記事提供:TOCANA

――科学分野だけではなく、オカルト・不思議分野にも造詣が深い理学博士X氏が、世の中の仰天最新生物ニュースに答えるシリーズ。

出典 http://www.bbc.com

子どもを作るためには精子と卵子が必要である、と我々は当然のように思い込んできたが、もしかするとそうではないのかもしれない――。そんな衝撃的なニュースを英BBCが報じている。

■精子だけで健康な子どもが生まれる!

今月13日付の学術誌「ネイチャー・コミュニケーションズ」で公開された論文によれば、「単為発生胚」という、卵子とは異なる細胞に精子を注入して、マウスの子どもを作ることに成功したという。

このマウスが正常に成長する確率は約24%と見積もられているが、健康に育った場合の寿命は平均と変わらず、通常の方法で繁殖することもできたという。

論文を発表したのは、英バース大学のトニー・ペリー氏らの研究チームだ。精子と卵子が受精して受精卵になる過程では、精子と卵子の遺伝子の役割が一度消される現象「リプログラミング(初期化)」が必要となる。

これまで、この初期化を起こすためには卵子が必須と考えられてきたが、今回の論文は、その常識を覆した。

なんと「卵母細胞」(成熟すると卵子になる細胞)を刺激して作成した単為発生胚に精子を導入したところ、精子の初期化が正常に行われ、健康な子どもが生まれることが世界で初めて確認されたのである。

トニー・ペリー氏はBBCの取材に対し、「近い将来、通常の細胞と精子から受精卵を作れるようになるかもしれない」と語っている。

2人の男性を両親にもつ子どもを作ったり、1人の男性が自分の通常細胞と精子から子どもを作ったりすることが可能になるかもしれないということだ。

■不妊治療にも朗報か!?

では本当に、卵子を提供する女性がいなくても子どもを作れるようになるのだろうか。生物学に詳しい理学博士X氏に解説を依頼した。

「単為発生胚は、女性から採取した卵母細胞から作りますので、結局今のところ、女性の協力なしに子どもを作ることは難しいでしょう。ですが、iPS細胞などから卵母細胞を作る研究も進んでおり、いずれは女性がいなくても受精卵を作れるようになる可能性はあります」

生殖において、女性は不要になるということだろうか?つまり、究極的には女性がいなくても男性だけで人類は存続できるということか?そう問いかけると、X氏は首をひねった。

「あくまでも受精卵が作れるというだけで、それを育むためには子宮が必要です。どちらかというと、男性だけよりも女性だけの方が可能性は高いように思います。精子なしで子どもを作るマウス実験は、2004年にすでに成功していますから」

X氏は今回の研究でもっとも重要なポイントについて「精子が自身を初期化する能力を持っている可能性が示されたこと」だと語り、その意義を強調した。

「なんらかの異常で、正常な卵子を作ることができない女性でも、卵母細胞から自分と夫の遺伝子を継いだ子どもを持てる可能性があるということです。

また、初期化能力が精子に備わっているということであれば、精子からiPS細胞やES細胞のような分化全能性を持った新しい万能細胞を作れるかもしれません」

なんと、精子が万能細胞になるかもしれないというのだ。精子は、採取するための肉体的・精神的負担が卵子の採取と比べて明らかに小さく、倫理的な問題も少ない。

これまで、ゲノムの運び屋としか見られていなかった精子が、科学の発達に役立つツールとして重宝される日がやって来る可能性があるのだ。

日々無駄に射出されている精子も、これを知れば少しは浮かばれるかもしれない。

出典:BBC
出典:Nature Communications
出典:UNIVERSITY OF BATH

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