出典木村さん提供

ニュースでもたびたび取り上げられる、犬や猫の殺処分。最近では、SEKAI NO OWARIのメンバーが、殺処分ゼロに向けたプロジェクトをスタートし話題になっています。

このような著名人の活動だけでなく、インターネットなどを通してどうぶつを大切にしようという意識は年々高まってきているように感じます。しかし、文化や歴史の違いにより未だにどうぶつに対する意識が変わらない地域もあるということをご存知でしょうか。

今回「ソコ行く!?ソレ聞く!?取材班」が、お話を伺ったのは沖縄県・久米島に移住し島の犬たちを救う活動をしている木村麗子さん。木村さんはクラウドファウンディングで、「北風と太陽作戦」という島の犬たちに避妊手術を行うプロジェクトを立ち上げています。

どんな経緯でこの活動を始めたのか、そして今後の活動についてもお話を伺いました。

久米島ってどんなところ?

出典木村さん提供

ーー久米島についてなじみのない読者も多いと思います。まずは久米島がどんな島か、木村さんの自己紹介もまじえて教えてください。

木村:私は久米島に移住してから29年です。元々は観光で来たんですけど、その海の美しさに魅せられてそのまま暮らしています。夫はパラグライダーのフライトサービスをしており、娘はアメリカの大学を終えて東京で働いています。

久米島は沖縄本島から飛行機で30分くらいの場所にあり、島の人口は8000人、世帯数は約4000世帯ほど。ちなみに、国税調査の限界集落リストに久米島も入っているんです。

4000世帯というと規模が多く見えるかもしれませんが、実はお年寄りが独居しているからであって、核家族のような世帯はすごく少ないんですよ。

それに、沖縄本島もですけど久米島は日本になってから、まだ60〜70年。その前はアメリカに統治されていて、さらにその前は“琉球”だったから世代によって話す言葉が違います。

高齢の人は琉球の言葉で話すし、戦時中に教育を受けていた人は本土の言葉も少し話す。だから、今の20〜30代の人がおじいちゃん、おばあちゃんと会話ができないということも珍しくありません。

さらに戦争であまり被害を受けなかったことで、近代化が遅れている部分もあります。

「良くも悪くもおおらかな」島の文化

出典木村さん提供

ーー具体的にどんな部分に遅れを感じますか?

木村:南の島ならではの感覚なのかもしれませんが、家族の人数はできるだけ多いほうがいいという考え方から、家族の数に対する概念が本州とは大きく異なります。それが起因して、実際には個々に充分なお金をかける余裕がないこともあるんです。

これだけ聞くと「ひどい」と思う方もいるかもしれませんが、「お金がある人が払えばいい」「お金がなければしょうがない」「誰かがやってくれるだろう」というおおらかな考え方なんです。集落にいる人が全員親戚ということもあるので、勝手に家に上がることも珍しくありません。

そのおおらかさには良い面もあって、道行く人がみんな知り合いだからこそ、子どもを地域全体で見守る習慣があるんです。この部分に関しては、私も育児をする中で助けられましたし、本当に感謝しています。

名前のない飼い犬たち

出典木村さん提供

今回、木村さんはクラウドファウンディングで、島の犬に避妊手術をするためのお金を募集したわけですが、背景にはこんな事情がありました。

ーー島の人たちは、どうぶつ達とどんな風に接しているんですか?

木村:犬や猫に名前をつけないで飼っている人がいます。牛や馬と同じように「家畜」として認識しているんです。

だから、病気になったり、ノミやダニがついたら捨ててしまう。飼い方も炎天下であろうが、外につなぎっぱなし。そして新しい犬をまた飼う…。

でも、島の人たちに罪悪感はないんですよ。それが島では当たり前の感覚だから。これは、文化と教育の違いや、島に動物病院がないことも原因になっていると思います。

月に2回、それも数時間しか獣医さんは滞在していませんから、避妊手術を受けることはできないし、緊急時は間に合いません。避妊にしろ、病気やケガにしろ、不利益を被っているのはどうぶつたちです。

活動をしようと思ったきっかけ

ーー木村さんは、なぜ今回このクラウドファウンディングをしようと思ったんですか?

