激動の昭和の時代を振り返るとともに、現代に残したい当時の学びを探るコーナー「昭和土産ばなし」

揚げパン、ソフト麺、ミルメーク…。

小学生の頃、誰もが楽しみにしていた給食。「揚げパン大好きでさー」や「鯨肉が硬くて…」など、中には「好きな女の子がチーズが苦手でいつも食べてあげてた」なんて甘酸っぱい思い出をお持ちの方もいらっしゃるのではないでしょうか。同窓会や飲み会では、学校給食ネタで盛り上がることもありますよね。

給食発祥の地は山形県だった

あらゆる世代をノスタルジーに誘う学校給食の歴史は古く、明治22年に山形県鶴岡町(現在は鶴岡市)の私立忠愛小学校で実施されたのが始まりだそうです。その後は貧困児童対策として地域的に行われていましたが、昭和27年にはすべての小学校を対象に完全給食が実地されました。そして昭和29年には「学校給食法」が成立し、教育の一環としての給食がスタートしたのです。

写真は鶴岡市、大督寺に立つ「学校給食発祥の記念碑」です。忠愛小学校は大督寺本堂の一部に作られたものだったため、お寺の中に記念碑があります。

思わずあの味が蘇る!懐かしい「昭和の給食」の献立あれこれ

時代が変わるとともに、学校給食を取り巻く環境も、給食そのものも変化していっています。まずは懐かしの昭和の給食を振り返ってみましょう!

●鯨肉の竜田揚

出典 http://www.juk2.sakura.ne.jp

まずはこちら、鯨肉です。給食の話題になった時に必ず出てきますね。実は筆者は竜田揚げを食べたことがなく、母校での鯨肉の献立は「ごまみそあえ」でした。硬くて噛み切れなかったこともあり、不評でした。

●揚げパン

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甘くてザックリ、小学生に大人気だったのが「揚げパン」です。先割れスプーンで刺して、大口をあけてかぶりついていました。ただ苦手な子もいて、残したときは藁半紙に包んで持って帰っていた記憶があります。

●ソフト麺

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揚げパンと並んで人気だったのが「ソフト麺」。筆者の母校のソフト麺はビニール袋に包まれていました。一気にカレーの中に入れるとあふれてしまうので、袋の上からつぶして小分けにして入れるという技もありました。

●カレー

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米飯給食が開始されたのは昭和51年からだそうです。カレーなどにはパンではなく、やっぱりご飯ですよね。でも給食室の設備の関係などもあり、実は筆者は米飯給食を経験していないのです…。私の思い出話ばかりで申し訳ないですが、それだけ給食の話題には魅力があるのです!

こんな豪華な献立アリ!?思わず目を見張る「平成の給食」

近年になって、昭和の時代からは想像もできない高級食材を使った給食がニュースになることがしばしばあります。さっそく平成の献立を紹介していきましょう。

●ズワイガニ

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大人だって食べたい!思わずうなるズワイガニだって、給食に出てしまいます。富山県魚津市の小学校では、平成26年に紅ズワイガニが給食に登場しました。また兵庫県の一部の小中学校では、セコガニ(雌のズワイガニ)が平成27年に給食に登場しています。

●松茸ご飯

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長野県の小学校では、毎年6年生が山に入って松茸を収穫した後、給食として松茸ご飯を作るそうです。なんという贅沢…子供の頃から舌が肥えてしまいそうですね。

普段の献立もご紹介

出典 http://www.juk2.sakura.ne.jp

当然、毎日高級食材が給食に出るわけではありません。こちらは平成25年の献立で、「山菜おこわ、牛乳、すましじる、サワラの塩焼き、キャベツのおひたし」となります。焼き魚は米飯によく合いそうですね。

出典 http://www.juk2.sakura.ne.jp

こちらは平成24年の献立で、「ぎゅうどん、牛乳、エノキタケいりすまし汁、たくあんの香りあえ」です。野菜も豊富に使われていて、栄養バランスにも優れています。

平成になってからメニューが一気に豊富になった理由

懐かしい昭和の給食、グルメもうなる平成の給食。いろいろな給食を見てきましたが、平成になってからメニューが豊富になり、時として豪華な食材が使われるようになったことがお分かりいただけると思います。

平成になって様々な食材が使われるようになった理由として挙げられるのが、平成17年に成立した「食育基本法」です。

第六条 食育は、広く国民が家庭、学校、保育所、地域その他のあらゆる機会とあらゆる場所を利用して、食料の生産から消費等に至るまでの食に関する様々な体験活動を行うとともに、自ら食育の推進のための活動を実践することにより、食に関する理解を深めることを旨として、行われなければならない。

出典 http://www8.cao.go.jp

上で紹介した松茸などは、児童が山に入って採取した松茸を調理するので、まさに上記条文にある「食料の生産」に「関する様々な体験」といえるでしょう。

また第十条に「地方公共団体の区域の特性を生かした自主的な施策」が定められたため、ズワイガニのような地元の特産物を取り入れる学校も出てきました。

第十条 地方公共団体は、基本理念にのっとり、食育の推進に関し、国との連携を図りつつ、その地方公共団体の区域の特性を生かした自主的な施策を策定し、及び実施する責務を有する。

