記事提供:おたぽる

出典「日本酒ものがたり」公式サイト

大戦中の艦艇やお城から、日刀まで“擬人化”され、ゲームのキャラクターとして人気を博したり、手広くグッズ展開されたりする今日この頃、とうとう日本酒を擬人化するプロジェクトが登場と話題になった、株式会社オルトプラスが展開する日本酒キャラクター化プロジェクト「日本酒(にっぽん・さけ)ものがたり」。

擬人化のモチーフとなった日本酒(=「ShuShu」)たちは、都市部のスーパーやコンビニで手軽に購入できるものから、蔵元のある地方や通販などでないと入手できないものまで顔を揃え、

イラストを担ったクリエーターたちも、松本零士や美樹本晴彦といった大御所の名前もあれば、ヤスダスズヒトやjitariといった今をときめくクリエーターの名前もあったりと、やけにバラエティーに富んでいる。

マンガやアニメの人気キャラクターがラベルに採用されるのは、今や珍しいことではないが、ありそうでなかった“日本酒の擬人化”というプロジェクトは、今後どう展開していくのか。

オルトプラスといえば、国内著名IPを利用したゲームアプリの開発・運用で知られるが、「日本酒ものがたり」もいずれはゲーム化するのだろうか?

日本酒と、ゲームや“擬人化”美少女&美少年キャラ、両方が好きという人にはなんとも気になる「日本酒ものがたり」は今後どんな展開を考えているのか。プロジェクトを手がける株式会社オルトプラスに直接聞いてみた!

萌えで括らず、しっかりとお酒の特徴を立てた擬人化に

―― まず企画を発案されたのにはどんなキッカケがあり、今回発表されるまでにどんな経緯をたどられたのか、教えてください。

上野(マーケティング&インテグレーション部) わかりやすく言うと、うちの会社の上のほうに、日本酒が大好きな人間が何人かおりまして(笑)。正直、「日本酒で何かやりたいよね」という話が発端です。

そこに、社内から“酒を元気にしたい!”有志が集まって半ば部活のように始まりました。キャラクターを発表するまでに、大体1年半ぐらいかかりましたが、どういうキャラだったら受け入れられるかを考えながら、

今はとりあえず“キャラクター化プロジェクト”とあるようにキャラクターを増やしていくことをメインに考えています。

―― まずは蔵元さんたちに企画を説明し、キャラクター化の了承を得るという作業を、1年半進められたわけですね。

上野 そうですね。主旨をご説明し、了承いただいて、各作家さん方に作業に入っていただく、ということを繰り返していました。

―― 蔵元さんに“キャラクター化”という企画の主旨を説明するのは、ご苦労があったのではないですか?

上野 いえ、そこは思ったよりスムーズだったんです。各蔵元さんのトップを務めてらっしゃるのは30代半ば~40代ぐらいの方が多く、かなりご理解していただけました。安易に“萌え”で括ることはせず、ちゃんと作家さんを立てつつ、お酒もしっかり立てるという企画でしたから、話しやすかったです。

高山妙

―― そもそもの質問で恐縮ですが、キャラクター化された日本酒はどうやって絞っていかれたんですか?

上野 基本的には、「やりたい!」とおっしゃってくれた蔵元さんから一緒にやらせてもらっています。最初にできたキャラクターは高山妙(特別純米 妙高山/妙高酒造)なんですが、妙高酒造さんに、蔵元さん同士の横のつながりを生かし、プロジェクトを紹介していただいたのも大きかったです。

中には個人的な想い――スタッフの地元だったり、思い入れのある蔵元さんにアタックさせていただいたケースもあります。

各キャラに、お酒の持つ情報をできるだけ詰め込みたい!

―― マンガやアニメのキャラクターをラベルに採用するような“萌え日本酒”は結構存在します。“萌え日本酒”とは、どう差別化を図られているのでしょうか。

吉田淳(ゲーム事業部/以下「吉田」) 蔵元さんとお話しさせていただいて、お酒がどんな種類で、どんな味わいなのかをヒアリングし、このお酒の特徴を表現するのであれば、こんな作家さんが合うだろう、「このお酒がどういうお酒であるか、またそれをどう表現するか」ということを、まず考えています。

どう差別化を図るかというより、お酒の特徴をしっかりとキャラクター化し、個性を表現できれば、埋没しないのではないかなと思っています。

上野 アルコール度数や精米歩合といった数字も、キャラクターに落とし込むようにしています。各キャラクターのプロフィールも、お酒のプロフィールをベースにしているんですよ。

