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2010年に「人間活動に専念したい」という理由から、芸能活動を休止していた宇多田ヒカルさん。2014年に結婚、2015年には出産し、ついに6年ぶりに活動を再開しました。

そんな喜ばしい発表の最中、夫が無職であると一部で報じられたことに対して、宇多田さんがあるツイートをしたのです。

共働き家庭は増えているものの、未だに「夫は外で働き、妻は家庭を守る」という考えが根強い日本。その考えに対し、宇多田さんはこのツイートで「非論理的である」とバッサリ斬っています。

では、実際に妻が外で働き、夫が家庭を守っているご夫婦はどう感じているのでしょうか。

独自の切り口で取材調査をする「ソコ行く!?ソレ聞く!?取材班」が、秘密結社・主夫の友のメンバーで専業主夫の佐久間修一さんと、奥様のきよこさんにお話を伺いました。

出典Spotlight編集部

佐久間さんご夫妻は、修一さん(49歳)、きよこさん(41歳)、息子さん(4歳)の3人家族。現在、きよこさんはグラフィックデザイナーとして働き、修一さんは主夫として家事と育児をメインで担っています。

仕事にやりがいを感じていたお二人

修一さん(以下、修一):結婚当初は共働きでした。僕は当時システムエンジニアとして働いていて、管理職への昇格試験に合格し、結婚しても不安がないと考えていました。

ですから“当然のように”妻が妊娠・出産したら、妻に仕事をセーブしてもらって育児を任せるつもりでした。とはいえ、当時妻は23歳と若かったこともあり、数年は子どもを作らず夫婦で過ごそうと考えていました。

きよこさん(以下、きよこ):デザイナーという職業に面白みとやりがいを感じていたので、結婚した当初から仕事を辞めることは一切想定していませんでした。

また、結婚当時フリーランスとしてスタートしたばかりでしたから、なおさら仕事をやめるなんて考えていませんでした。

結婚直後に修一さんが病に倒れる

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共働き夫婦としてスタートした佐久間さんご夫妻ですが、結婚からわずか3ヶ月後に修一さんが病に倒れてしまったのです。

修一:結婚してすぐに難病が発覚しました。医師から宣告された瞬間に考えたのは「死ぬこと」です。管理職への昇格試験に合格した矢先だったのに、完全に先を断たれてしまった思いになりました。

そこから3ヶ月でどんどん悪化し、退職を余儀なくされ、妻にも離婚を申し出たのです。

しかし、妻は一蹴し「それなら家にいて、体を労わりながら家事をできる範囲でやってくれればいいから」と言われ、最初は渋々でしたが逆転夫婦の生活に入りました。

きよこ:病気がわかった時、まずは主人の体調の心配が先に立ち、生活をどうしよう?という発想は後回しだった気がします。

病気が発覚してすぐの症状としては、発作時に肌を刺すような痛みが走り、主人は七転八倒していました。肺にも痛みがあり、辛そうでした。薬の副作用で免疫力も低下し、主人は発作が怖くて電車も乗れなくなってしまったんです。

この頃を象徴する主人の言葉は「大丈夫?って言うな!!!」でしょうか…。私としては心配する気持ちからの言葉ですが、本人にとっては「大丈夫じゃないから言わないでほしい」という切実な訴えでした。

経済的にはフリーランスでしたので収入は安定せず、派遣でも仕事をしていました。決して稼げている状況ではなかったと思います。

23歳、女1人で夫を養う

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かくして23歳で大黒柱となったきよこさん。ご自身の給料だけで生活していくことに、不安はなかったのでしょうか?

きよこ:とにかく必死だったので、プレッシャーよりも毎日のことで手一杯だったかもしれません。しかし、仕事で成果を出し、収入が上がることはやり甲斐がありました。

当時は金銭面が大変でしたけど、夫婦で過ごす時間は辛い思い出よりも楽しいものでした。

女性は結婚や出産で家庭に入る選択肢もありますが、私は働きたくて働いているのでずっと働き続けることに対して不安はありません。世の大半の男性と同じで、むしろ働けなくなることの方が怖いです。

なので、「子ども」という課題に対しても生活、仕事、主人の体調、すべてが安定して初めて取り組むことができました。それまでは、妊娠・出産の期間は生活の基盤を失うリスクがあるので、とても考えられませんでした。臨月中も仕事をしていましたし、産後は2ヶ月を待たずに仕事に復帰しました。

働けなくなることは、生活の基盤を失うことにも繋がりますから、妊娠・出産の期間は収入が途絶えても大丈夫なように蓄えをして臨みました。

主夫になった修一さんに、義両親が言ったこと

今でこそ主夫が認知されるようになりましたが、佐久間さんが主夫になったのは今から20年近く前のこと。周囲からどんな風に受け入れられていたのでしょう?

