今年8月、ビジネスホテルの女性従業員に対する強姦致傷容疑で逮捕された、俳優の高畑裕太容疑者。その際、マスメディアや、インターネットで話題に上ったのが、裕太容疑者の母であり、女優の高畑淳子さんの会見でした。

淳子さんの「できる限りすべての質問に答えたい」という意図から、1時間にもわたって行われた記者会見。マスコミの質問内容は、裕太容疑者が逮捕されたときの心境、面会したときの容疑者の様子から、幼い頃の子育ての仕方や、裕太容疑者の性癖にまで話が及びました

高畑淳子さんの会見に対して、賛否両論の意見が

会見に対して、SNSで多く語られたのが「子育て」と「親の責任」の問題。Twitterでは、「子育てを誤ったのだから、淳子さんが叱責されるのは当然」と考える意見もあれば、「子育てに正解などない」「親としての気持ちを、包み隠さずに話した人を叩くことはおかしい」「成人済みの子どもの犯罪は、親の責任とは言い難い」という意見もあり、さまざまなツイートが飛び交いました。

子どもの犯罪、親には責任があるのか?少年犯罪の専門家に話を聞いてみた

今回の高畑容疑者の事件の報道を、身を切られるような思いで見ていたパパ・ママもいるのではないでしょうか。今、自分がしている子育てが、子どもの将来にどう影響を及ぼしていくのかを考えて、不安や疑問を抱いてしまった方もいるかもしれません。

そこで、ネットやテレビで話題のニュースに関して、編集部が独自の切り口で取材調査をする「ソコ行く!?ソレ聞く!?取材班」のコーナーでは、子どもの犯罪は親にどのくらい責任があるのか、どうすれば犯罪を防ぐことができるのか、家庭裁判所調査官(※)として勤務された経験がある、少年犯罪に詳しい立教大学コミュニティ福祉学部助教熊上崇(くまがみたかし)先生にお話を伺いました。

※「家庭裁判所調査官」……家庭裁判の際、少年が非行にいたった原因を、本人、保護者、成育歴、環境といった側面から調査する仕事。

「本人」「家庭環境」だけじゃない。犯罪が起きる3つ目の要因

――犯罪は、「本人の資質」と「環境」のどちらが原因になることが多いのでしょうか?

「答えとしては、『その両方』です。犯罪は、本人の資質×家庭環境×社会』という3つの要因が、かけ合わさって起こるといわれています。

本人の資質』とは、たとえば本人の知的能力や判断力、理解力、学習能力の問題があげられます。また、『粗暴傾向』『発達障害』といった先天的な傾向も資質面に入ります。

『家庭環境』の問題としては、親の『放任』があげられますね。たとえば、ひとり親の家庭で、生活が苦しく昼も夜も仕事をしている。すると、子どもが夜に寂しくなってフラフラと遊びに出かけてしまうのです。

親が困窮している場合は、『社会』が金銭的に負担すべきだと考えます。お金があれば、親は子どもと一緒に家にいることができるわけです。海外では、各家庭の養育費を政府が援助している国もありますね。

また、犯罪を未然に防ぐには、カウンセリングで悩みを聞く相談相手やソーシャルワーカーの働きによって、社会的支援につなげることも大事です。学校にソーシャルワーカーやスクールカウンセラーを置き、積極的にカウンセリングを行えば、犯罪を防げることもあるでしょう。こうした整備は実際に必要であり、その支援は『社会』の責任であると思います

家庭環境に恵まれていても犯罪は起きる

――高畑容疑者は家庭環境が恵まれているにも関わらず、今回の事件を起こしてしまいました。このように、家庭環境がいいのに犯罪を起こしてしまうことも珍しくはないのでしょうか?

「経済的に恵まれている家庭の場合、親の学歴が高いことが多く、子どもも勉強ができるように思えますよね。でも、実際には勉強がまったくできなかったり、知的能力や判断力、理解力、学習能力に問題が見られたりすることもあるわけです。

そんな時、親はどうしても自分と同レベルのことを子どもに期待しますから、『お前はやればできる』などと言う。でも子どもとしては、がんばっても勉強ができるようにならないから、自尊心が傷ついて非行に走る。このように、親が子どもの能力が見えていないことが原因になって、犯罪が起こってしまうことはあります。

あとは、スポーツだけはできていたが、ケガなどで辞めてしまったパターンですね。スポーツで目立てなくなってしまった子どもが、違う方向(犯罪や非行)で目立とうとする、という例はよく見られます」(熊上先生)

自尊心が傷つけられ、認めてもらえる環境を失った子どもは、悪い方向性で周囲に認められようと犯罪に走ることもあると熊上先生は話します。子どもが挫折しかけている際、親はその子の心情の機微に気づいてあげることが大切だそうです。例えばスポーツをケガで辞めなければいけなくなったときも、「それでもいいんだよ」と本人を認めてあげれば犯罪を防げることもあるといいます。

「少年犯罪」と「成人の犯罪」、親の影響範囲の違いは?

――今、伺ったお話は「少年犯罪」についてでしたが、「少年犯罪」と「成人の犯罪」では親の影響範囲に違いはあるのでしょうか?

「海外の犯罪心理学の研究によると、家庭環境のいい人が、大人になって犯罪を起こすことは、理論的にはそう多くないといわれています。そういう人が思春期に一時的に軽犯罪を犯すことはあっても、大人になると落ち着きます。たとえ、成人になって生活苦になり、窃盗をするようになったというような例の場合、親の責任とは言い難いでしょう。

一方で、親が子どもに虐待や放任を繰り返したことによって、子どもが犯罪を起こすようになってしまうパターンがあります。この場合、粗暴行為や万引きといった軽犯罪が幼少期に始まり、そのまま成人になっても犯罪傾向が続きます

今回の高畑容疑者の場合、小さい頃にどういう人だったかということはよくわかっていません。その点がクリアになれば、事件を起こしてしまった原因も明確になってくるのではないかと思われます」(熊上先生)

犯罪の責任は、誰か1人にあるわけではない

熊上先生にお話をうかがい、犯罪の原因を考える際は、責任を誰かひとりに押し付けるのではなく、「本人の資質」「家庭環境」「社会」といったさまざまな側面から考えなければいけないと感じました。

親は、どうしても子どもに期待をかけてしまいますが、一方で、本人の能力や現状をしっかりと見据えてあげることも、子どもを犯罪に走らせないための大切な第一歩になるのだと思います。

このような犯罪の背景を知ることによって、きっとみなさんも日ごろのニュースを見るときの視点が変わってくるのではないでしょうか。

【取材協力】
立教大学コミュニティ福祉学部助教 熊上崇先生

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