各キャラの年齢=生まれ年は蔵元さんの創業年になっていたり、キャラの好きな食べ物も、蔵元さんオススメの“飲むときに肴として一緒に食べると美味しいもの”。各キャラは可愛い、格好いいだけでなく、お酒の持つ情報をできるだけ詰め込みたい。

これから登場してくるキャラの中にはもしかしたらマッチョなキャラもいるかもしれませんし、ハイテクな製法を駆使したお酒を表現するときには、体の半分ぐらいロボットのようなキャラだって出てきてもおかしくないと思うんですよ。

―― 日酒は歴史が古いですし、蔵元がたくさんあり、各蔵元さんの中でも種類が多く、それぞれ味が違う。アルコールの中でも、キャラクターを立てやすいタイプといえるのかもしれませんね。

上野 そうですね、我々のキャラクターはよりそのお酒の情報を発信できるように寄せています……日本酒のラベルは漢字が主体で、シンプルで格好いいんですけど、一方で日本酒の知識がある程度ないと、そのお酒がどんなお酒なのか、なかなか想像がつかないという一面もあると思うんですよ。

―― 日本酒を飲みなれていれば、蔵元さんの名前や地方で方向性が想像できますけど、飲み慣れていない人にとってキャラクターが重要になってくるわけですね。

奥ノ松爽和

吉田 単純にキャラクターが優しい表情なら、飲み口も優しい感じなんだろうな、男性のキャラクターなら、男性が好みそうな味なのかな、など。そういったところまでキャラクターに落とし込まれている事が、さきほどの差別化にも繋がってくるのだと思います。

例えば「奥ノ松爽和」(奥の松 純米大吟醸 スパークリング/奥の松酒造)というキャラは発泡日本酒(発泡清酒)なんです。髪の毛の色が青色だったりするのも、爽やかさやシュワシュワ加減を表現するためだったりするんです。

上野 キャラが古風な感じではないのも、製法に新しい技術を取り入れたりしているからです。

左:八朔、右:明利

―― 逆に「八朔」(船中八策/司牡丹酒造)は男らしく描かれていますね。

吉田 そうですね。可愛い女の子や萌えキャラクターだけにせず、男らしいキャラを入れていったのも、萌えばかりに絞ってしまうと「可愛いね」だけで終わってしまいます。

辛口の男性的な飲み口のお酒も多いですし、古い歴史を持つお酒を表現するのなら、おじいちゃんっぽいキャラがいてもいいと思うんですよ。

―― 逆に「副将軍」が水戸黄門に引っ張られず、「明利」(明利酒造)という美少女になっているのもいいですね。

上野 これは蔵元さんからもお話があったんです。副将軍だから水戸黄門となるのではなく「傾奇者」にしてほしいと。ですから美樹本(晴彦)さんに思いっきりやっていただきました(笑)。

各キャラクターを作っていくとき、ベースになるプロフィールをかなり細かく作るんですよ。女の子で優しげな性格で、とか。

徳利、日の丸などが仕込まれたロゴ。

―― ゲームが動いているわけでもなく、日酒のイメージとキャラクターたちの融合みたいなところは、「日本酒ものがたり」上で表現するのも大変だったのではないですか?

竹市綾香(デザイナー/以下「竹市」) サイトはこれから日本酒を知ってもらいたい方に向けて作っていますが、野望として、日本酒を全く知らない外国の方にも、日本酒の良さを伝えられればと。

HPのデザインやロゴに関しても日本酒を、例えば「日本」という文字の日の字は徳利を意識しつつ、日の丸など、海外の人でもわかりやすい日本のイメージを、随所に落とし込んでいます。

―― これはキャラクターももちろんですが、日本酒のラベルがもともと、格好いいですよね。サイトやロゴもラベルを意識した部分はありますか?

竹市 格好いいですよね、デザインとしてもすごく優れていて。ただ、これだけたくさんのキャラクターがいますし、今後も増えていきます。どんな濃いキャラクターにも合わせられて、なおかつ蔵元さんのイメージを崩さないように心がけました。

あくまで各蔵元さんのお酒、各キャラクターの個性をしっかり表現したいなと。ちなみにサイトでは「日本酒」と漢字で表記して「にほんしゅ」ではなく「にっぽん・さけ」と読ませていますが、これは海外では日本酒が「サケ」や「ジャパニーズサケ」と呼ばれていることにあやかりました。

「俺の好きなお酒が入ってない」という人も、今後に期待していただきたい

―― キャラクターの性別などは、蔵元さん主導なんですか?

