメリカ連邦政府は、1984年7月、当時の大統領、ロナルド・レーガン氏が、MLDAを21歳に引き上げない州には高速道路基金の割合を減じるとする「ナショナル・ミニマム・ドリンキング・エイジ・アクト」に署名した。

それまでは、州によってMLDAは18~21歳とまちまちだった。1970年代には一度、21歳から18歳に引き下げられたことがあった。州の半分以上が年齢引き下げを行ったが、そうした州では自動車事故が増加したため、また、元に戻す動きが強まった。

年齢が引き上げられたことにより、若年ドライバー(16~20歳)の命にかかわる衝突事故率が61%(1982年)から31%(1995年)と著しく減少した。

また、ナショナル・ハイウェイ・トランスポーテーション・セイフティ・アドミニストレーション(NHTSA)はMLDAが21歳になることで年間500人以上の命が救われていると推定している(※3)。

大学生の間でアルコール関連問題が増えるのは、入学してから仲間との集まり、パーティーなどで飲む機会が激増することや、勉学、単位取得の厳しさからくるストレスを発散させたいという理由が主になっているという。

大学学長が年齢引き上げに反対?

しかし、同法に真っ向から反対を唱え、MLDA年齢の引き下げを求めるグループがある。

それは、大学生でも酒類メーカーでもない。大学の学長だというから驚きだ。2008年のニュースだが、アメリカの有名大学約100校の学長が、飲酒可能年齢を21歳から18歳に引き下げるよう要望を提出したそうだ。

今の大学生の飲酒事情が法律にあわず、21歳という年齢まで飲めないということだと、アルコールに関連するリスクがより大きくなると主張している(※4)。

世界の飲酒可能年齢は? MLDA事情

さて、世界の飲酒可能年齢はどうなっているだろうか。ProCon.orgは、WHOの「2014年アルコールと健康に関する世界の状況報告」のデータを基に、190カ国のMLDAを調べた。

これによると、190カ国のうち61%が18歳あるいは19歳に設定しているのだそうだ。アメリカと他の11カ国が21歳に設定している。

最も低い10~15歳に設定しているのは、アンティグア・バーブーダ(イギリス連邦加盟国)と中央アフリカ共和国の2カ国。16~17歳は、オートストリア、ベルギー、ドイツ、デンマーク、オランダ、スペイン、スイスなど21カ国。

18~19歳は、オーストラリア、ブラジル、カナダ、チリ、エジプト、キューバ、ギリシャ、フランス、ハンガリー、インド、イタリア、メキシコ、トルコなど115カ国。

20歳は、アイスランド、日本、パラグアイ、タイ、ウズベキスタンの5カ国。21歳が、イラク、ギニア、スリランカ、アメリカなど12カ国となっている。

また、MLDA自体がない国は、カンボジア、カメルーン、中国、インドネシアなど19カ国。イラン、クウェート、パキスタンなど16カ国は飲酒禁止である(※5)。

法律と現状が一致しない、ズレが生じることはたくさんある。ただ、飲酒は大人でも歯止めがきかず、たくさんの失敗談が語られるし、場合によっては命にもかかわる。飲酒可能年齢を引き上げる策は、若い命を守るためやむを得ないことなのかもしれない。

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