その昔、定年退職したお父さんは「ぬれ落ち葉」と呼ばれていました。仕事で帰宅が遅いなど家族とコミュニケートせず、休日も家事や地域活動、趣味に興じるわけでもない、会社に思いっきり依存した「高リスクな人生」を選択した人たちです。

その結果、行き場所がない夫は妻にまつわりつくことになり、そのわずらわしさが、掃いても、掃いてもほうきにくっついてくる、庭の「ぬれ落ち葉」というわけです。

今も、長時間労働や、家族にコミットしない選択をした結果、「家庭に給料さえ入れてくれたらいい『ATM』」夫や、お前はもう死んでいるとばかりに「ゾンビ(=living dead)」のように扱われる夫も出現しているとのことです。

「そういうおじさん、いるよね」「うちのお父さんみたい~」と笑っていられるうちはいいのですが、もし自分の彼がその予備軍だとしたら、ぞっとしますよね。

今ではすっかりおなじみの「イクメン」「イクボス」の言葉を定着させた、ファザーリング・ジャパンという、設立10周年を迎えたNPO法人があります。男性の育児や働き方改革を後押しする興味深い試みを数多く行っているこの団体が、また面白いイベントを開催しました。

台風が近づく2016年8月29日、都内で開かれた「FJ緊急フォーラム『このままでいいのか?日本の夫&妻!Living Deadな夫婦関係を考える』から、アラサー女性必見の内容をセレクトしてリポートします。

妻の50%は、半年から1年に一度「離婚したい」と思う

会場では、第一子が小学生以下の、子育て世代の妻と夫1030人ずつ、合計2060人にとったアンケート結果の速報が発表されました。幅広い年齢の調査では、結果がぼやけてしまうこともありますが、こうして世代を区切った調査であれば、「子どもが生まれると、夫婦の間でどんなことが変わるの?」という不安を持つアラサー世代にとっては、小学生までの子どもを育てている少し先輩の本音は興味深いですよね。

調査のキッカケについては、「離婚件数が増えているという報道もあり、日本の夫婦って本当に仲が悪いの?なにが原因なの?という素朴な疑問が調査の動機です」とファザーリング・ジャパン理事の林田香織さん。ご自身もワーキング・マザーです。

アンケート最初の質問はズバリ「離婚したいと思ったことはありますか?」

出典 https://daily-ands.jp

「離婚したいと思ったことがある」夫は35%、妻は50%。「ある」と答えた男女とも1割が「毎日、離婚したいと思っている」と回答

「夫は35%、妻は50%が『離婚したいと思ったことがある』と回答しています。そのうち1割程度は『毎日思っている』人たちですが、多くは半年から1年に1度くらいの頻度のようです」(林田さん)

一部、「離婚率が上がっているのは、有職の妻が増えたから」という意見がありますが、「離婚したいと思っている」夫の割合は、妻が有職でも専業主婦でも大きな差はありませんでした。

しかし、思っているだけではなく、離婚するつもりはありますか?(計画しているか)という問いには差が出ました。「離婚するもりはない」と回答した人数は、夫と専業主婦の妻では7割となったのに対し、有職の妻は約5割となりぐっと少なくなりました。経済的に自立している妻は、離婚に対してフットワークが軽いのかもしれません。

夫婦の家事育児は「分担に納得しているかどうか」がカギ

さらに深堀りして、「夫婦の生活に満足していて、離婚したいと思ったことがない人」を「円満夫婦」、「夫婦生活に不満を持ち、離婚したいと思ったことがある人」を「不満夫婦」として、両者を比較しました。

出典 https://daily-ands.jp

夫が家事、育児にコミットするとともに、よく話し合って納得して分担をすることが秘訣のよう。これって、職場のコミュニケーションにも通じることですよね

「円満夫婦と不満夫婦の最も大きな違いは、夫婦の家事育児満足度でした」と林田さんは解説します。「円満夫婦」は、「不満夫婦」に比べると、夫の平均家事時間が1日あたり10~15分、育児時間が20~30分も長かったといいます。

「でも、時間が多ければいい、というわけでもありません。重要なのは、夫婦がお互いに『納得したうえで分担しているか』です」(林田さん)

実際に、夫婦で話し合う時間は「円満夫婦」は平日で1日58分、休日で2時間という結果です。「不満夫婦」に比べて3倍の長さとなっており、夫婦のコミュニケーション時間が長いほど、お互いの満足度も高いことが読み取れます。

「夫婦の会話は、1. 情報伝達、2. 課題解決、3. 情緒的サポートの3つの機能があるといわれています。今の夫婦は①、②の『家庭内業務連絡』しか果たす時間がなく、夫婦として大切な③の機能が果たせていないケースが多いのが、辛いところです」(林田さん)

時間の余裕がないから「不公平感」が生まれてしまう

さらに突っ込んで調べたところ、家事育児分担満足度にはジレンマがあるそうです。林田さんによると、自分の負担割合が減って、相手の負担が増えれば、自分の満足度は上がりますが、その代わり、相手の満足度は下がってしまうとのこと。「でも、自分の負担は減らしたいのと同時に、相手の満足度は上がってほしい、と願っているのです」

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自分の負担は減らしたい、でも相手の満足度は上がってほしい。子育て世代の家事育児分担の本音です

「ここからは私の考察ですが」と前置きし、林田さんはこう続けました。「夫婦はみんな、仲良くなりたいと思っているはずです。時間がたっぷりあれば、夫婦は、家事育児をおしつけあわなくて済むはずなんですよね。長時間労働で、家事育児に割く時間が足りない、という現状を変えていかなければなりません」

「収入が上がれば、夫婦の関係はもっとよくなる」

出典 https://daily-ands.jp

「あなたはどうして結婚生活を続けているのですか?」の回答。男性のみなさん!「愛している」と思っているだけではなくて言葉や態度に出しましょう!

