コンビニエンスストアで展開されるシェア争いの実情を、食の流通やコンビニに詳しいライターの日比谷新太さんが、徹底レポートする当シリーズ。今回取り上げるのは、前回のエナジードリンクと同様に、近年売れに売れている「トクホのお茶」。コンビニで売れる商品つくりのためには、容器のサイズも重要な要素となってくるようで……。

トクホ飲料で売れ筋1位を誇る伊右衛門 特茶

伊右衛門(サントリー)、おーいお茶(伊藤園)、生茶(キリンビバレッジ)、十六茶(アサヒ飲料)、爽健美茶(日本コカ・コーラ)など、有力な商品がひしめき合うお茶飲料カテゴリー

健康ドリンクを取りあげた前回の記事でも少し触れましたが、コンビニエンスストアで扱う飲料の中でも、水・コーヒーと並んでよく売れているカテゴリーです。

そんなお茶飲料カテゴリーのなかで、一定のポジショニングを保っているのが特定保健用食品のお茶飲料、いわゆるトクホのお茶です。

これらは総じて高単価ですが、体脂肪がつきにくい、血圧を抑えるといった様々な効果があると公に証明されているため、健康を気にする中高年などの層から根強い人気を誇ります。

数あるトクホのお茶で、このところ不動の売れ筋1位となっているのが、2013年10月に発売された伊右衛門 特茶(サントリー)です。この商品がなぜ、これほどまでの人気を集めるようになったのでしょうか。

そもそもお茶飲料は、新しい商品が登場するたびに、TVCMの大量投下やコンビニ飲料棚の1段ジャックといった、大規模なプロモーションが行なわれるのが常です。これは新商品のPRのみならず、ブランド全体の売場定着や売上向上も図るという狙いもあります。

ただ、それによって商品ごとの差別化が進んだかというと、実際のところはそうではなく、TVCM効果により一時的に売上は上がるものの、CM終了とともに売上が低迷……という繰り返しでした。

とはいえ、プロモーションコストが大きく投下されない商品は、発売されても売れ筋順位の変化はあまり発生せず、いうなれば広告代理店の格好の餌食になっているカテゴリーなのです。

いっぽうで、伊右衛門 特茶が登場する以前のトクホのお茶ですが、ヘルシア緑茶(花王)、胡麻麦茶(サントリー)あたりが一定のシェアを握っていました。コンビニの飲料棚で考えますと、最上段に2フェイスは確保されている状態です。

そんななか伊右衛門 特茶が発売され、コンビニエンスストアにおけるお茶飲料全体の売れ筋は大きく変化しました。一般的なペットボトルのお茶飲料が147円でされているのに対し、184円と単価が高い伊右衛門 特茶ですが、実はこの売価設定もヒット商品となったポイントでもあります。

繰り返しますが、伊右衛門 特茶が発売されるまでのお茶系飲料カテゴリーは、マンネリ化(安定しているともいえますが)していました。コンビニ各店としても、たまに大型新商品が出れば、その新商品効果が持続している間は対前年で売上が伸びるので、きっちりと対応するものの、それ以外の時期は売上向上の策も立て難いといったカテゴリーでした。

そのような状況下で登場した伊右衛門 特茶は、高単価なうえに体脂肪を減らすのを助けるという効果が公に認められている、さらに消費者にとって親しみのある伊右衛門ブランドであるということで、コンビニの各店舗は一斉に飛びつき、売り場に並べたのです。

恐らくですが、もしこの商品が他のお茶飲料と同額の売価設定だったなら、ここまでのヒットにはつながらなかったと、著者は考えています。また、常飲することで効果が出るという、トクホ飲料ならではの飲用スタイルも、その後の売上の安定に繋がりました。

ヘルシア緑茶の売上が下がった理由とは

さて伊右衛門 特茶が登場するまで、このジャンルで独占的にシェアを握っていたヘルシア緑茶でしたが、最近では大きく売上を落としています。これは強力なライバル商品の出現が原因とも考えられますが、筆者の見立てでは自責も加わっている、という印象です。

伊右衛門 特茶の登場に対し、ヘルシア緑茶のほうもTVCMを積極的に流し続けるなど、何も手を打たなかったわけではありません。しかし、決定的なミスを今年起こしてしまいました。それは「容器変更」です。

これは容量こそ変わっていませんが、容器の形状をスリムなタイプに変更したもので、ニュースリリースによると「女性が手に取ってもらいやすくするため」と、その目的が書かれています。

ターゲットをこれまでの「おじさん」から「若い女性」に変更し、女性が手に取ってもらいやすく持ち運びやすくするために、スリムボトル化をすることは、マーケティング的には全く間違っていない手法です。

ところが、そこにはコンビニエンスストアならではの売場(棚割り)の考え方が欠如していました。それまでのヘルシア緑茶は350mlの小ペットで展開しており、コンビニ飲料棚の最上段で、きっちりとフェイスを確保できていました。

ところが、容量を変えずにスリム化すると、容器の高さは500mlペットボトルと同じ高さになるのです。この高さの棚は、これまでの定番飲料にくわえて、毎週発売される新商品も入り混じって、常にフェイス確保を繰り返しているという、競争が非常に厳しい場所なのです。

そんな売り場に、スリムボトルになったヘルシア緑茶が新規参入したわけですが、そこには既にボス格の商品に成長した伊右衛門 特茶も陳列されています。こうなると店舗側としては、儲けも他の商品よりも少ないヘルシア緑茶を拡販する意欲が減退してしまいます。

このため必然的に商品導入店舗も減少し、展開フェイス数も減少したわけです。以下の表は、ここ3年間のお茶飲料カテゴリーにおけるトクホ飲料の販売数(1店舗平均)を比較したものです。

このようにヘルシア緑茶のスリムボトル化は、マーケティング的なアプローチは正しかったと思いますが、「売場」視点の考えが足りなかったのではないでしょうか。今後スリムボトルをやめてしまうのか、それとも新ターゲットである若い女性への積極的なPRを続けていくのか。ヘルシア緑茶の戦略に注目したいです。

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