記事提供:Conobie

ケガや病気をした時に大泣きする子どもに対して、つい言ってしまいがちな「痛くないでしょ」のひとこと。今回は子どもの「痛い!」に込められたメッセージとその受け取り方について、みなさんと考えたいと思います。

「痛くないでしょ、泣かないの!」と言っていませんか?

子どものこんな姿、一度は見たことがあるはずです。予防接種を受けに行くと、注射をされる前から「痛い!痛い!」と大騒ぎ…まだどこにも注射してないのに!

熱を出して病院に連れていくと、ただでさえ機嫌が悪かったのに、診察室に入ってさらに号泣…今日はなにも痛い検査はないのに!

そしてそんなとき、ご家族の皆さんはついつい、

「まだ何もしてないのに泣かないの!」
「どこも刺してないから痛くないでしょ!」

という一言を言ってしまいがちではないでしょうか?

また病院だけではなく、子どもが転んで足を擦りむいてしまったときや、ちょっとケガをしてしまったときなど、日常の中でも「痛くないでしょ、大丈夫大丈夫。」という言葉で、子どもの気持ちを切り替えようとしたことがあるかもしれません。

きょうの診察室:「痛い“気”がするんだよね」

先日、大きい病院で手術を受けたことのある2歳のMくんが診察にきました。手術でひとまず病気は治ったけれど、外来に定期的に来なくてはいけないのです。今日はちっくんもほかの検査もない日。もしもし、だけの予定です。

診察室に入ってきたMくんの顔が、だんだんこわばってきました。聴診器を胸にあてたとたん…ぎゃーーーーー!!!!!と手足をバタバタして逃げようとします。

お母さんは困った顔で大泣きしているMくんを後ろから抱き押さえ、「もしもし(聴診器)だけだよ!なんにも痛くないでしょ!」と言います。

そんなお母さんの言葉を聞いてか、Mくんはさっきよりも激しく泣きだしました。お母さんも必死の形相で、「もう、どこが痛いの、ほら、先生もしもしが聞こえないよ!すみません…」とさらに強くMくんを押さえます。

泣いている子どもに「痛くないでしょ」という言葉。診察室ではおなじみの光景です。
そんな時、私は決まってそのやりとりは聞こえないふりをして、「そっかー、痛い“気”がするんだよね」と声をかけながら診察をするようにしています。

その日も「そっかー、Mくん、痛い気がするんだよね。がんばってるね。」とMくんに繰り返し声をかけながら診察を続けていたのですが、しばらくするとお母さんの様子に変化がありました。

お母さんはハッとした顔をして、「そうか、痛い“気”がするのか、そうだね。」と、言って、Mくんの顔を覗き込んだのです。Mくんは変わらず泣いていて上の空。それでもお母さんは膝の上のMくんに話し続けます。

「そうかぁ、だからね、泣けるよね。痛い気がね。いっぱい痛い思いをしたもんね。お母さんも、その時は、泣けたのよ。Mが手術に行く時ね、泣けたの…。」

お母さんの抱き方が、押さえる感じからぎゅっと抱きしめる感じになって、声が優しくなったからか、Mくんもだんだん落ち着いてきます。

そんなお母さんに向かって、「お母さんも、Mくんの手術のとき、こころが痛かったんですね」と声をかけると、「そうです。そういうことだったんですね。」と言いながらMくんをとても優しく撫でるので、今度は私が泣きそうになりました。

Mくんはきっと、手術に際して病院で、たくさんの痛い経験に耐えたのでしょう。もう二度としたくないことも、あったのかもしれません。痛い思い出があると、自分の体が傷つかなくても、痛い気がするのです。

そして、子どもが痛いと、お母さんも痛い気がするのです。

「痛い」で気持ちを表現した子どもを認めてあげよう!

「痛い」という言葉には、いろんな意味が込められています。本当は、体ではなくて、心が痛いのかもしれない。これから痛いことがあるんでしょ?という不安を伝えているのかもしれない。

子どもは、限られた語彙の中で、一生懸命自分の想いを伝えようとしてくれています。一番近くにいる大人が、それを受け取ること。それが子どもに安心感を与え、もっと伝えたいという気持ちを育むことにつながると、私は信じています。

「痛い“気”がしたんだね。伝えてくれてありがとう。」

明日から、そんな風に声をかけられる大人でいれたら、いいですね。

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