出典 http://www8.cao.go.jp

そしてもうひとつ、同じく平成17年に制度が開始された「栄養教諭」の存在も大いに献立に影響を与えています。栄養教諭は、主に各学校における食育の推進を担う役割で、改正された「学校給食法」には以下のような文言があります。

2 栄養教諭が前項前段の指導を行うに当たつては、当該義務教育諸学校が所在する地域の産物を学校給食に活用することその他の創意工夫を地域の実情に応じて行い、当該地域の食文化、食に係る産業又は自然環境の恵沢に対する児童又は生徒の理解の増進を図るよう努めるものとする。

出典 http://law.e-gov.go.jp

「食育基本法」の第十条と近いものがありますが、栄養教諭が腕を振るい、当該義務教育諸学校が所在する地域の産物を学校給食に活用することにより、平成の豪華かつ充実した給食が登場することとなったのです。

「食育基本法」の成立、また「栄養教諭」の制度が始まったのが平成17年なので、筆者をはじめ昭和生まれの方々はその恩恵に浴していませんが、子供たちが楽しんで給食を食べる姿を見るのは嬉しいものですね。

献立が充実したのはいいけど、給食費はどうなっているの!?

献立が充実しているのなら、次に気になるのは給食費です。世田谷区のホームページにあるテキストによると…

    期間        低学年   中学年   高学年
昭和60年度~平成4年度    3,300円  3,600円  3,900円
平成5年度~平成9年度    3,600円  3,900円  4,200円
平成10年度~平成17年度    3,700円  3,900円  4,300円
平成18年度~平成24年度    3,700円  4,100円  4,450円
平成25年度~平成27年度    3,859円  4,301円  4,658円

出典 http://www.city.setagaya.lg.jp

昭和60年と比べると平成27年の給食費は、小学校低学年は約1.17倍、中学年は約1.19倍、高学年も約1.19倍となっています。しかし物価の変動などもあり、単純に値上がりしたと考えるのは早急です。

数字の上では増えていますが、これはお金の価値の変化によるものなので、実質的にはほぼ値上がりしていないと言えるでしょう。昭和60年(1985年)から平成27年(2015年)年までの30年間にこれだけの変化しかないのは、ある意味凄いと思います。

未納、食べ残し、現代の給食が抱える様々な問題

給食が豪華になった一方で、近年よくニュースになるのが、給食費の未納問題です。

家計が苦しいのであれば、各自治体の補助制度を利用するという方法もあり、例えば先ほど給食費の推移を掲載した世田谷区には「就学援助費」があります。「世田谷区内在住で国公立小・中学校に在籍するお子様がいて、生活保護を受けている、または経済的に就学が困難な家庭」であることを条件とし、「給食費や宿泊行事・学用品などの経費を補助」してもらえます。

しかし未納者の多くは“払えるのに払わない”ため、問題となっているのです。

給食費を滞納する原因は、

1.保護者としての責任感や規範意識の問題…61.3%
2.保護者の経済的な問題…33.9%
3.その他…4.9%

と、保護者のモラルの低下によるものが多くを占めています。

そのため各自治体も荒療治に出るようになりました。今年3月、埼玉県朝霧市では、給食費を滞納する1世帯に対し、強制執行を申し立てました。

本市では、昨年の10月29日に学校給食費の未納者のうち、滞納額が多く支払いの意思を見せない9人について、支払督促の申立てをしました。しかしながら、このうちの1人については、連絡、相談及び納付もないため、やむを得ず申立てに至ったものです。

出典 http://www.city.asaka.lg.jp

教育に関することなので、穏便に…といいたいところではありますが、同市では給食費滞納額が膨らみつつあるようで、他の生徒への影響を考えると仕方のないことなのかもしれません。

食べ残しも深刻に

もうひとつの問題は、給食の食べ残しです。

食べ終わるまで残されるなど、食べ残しについて苦い思い出がある方もいらっしゃるかもしれません。環境省の調査によれば、平成25年度の児童、生徒1人当たりの年間の食品廃棄発生量は17.2kg。このうち食べ残しによるものは7.1kgになるそうです。

そのため、各市町村の小中学校ではリデュース・リサイクルに取り組み、生徒が残さないよう調理方法やメニューを工夫したり、学校給食からの食品廃棄物で飼料や肥料作るといった対応がとられています。

「食育基本法」のおかげで、高級食材や、地元の特産品を使った給食が登場し、給食の時間を楽しむ子供も増えたことでしょう。しかしその一方で、上記のような給食費の未納問題や食べ残し、また近年はアレルギーによるトラブルなども起こっています。

我々が今、給食を懐かしい思い出として語っているように、今の子供たちも思い出として語る時が来るはずです。こういった問題をひとつひとつ解決し、子供たちが安心して給食を楽しめて、よい思い出がたくさんできる環境を整えていきたいですね。

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Spotlight 編集部 Shin-shin このユーザーの他の記事を見る

生まれは昭和、ライター生活はウン十年。紙媒体がメインでしたが最近はWeb等でも記事を書き始めています。それなりに生きてる割に人生経験はショボく、しばしば情報の波に流されて溺れます。そんな中でも、面白くて心を打つ情報をお届けできればと思います。

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