上野 ご意見を参考にしつつ、という感じです。また、そのお酒が実際男性・女性どちら向けなのか? 蔵元さんがお考えになるターゲットなんかも考慮して決めていっています。中には双子キャラにしてほしいなんて要望もいただきまして。

それは同じ名前だけど、製法が異なっていて、味わいも違うというお酒でして。

―― それが日本酒の難しいところですよね、同じ名前を冠していても吟醸、大吟醸、本醸造、純米といろいろありますものね。

3姉妹化が楽しみな澄上野そうなんですよね。ただ現段階では、1蔵元1銘酒ということでまとめさせていただいてます。例えば小玉醸造さんだと、ブランド名は太平山です。その太平山の中から「純米吟醸 澄月」というお酒を、今回は「澄」というキャラクターにさせてもらいました。

実は太平山には「月」が付く銘柄が3種類あるんですよ。いずれは3姉妹に……という想像も膨らみますし、キャラのプロフィールでもにおわせています。

3姉妹化が楽しみな澄

―― 蔵元さん方に、キャラへの愛情を持ってもらえるのはうれしいですね。

上野 高山妙の場合などは、キャラ完成前から妙高酒造さん内でニックネームとして「たえさん」が定着しており、そのまま決定となりました。制作時に蔵元さんにヒアリングを行うんです、社長さんや広報の方だけでなく、お酒を造ってらっしゃる杜氏さん方にまで。

皆さんの思い入れをしっかり聞いて寄り添っているので、キャラ化させていく段階で杜氏さん方もますます愛着がわいてくるのか、「娘のように感じてきました」なんてご意見をいただいてます。

吉田 キャラクターとして完成に近づいてくと、「やっぱりうちの子、可愛いですね」とか、「うちのお酒のイメージを絵にすると、きっとこういう感じですよ」などおっしゃっていただいたり、すごくうれしいですね。

柚莉

―― 12人のキャラクターに続き、「柚莉」(純米大吟醸 武蔵野/麻原酒造)も追加発表されました。ただ、「俺が好きな酒がいねーじゃーねーか!」という人もまだ多いのではないかと思います。

上野 今も交渉中という蔵元さんも多いですし、公開後にお問い合わせをいただいてます。基本的にはキャラクターを作り続けていかないといけないコンテンツだと思いますから、そこは頑張っています。

―― 逆に「このお酒は個人的に好きだから狙っている」というお酒はありますか?

上野 それはありますよ! まだキャラが一体も完成していなかった当時、某有名蔵元さんは、キャラを作るということで、子どもや美少女キャラを作ると思われたそうで、アルコールと子どもという組み合わせはマズイのではと、お断りになられたんです。

でも今回、著名なお酒、蔵元さんに多数参加していただいて、多様なキャラたちを公開できたので再交渉もできると思います。「俺の好きなお酒が入ってない」という方にも、今後に期待していただきたいですし、

もしよろしければ蔵元さんに「こういったプロジェクトがあるみたいですよ」と、意見を寄せてほしいです(笑)。

吉田 社内からも、「俺の地元のあのお酒は入ってないの?」とよく言われます(笑)。

上野 僕も地方出身なんですけど、やっぱり地方だと蔵元さんの存在感って大きいじゃないですか。少し知り合いの知り合いぐらいまで広げて探してみると、どこかでつながっていたりします。

―― これは聞いておかねばと思います。やはりゲーム化も視野に入っているものですか?

上野 ゆくゆくは、という野望はあります。ただ、ゲーム化前にもっとやれることがあるのかなと思いますし、ゲームにするとしても一体どういうゲームにすればいいのか? というのが大前提としてありますし。

―― 単純に戦うのとは絶対に違いますよね。

上野 蔵元さんからも「よそのお酒と戦ったりするんですか? それはちょっと……」といわれたりもしました(笑)。大きな仮想敵が現れて、皆で団結して戦うのならいいかもしれませんが……

これはあくまで僕個人の私見なんですが、『桃鉄』(『桃太郎電鉄』)みたいなゲームなら、と考えています。日酒って各地方に根差しているものですから。単純なバトルものよりも、そういうゲームのほうがいいのかなと。

―― 現時点でかなり広範囲、青森から高知まで広がっていますものね。

上野 そうですね。将来的には、最低一都道府県に一キャラクターは用意したいです。

吉田 今回の企画では、「日本酒ものがたり」と銘打っていますが、日本のお酒が海外にも広がったり、ブームになっているというのもあります。日本酒自体、そもそも長い歴史を持っているものですから。