木村:私は、捨てられてしまった犬や猫の里親探しをする活動を25年以上してきました(譲渡先は島外の方に限っています)。でも、外で飼われている子がメスだったら妊娠してしまうし、生まれた子犬もきちんと飼育されずに捨てられる…これでは無限ループですよね。

だから、一気に負の連鎖を断ち切るためには、避妊手術が必要だと思ったんです。

今までの活動は大々的にインターネットで呼びかけることもなく、ひっそりとやってきました。なぜかというと、の人との関係をこわしたくなかったからです。

捨てられた犬や猫は、清掃局に一旦引き取られてから本島に送られます。私が清掃局に引き取られた犬や猫を保護することができていたのも、清掃局の方々と良好な関係を築いていたからこそでした。

インターネットで呼びかければ、助けて頂けるチャンスは増えるでしょう。しかし、伝え方によっては島の人が批判されてしまうのでは?という懸念もしていたのです。

そうなると、どうぶつを引き取らせてもらえなくなってしまうかもしれない…それだけは絶対に避けたいと思っていました

一匹の子犬との出会いで決意

出典木村さん提供

ひどい皮膚病にかかった状態で保護された犬。現在は藤沢で元気に暮らしているそうです。

木村:でも皮膚病になってしまった子と出会ったことで、考えが変わりました。8月の暑さの中、皮膚病で毛が抜けて裸の状態であるにもかかわらず、ひなたの手すりにつながれたまま捨てられていたのです。なんでひどい状態になるまで放っておくの?と、本当に悲しくて悔しくて…。それで避妊手術をするための活動を始めました。

一朝一夕でこんな状態にはなりません。もっと早く誰かに相談するなりして欲しかった。どうぶつは、「かゆい」も「痛い」も言えないから…。

フィラリア(蚊が媒介する寄生虫による病気)の予防、避妊、暑い時や台風の時は家の中に入れてあげる…当たり前のことが、島では知られていないのが現実なんです。

島の人も活動に参加してくれるようになった

出典木村さん提供

ーー木村さんの活動に対して、島の人から何か言われたことはないんですか?

木村:それは全然ないです。「この子の避妊手術させてもらってもいいですか?」といえば、「やりたければどうぞ」「お金がかからないなら」なんて言われます。

でも、誤解してほしくないのは、島の人が全員ちゃんと飼育していないわけではないということ。室内で飼っている人もいるし、予防接種や避妊手術をきちんとしている人もいるんです。

今回のプロジェクトにも島の中から協力してくれる人が出てきましたし、「(常識的な飼い方を)知らなかった」という人もいました。

ーー知らないから犬や猫を捨ててしまっていたということですね。

木村:そうです。だから、今後知ってもらうことで島の人と、どうぶつ達が共存できる環境にしていきたいんです。

この活動を他の島にも広めたい

出典木村さん提供

ーー今回のプロジェクトの目標額は達成されていますが、今後はどんな活動をしていきたいですか?

木村:今回は、犬の避妊手術の活動ですが、ある程度の成果をあげられたら猫にも避妊手術をしたいと考えています。私が去年保護した犬は、子犬と成犬を含めて38頭でした。避妊手術をしたことで、捨てられてしまう犬が新たに生まれる可能性は、徐々に低くなるはずです。

実は、久米島に限らず沖縄は、同じようなことが起きている島は多いんですよ。

だから、久米島での避妊手術による犬・猫の殺処分ゼロをモデルケースにして、他の島にも活動を広められればいいなと考えています。最終的には、自治体にも犬・猫の避妊手術に取り組んでもらいたいというのが希望です。

「すべてはどうぶつのため」

出典 https://readyfor.jp

同じ日本ではあっても、島との文化の違いを感じずにはいられませんでした。最後に木村さんは、こんなメッセージをくださいました。

木村:この記事を読んでいる方の中には、島でのどうぶつ達の様子を聞いて腹が立ってしまうという人もいるでしょう。

でも、告発するために活動しているわけじゃありません。すべては、どうぶつ達のためなんです。この活動を「北風と太陽作戦」としているのも、飼い主さんを怒るための活動ではないから。

私たちがどうぶつに避妊手術をすることで、飼い主さんの考え方が変わるきっかけになって欲しいと思います。

人もどうぶつも幸せに暮らせる島にするために、どうか力をお貸しください。

<取材・文/横田由起>

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