ネットで話題のニュースに関して、編集部が独自の切り口で取材調査をする「ソコ行く!?ソレ聞く!?取材班」。今回も参考になるお話を伺ってきました。

あまり考えたくないことですが、誰にでも人生を終える瞬間はやってきます。みなさんは、その「最期」をどうやって過ごしたいでしょうか。おそらく誰もが、苦しまずに穏やかな死を迎えられたら…と思うはずです。

なぜこんな話をしたかと言うと、近年話題になっている「平穏死」について考えたいからです。平穏死とは、高齢の患者や末期の病気を患う方に対し、延命治療を施さず、安らかに最期を迎えるというもの。数年前から、この平穏死という考え方を尊重する声が上がり始めました。

とはいえ、多くの人はまだ平穏死についてほとんど知らないのではないでしょうか。そこで今回は、『平穏死10の条件』(ブックマン社)などの著書を執筆されている、長尾クリニック院長長尾和宏先生に取材を敢行。

平穏死とはどんなものなのか、そしてそれが患者や家族に何をもたらすのか、長尾先生の話を聞きながら考えてみたいと思います。

長尾クリニック院長 長尾和宏 先生

最期の10日間に大量の薬…それは本当に必要なのか

まず、平穏死とは具体的にどういったものなのでしょうか。長尾先生は「延命治療をなるべく差し控えて、穏やかな最期を迎えること」だと言います。

「たとえば末期ガンの患者なら、通常は亡くなるその日まで抗がん剤を打ちます。点滴も打ちますし、人工呼吸器を通すので、最期まで苦しい状況が続きます。特に亡くなる前の10日間はいろいろな薬が大量に投与されていきます。これらは本当に最期までやるべきなのか。平穏死には、その疑念が根底にあります」(長尾先生)

長尾先生は「決して、延命治療が悪いわけではありません」とも語ります。ただし、本当の終末期になり助かる見込みがない状況では、じつはこういった延命治療がかえって患者を苦しめ、早く亡くなってしまうこともあるとのことです。

「延命治療は大切ですが、終末期においてはある地点から『延命』ではなく『縮命』になってしまいます。その変わり目をとらえて、延命治療のやめどきを考えていくのが平穏死です。最期も病院ではなく、なるべく自宅で過ごします」(長尾先生)

延命治療では、鼻にチューブを通すため最期まで苦しく、痛みも続くといいます。食べ物も食べられません。長尾先生は「最期までチューブだらけでもがき苦しんでいる人を見て、平穏死への思いが強くなった」と言います。

「自分も最期は平穏死を選ぶ」

患者さんを診察する長尾先生

では、どんな人が平穏死を選ぶのでしょうか。長尾先生は、「多くの場合、患者さんがみずから平穏死を調べるなどして、自分から意見を言って選択する」と話します。

「残念ながら95%の医者は平穏死を患者さんへすすめません。ですが、患者さんの中には『自分の最期は自分で決めたい』と申し出る人がいます。そうして、平穏死を選択されます」(長尾先生)

平穏死を選んだ患者は、自宅で静かに看取られます。それを見守った家族の方々は、「こんなに穏やかに亡くなるとは思わなかった」と話すことが多いといいます。

「今までに、身内の方や家族の方が病院で苦しんで亡くなるのを見た人にとっては、延命治療をやめて自宅で看取るとなれば、むしろ余計に痛んだり苦しんだりするのではと心配します。ですが、現実は非常に穏やかな最期になるので、みなさん驚かれますね。そして一度その姿を見ると、『分も必ず最期は平穏死を選ぶ』と話します」(長尾先生)

もちろん、平穏死が良いか悪いかは、個人の意見によるものであり、ここで全面的に肯定することはありません。しかし、そういった選択肢があることは知っておくべきなのではないでしょうか。

最期に好きなものを食べて死にたい

平穏死について考える上で、特徴的なのが「食事」です。通常、延命治療のほとんどは最期に点滴で栄養を補給したり、あるいは「胃ろう」という形で胃に穴を開け、チューブで胃に栄養分を送ります。しかし、長尾先生が考える平穏死では、「最期まで食事をとる」ことが特徴といいます。

「平穏死を選択し、在宅に移った方は最期まで食事をとります。末期ガンなどになると『食べられない』と考えがちですが、そんなことはありません。何より食べることは最大の喜びで、生きるために食べる行為が人間の本能と言えます。最期の瞬間、好きなものを食べたいと思うのは、当然の願いではないでしょうか」(長尾)

これについても「胃ろうという治療方法が悪いのではなく、胃ろうの本質を踏まえて、正しいやり方であれば問題ない」と長尾先生は語ります。良いタイミングで行い、それが回復につながるなら、胃ろうも大切な手法です。ただし、終末期になればそれが負担になることがあるのです。

医者や看護師にも、もっと平穏死の知識を身につけてほしい

現在は、患者自身が平穏死を選択するケースが多数ですが、認知症などになれば自分で選択できないケースも出てきます。長尾先生は、「そういったこともふまえて、リビングウィル(生前意思)を書いて欲しい」といいます。

これは、「自分の命が不治かつ末期であれば、延命措置を施さないでほしい」という旨を、あらかじめ記しておくことです。そして長尾先生は、医者や看護師にも、もっと平穏死についての知識を身につけてほしい」といいます。平穏死を選べないのは、急死や事故の場合のみで、95%の方は亡くなる際に終末期がある、つまり平穏死を選ぶことができるからです。

自分が亡くなる時のことは、できれば考えたくありません。しかし、死はどこかで必ず訪れます。あるいは、自分の家族や愛する人を看取る瞬間もやってきます。そんなときのために、みなさんも「平穏死」という選択肢を調べておくことも大切ではないでしょうか。

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