それを伝えられるようなものにしたいですし、ゲームも作るならそういうゲームにしたいですよね。

―― 動いてしゃべるところを見ることができたら、ますますキャラも好きになれそうですから、期待したいです。

上野 これは別に他作品に比べてどうこうというわけではないんですが、他の擬人化企画と比べて、「日本酒 ものがたり」ではキャラにハマッた後に、そのお酒を飲んで楽しむことができるのが大きいと思います。

―― どんなにそのキャラが好きになっても、艦艇に乗れるわけでも、著名な日本刀を持てるわけではないですものね。

上野 博物館などに行って実物を鑑賞まではできても、レプリカを買うまでのことしかできない。でも日本酒の場合は長いもので400年以上の歴史を持っていて、なおかつその歴史を受け継いで今でもお酒を造り続けている人がいて、それを飲める。そこは大きいんじゃないかなと。

いずれは展示会や試飲会、皆でキャラを愛でながら飲める機会も

―― ただ、今回のお酒たちの中には、住んでいる地方によってはなかなか入手しづらいお酒もありますよね。

上野 イベント的なもの、お酒の展示会や試飲会などもやってみたいですね。クリエーターさんにも日本酒好きな方が多いですし、キャラクターを愛でながら皆で飲める機会があるといいなと。

追加の新キャラクター発表予定もありますし、現在いろいろと仕込んでいますので、楽しみにしてほしいです。仕込みといえば、スマホで見るとARでラベルの横にキャラクターが浮かび上がって見える、といった仕込みをしていたりもします。

お店でいろんなお酒が並んでいる中で、「キャラが出てくるお酒はないかな?」と探してくれたりすると楽しいじゃないですか。もともと、各お酒のラベルの完成度が高いですから、キャラを作ったからといってそのキャラでラッピングすることが必須ではないのかなと。

吉田 キャラクターを作って終わりというのではなく、日酒が好きな方々をはじめ、ゲームやアニメ、マンガが好きという方にも、日本酒の良さをわかっていただけるように、今いろいろと仕込み中です。楽しみにしていただければと思います。

―― 了解しました。では最後に、今後の展開に期待している方にメッセージなどいただけますか?

竹市 ユーザーさん的に入り口が2つあると思うんですよ、日本酒が好きな方たちとこういったゲームとかアニメ的なキャラクターが好きな方たちと。両方好きという人もいるでしょうが、全然かぶっていない人もいるでしょうし、ターゲットが広いコンテンツだと思います。

広いターゲット層にどうやって伝えていくのか、デザイナー的には悩みどころでしたが、和洋折衷というか、両方の層の方々へ刺さるものを作っていけたらなと思います。

―― 日本酒自体も和洋折衷じゃないですけど、懐が深いという、色んな食べ物に合うお酒ですから、色んなデザインが試せそうですよね。

上野 蔵元の方に、「このお酒に合うオススメの食べ物は?」と聞いたら、「マルガリータピザ!」といわれて、驚いたことがありました(笑)。

吉田 私はイラストのディレクションを担当しているのですけれど、蔵元さんからヒアリングしてきた各日本酒の特徴を、どうやってイラストに落とし込んでいくか、作家さんにどうやって伝えていくのか。

ここが一番大事なのですが、そこさえ上手くいけば、作家さんの筆のノリも良くなると思っています。それに、この企画に協力してくださっている皆さんが賛同、共感してくれているんですよね。

やはり日本酒という、日本の文化を広めていきたい、誇っていきたいというとこがあるというか。弊社内でも、色んな人が協力してくれて出来た企画なので、その輪を伝えていければと思います。

上野 この企画はモデルが実在する擬人化企画ですから、キャラを好きになってそのモデルとなったお酒を買うという、ゴールがちゃんとある企画だと思うんです。やっている僕ら自身も楽しいし、とても勉強にもなっています。

楽しんでやっているので、ぜひ一緒に楽しんでほしいし、我々も知らないようなお勧めの地元の蔵元さんを紹介していただいたり、この企画を蔵元さんに伝えていただけたりするとうれしいです。

公式サイト“日本酒ものがたり”
http://sakemono.com/

※未成年者の飲酒は法律で禁じられています。キャラにどれほど萌えたとしても、お酒は20歳になってから。妊娠中や授乳期の飲酒は、胎児、乳児の発育に悪影響を与える恐れがあります。お酒は楽しく、ほどほどに、飲んだ後はリサイクル。

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