修一:主夫になった当時は、世間からの風当たりがかなり厳しかったです。そのため、最初の頃はスーツで家事をしていたんです。

特に厳しかった例は、スーパーに買い物に行けばご近所の奥様方が、遠巻きに僕を指差しヒソヒソ話をするとか…。

他にも定年退職されたと思しきご近所の男性に、昼間家にいて何をしているのか問われたので、主夫だと告げたら「ごくつぶし」と言われたこともありました。

なにより妻のご両親の風当たりが一番辛かったです。定年退職された義父が、突然自宅に来て「まだ働かないのか?」と聞かれた時は、本当に返答に困りました。

きよこ:私は、単純に「大変だね」という同情が大半だったと思います。「うちは夫婦逆転で」と話すと、それ以上あまり聞かれることはありませんでした。

もちろん、主人が色々と言われたことについては憤慨しました。しかし、特別なことはしていません。悪質な嫌がらせを受けたわけではないので、気にしないように言いました。

何も悪いことはしていないのだから、自信をもって生活して欲しいと思ったのです。とはいえ、実際は自宅にずっといる主人が心安らかに過ごすことは、大変だったと思います。

お子さんはパパっ子?

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佐久間さんのお宅では、お子さんと過ごす時間が多いのは修一さん。お子さんはパパっ子なのかについてもお聞きしてみました。

きよこ:息子の育児は、平日は主人の担当、週末は私ですが、両親が揃えば私にくっついていることが多いです。そこは産んだ特権!と安堵しますが、単に普段いない珍しい存在といたいとか、甘やかしてくれるから、かもしれません。

先日息子が描いた家族の絵は、中心にどーんと大きく「とーちゃん」がいて、四方に息子、私、祖父母が描かれていましたから、息子の生活に欠かせない大切な存在であることに間違いはありません。

それはとても健全な精神状態だと思うので、安心しています。

なぜ男性が働くべきという風潮が強いのか

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共働きが増えているものの、男性は働いていることが当たり前という考えは根強いです。では、なぜその考え方が根強いのか、佐久間さんご夫妻は次のように考えていました。

修一:難しいですね…いろんな要素が絡んでいるとは思います。もちろん今の日本社会の仕組みでは、相対的に男性の方が「収入が高くなっている」こともあるでしょう。

同じように大卒で入社し、同じ時間仕事をしていても、すでに「男女」で収入に差があることに疑問も感じます。仕組み上、男性が収入を得やすい状態では女性が外で働くことに抵抗を感じる人が多いのも、ある程度わからなくもないです。

あとは知らないうちに「バイアス」がかかっていると思われるようなことが、メディアでの発言であることも背景にあるのではないでしょうか?

たとえばスポーツ選手が活躍すると、「奥様の内助の功が…」などと発言されるケースは、妻は夫に従うもの、つまりは働かずに家事・育児をするものという印象を、さらっと植えつけているのではないか、と感じることがあります。

きよこ:高度経済成長期の悪習慣の名残りや、昔のホームドラマの影響でしょうか。仕事、家事、育児を分業ととらえず、夫婦の共同事業ととらえるならば、夫婦でシェアするのが最良だと考えます。

男女の違いを、足りないところを補い合う存在と考えるべきなのに、思い込みや決めつけの押し付け合いになっているのではないでしょうか。

実際、女性が働くことに対して、社会的な承認を得づらいと感じたことがあります。それは、私の名義で個人事業主の単独住宅ローンを通すことにかなりの年月を費やしたからです。

逆転夫婦になろうと考えるカップル、主夫を目指す男性へ

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最後に同じようなライフスタイルを検討しているカップルや、主夫志望の男性へメッセージをいただきました。

修一:あまり参考にならないかもしれませんが、自分の考えも相手の考えも全部テーブルに出して、ちゃんと話しができる関係を作ることが必要なのではないかと思います。

一番残念なのは、自分勝手な思い込みで行動や発言をすることではないでしょうか。収入の高い低いだけでは、大黒柱であるかどうかの物差しにはなりません。

きよこ:根本的に「大黒柱」という言葉がすでに男性的な象徴になっていて、そこがすでにハードルになっているのではないでしょうか。今時は男性でも敬遠する表現のように思います。

「大黒柱=責任を負うこと」というイメージで、女性がその立場になる(宣言する)のは状況的にならざるを得ないケースというネガティブな印象もあります。

ですから、仕事が好きで続けたい。そのためにパートナーの協力が得られる場合に存在する選択肢としてあってほしいです。

逆転夫婦に限らず、好きでなければ続けることは困難ですし、支える側も犠牲になって…では、決して続けられません。お互いを尊重し、双方がハッピーになれる選択肢として頭の片隅に置いていただければいいと思います。

<取材・文/横田由起>

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