「あれ?先輩…?お久しぶりです!」

「おぉぉ。田中だよな?出張先のカフェで会うなんて、すごい巡りあわせだ」

光の種、行きつけなんですよ。酵素玄米ごはんがおいしくて。高知でお仕事があるんですか?」

「うん。地方創生文脈で、いろいろと企画を進めていてね。故郷の高知で自由に仕掛けてくれと、会社から言われて」

「そうですか!もしよければ、たまに飲みましょうよ。迷惑かもしれないんですが、いろいろと相談したいことがあって…」

「おぉ、いいよいいよ。出張といっても、ミーティングが終わっちゃえば予定は詰まってないし。今も自分のブログ書いてただけだし、このまま話す?」

「え、いいんですか。すみませんお忙しいのに…」

「お役に立てるかはわからないけどね」

「相談というか、悩みなんですが…」

「仕事の?」

「えぇ」

「今は地方銀行だっけ?」

「そうです。地銀で働いてます」

「仕事は楽しい?」

「…楽しいかと言われると…あんまり向いてないかなぁ、と思ってます」

「そうなのか」

「でも入社して2年じゃ転職も難しいし、どうしようかなぁと」

「向いてないというのは具体的にどういうあたりが?」

「営業なんですよ、自分」

「そうなんだ。サークルでは経理だったよね」

「よく覚えてくださってますね。もともと数字に関わる仕事がやりたかったんですが、今はがっつり営業に回されてしまって…」

「あぁ、そりゃ向いてないよなぁ」

「ですよね!」

「向いてないと思うことをやらされるのは、辛いよね」

「そうなんです。上司からは『お前はやればできる』と言われて、育ててくれてはいるんですが、やっぱり向いてないものはどうしようもない気がしていて」

「会社辞めたほうがいいね」

「え?」

「いや、さっさとやめなよ」

「そんな、簡単にいいますけど…」

「奨学金とかあるの?」

「はい。まだ300万円くらい…」

「300万。それくらいなら、なんとかなるよ(笑)」

「えぇぇ」

「俺に相談するというのは、そういうことでしょ?(笑)」

「そういえばそういうキャラでしたね」

「辞めたほうがいいというのはさ」

「はい」

「その会社は、君の弱みを克服させようとしているわけだよ」

「普通じゃないですか?」

「昔の会社ならね」

「どういうことですか?」

「じゃあさ…経営者目線で考えると、なんで弱みを克服させたいんだと思う?

「そうですね…優秀な社員を増やすため?」

「それは違うね」

「そうですか?」

「だって、弱みが克服されたって、それはマイナスがゼロになるようなものじゃない。人材として大きなプラスにはならないよ」

「まぁ、たしかに…」

「経営者たちは、代替可能な人材がほしいんだよ。だから、弱みを克服させたがる」

「代替可能?」

「弱みがある人間というのは、使い回すのが難しいんだよ。だから、克服して、人並みになってもらう。人並みになれば、誰かが抜けたとしても、穴を埋めることができる」

「パーツが壊れたときに、代わりのパーツになれるようになってもらう…ということですか?」

「そうそう。歯車だね」

「嫌ですね」

「弱みを克服すればするほど、君は歯車に近づいていくんだよ。そうして50歳くらいになって、使えない人材になって、絶望する」

「うーん…」

「じゃあその逆に、強みを伸ばすことを考えてみようか」

「弱みの克服を諦めて?」

「そうそう。諦めるというのは、とても重要だね。強みを伸ばすと、どうなるかわかる?

「弱みはそのままで、強みが際立つ…その弱みは、他の誰かがカバーしてくれそうですね」

「まさに。わかっているじゃない」

「ぼくらがやっていたオーケストラも同じですよね。すばらしい奏者に欠点があったとしたら、それを指揮者や他のメンバーがうまく補っていくという感じだったなぁ、と思って」

「それは会社でも同じなんだよ」

「そう考えたことはありませんでした」

「ほんとうは、だからこそ、会社という組織をやっているはずなんだけどね。でも、相当に気をつけて運営しないと、平均的な人材を求めるようになる。そのほうが管理もしやすく、欠員が出たときも回しやすいから」

「でも、それなら会社をやめなくてもいいんじゃないですか?今の会社で自分の強みを伸ばせばいいわけであって…」

「無理だよ」

「えぇぇ」

「無理だね。これは会社の思想、仕組みの話だから、君が今所属している会社じゃダメだよ」

「そうですか…」

「『弱みを諦めて受け入れる』というのは、組織のデザインの話なんだよね。良い上司が一人いれば実現できるわけではない。組織の頭から尻尾まで、『弱みを捨てて、強みを活かす』というデザインが貫かれている必要がある」

「そうですね。うちの会社はそういう方針じゃなくて、むしろ減点方式です」

「マイナスを数えるような文化の会社はダメだね。強みを伸ばす方向に行けない」

「そういう文化の会社を探さないとダメなんですね」

「そうだね。ベンチャー企業は比較的、強みを伸ばす文化があるかな。ベンチャーに強いヘッドハンティングサイトの『Switch.』あたりに登録すればいいんじゃないかな。登録しただけじゃ何も進まないけど、まずは手始めに」

「じゃあ、今登録しておきます」

「そのスピード感はいいね」

「言わずもがな、強みを把握することも大切だね」

「どうすればいいんですか?」

「『ストレングスファインダー』やった?」

「あぁ、大学でも一瞬流行ってましたね。実はやってません」

「新品の本を買えばできるから、やっておくといいよ。あれはよくできてるわ」

「Amazonで買いました」

「あとは無料でできるものだと、『グッドポイント診断』とか?」

「これですか」

リクナビネクストに無料登録するとできるよ」

「これも試してみます」

「思うに、君の強みは『行動力』じゃないかな」

「そうですか?」

「いや、けっこう動きが早いじゃない。大学時代もそうだったけど、打てば響くというか」

「嬉しいです」

「僕はお世辞とか言わないから、信用していいよ(笑)」

「行動力ですか」

「うん。ほとんどの人は、すぐできることでも、すぐにやらないからねぇ。その積み重ねで差ができていくのに」

「すぐできるならやった方がいい、とは思いますね。だからこそ、苦手なことをやらされるのが辛かったりするんですが…」

「苦手なことはやる気も出ないし、そもそもうまくできないしね。せっかくの行動力が発揮できない」

「あぁ、そうなんです」

「よくあるよ」

「行動力が強みなのに、それが死んでいたというのは、しっくり来ます」

「それはよかった。まぁ、環境を変えることから始めるしかないんじゃないかなぁ。実家もあるわけだし、一度会社を辞めてゆっくりすれば?」

「まぁ、そうですねぇ…たしかにアルバイトしながらでも生きてはいけます」

「高知だとイケダハヤトさんもアシスタント探しているとか書いてるし」

「あぁ、あの本山町に住んでる変な人ですか(笑)よく知らないので、とりあえず書籍でも読んでみます」

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