最後に「おまけです」と興味深い調査結果スライド投影されました。「なぜ結婚しているのか?」の質問に対する回答です。

「結婚には、配偶者を愛しているという『愛情』、経済面を重視する『機能』、築き上げたものを失いたくないといった『絆』、離婚は世間体がよくないという『惰性』などの要素があります。夫は70%が『愛情』と『絆』、妻は『機能』がやや大きいですね」

夫婦関係の改善についての要望では、妻、夫とも「理解してほしい」が1位。ほかに目立ったのは「自分の収入が上がれば、夫婦関係はもっとよくなる」と回答した夫、「夫の収入が上がれば」あるいは「自分の収入が上がれば、夫婦関係はもっとよくなる」と回答した妻の多さだったそう。

「いろいろな選択肢があっていいと思います。夫婦でいろいろな役割をサポートしていけたらいいですね」と林田さん。調査の詳しい内容は「結婚生活と離婚に関する意識調査」調査概要をご覧ください。

出典 https://daily-ands.jp

フォーラムでは、プロの保育士カップルによる「夫婦円満の秘訣」のトークも。「パートナーシップルール」の中の「対等ではあるが平等ではない」は、機械的にではなく、役割に応じた分担をするといったニュアンス。調査結果と通じるところがありました

「夫に言うよりも、職場に要求するほうが面倒くさくない」

緊急フォーラムは、プロの保育士カップルによる「夫婦円満の秘訣」のトークあり、朝日新聞社総合プロデュース室プロデューサーであり、前『AERA(アエラ)』編集長の浜田敬子さん、フジテレビ系連続ドラマ『残念な夫。』プロデューサーの小原一隆さんらをパネラーに迎えたパネルディスカッションあり、盛りだくさんの内容でした。

なかでも『AERA』時代には、[大特集]なぜ夫婦は憎しみ合うのか「夫よ 食器洗いぐらいでドヤ顔するな!」(2015年10月19日増大号)など、夫婦のあり方について一石を投じ続けた浜田さんは、ディスカッションでも切れ味鋭い発言を連発。

特に印象的だったのは、「若い世代の男性は自分でも家事育児をやりたいというモチベーションが高い。でも、年齢によってはそうでない男性もいる。そうなると働く妻たちはどうするか。会社に対するリクエストが高くなるんです」という指摘です。

出典 https://daily-ands.jp

本音トーク満載で、大いに盛り上がったパネルディスカッション

「女性社員からの要望で、前の職場でも働き方を大きく変えました。ワーキング・マザーの社員も増えましたが、常に思っていたのは、『この話を夫にしたことがある?』ということです」と、浜田さん。

浜田さんによると、妻は「夫に言うのは、みんな面倒くさい」のだとか。「『話すことで家庭内の雰囲気が悪くなるくらいなら、会社と交渉したほうが楽』と考えるので会社と交渉し、女性社員の多い職場は、ワーキング・マザーが働きやすくなっていく」

話はここで終わりません。女性社員の多い職場が、ワーキング・マザーにとって働きやすくなっていく一方で、夫が働いている会社が昔ながらの長時間労働で、上司の理解がない職場だとすると、そこで「夫婦間の断絶が起きてしまう」といいます。「夫の会社が長時間労働で上司も理解がないなら、妻からのリクエストがなければ夫は働き方を変えようとしない。そこでずっと変わらない化石のような職場が出現するのです」(浜田さん)

1日は24時間。人生がむしゃらに働く時期もありますが、お付き合い的な長時間労働に貴重な時間をとられているなら、納得できないですよね。

先に紹介した調査結果と同じように、一見すると「夫婦間の問題」と思われることも、実は根本的には職場の制度や働き方に原因がある可能性もあるということが垣間見えてきました。

大切なのは、やっぱり「何でも話し合える関係作り」?

フォーラム全体を通して感じたのは、やっぱり「カップルで話し合うこと」の大切さでした。ただ、お互い忙しいときに、要求ばかりを言い合うのは辛いですから、普段から「小さなこともこまめに共有すること」でしょうか。

「今はこんなことで忙しい」という現状報告から、「この仕事には興味があるからぜひ打ち込みたい」という将来の展望、などなど。「面倒くさいから」「どうせわかってもらえないし」として閉じてしまうことが、すれ違いの種をまくことになるのかもしれません。

今どき、年収が高くて家事育児も手伝ってくれて、といった完璧な男性がゴロゴロいるわけはない!ということはみんなわかっています。かといって、この超高齢化時代に、年収が高くてもモラハラ、といった勘違いな男と人生をともにするのも、自分がもったいないですよね。

ちなみに「ブラックな夫婦」を含めてたくさんの夫婦に取材をしてきた、前出の浜田さんが実感したのは「長続きするカップルは、夫がとにかく『いい人』であること」だそう。この人大丈夫?と思うくらい、いつもニコニコしている……。それって、妻が好きで好きでしょうがないってことですよね。

カップルは「チーム」。自然に話せる関係を

人生は長く、いろいろな時期があります。カップルは1つのチームなので、もし家庭を持ったら、世間体などはさておき、自分たちの価値観でオリジナルな「守備」を考えてもいいのでは。

年収や見た目など、パートナー選びにはいろいろな要素はありますが、結婚しても「平日1時間、休日2時間」、自然に話せてしまう。そんな関係が自然に持てる男性と、ゆっくり関係を築いていくことかも、と感じました。

阿部祐子(あべゆうこ)
出版社勤務(雑誌編集者)を経てフリーに。2009年CFP資格取得。社会、金融、ビジネス系記事、やさしい言葉を使ったファイナンス系の読み物などを手掛けています。

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