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昨今「格差社会」という言葉が声高に叫ばれるが、それよりはるか昔から鉄道にも「格差」はあった。『沿線格差 首都圏鉄道路線の知られざる通信簿』(首都圏鉄道路線研究会/SBクリエイティブ株式会社)には、首都圏の路線の格差がたっぷり書かれている。

確かに、中央線沿いに住んでいればハナタカに自慢できる。反対に、都営三田線に住んでいることを自慢しても「あー…その路線はどの地域を通っているの?」なんて眠たい返答がくるだろう。

本書は、まさにそんな「沿線格差」を体現し、「勝ち組」「負け組」でという形で区別してくださっている。首都圏の路線の情報もたっぷり載っているので、「負け組」沿線の住人には余計なお世話だが、首都圏の路線の「勝ち組」と「負け組」を紹介していこう。

勝ち組沿線 第1位 京急本線

本書によると、勝ち組沿線第1位に輝いたのが「京急本線」だ。「そもそも勝ち組の定義は何だ!?」と、プライドの高い中央線沿いの住人からクレームが聞こえてくるが、本書はもちろんカンタンな理由で決めていない。

「平均通過人員」「乗客増加率」「接続路線」など、9つにも及ぶ評価基準を勘案し、順位をはじき出している。それでも「しょせん速いだけでしょ?」なんてボヤく東急東横線の沿線住人の声が聞こえてくるが、構わず話を進めよう。

京急本線が第1位を獲得した理由が「遅延回数の少なさ」「混雑率の低さ」「増加乗客率の高さ」などにあるという。特に、運賃収入も乗客数も私鉄上位なのに、なぜ遅延回数が少ないのか。それは「行っとけダイヤ」のおかげだ。

これは、トラブル時、急行などが停車しない駅でも「とりあえず行けるところまで行っておく」という運行方法だ。指令など含め、鉄道社員が実力者ぞろいだからこそできる運行で、乗客のイライラを最小限にしてくれる。

遅延証明発行率10%という驚異の数字を誇るのだ。JR各路線はいずれも60%以上であることから、いかに安心して京急本線を利用できるかお分かりだろう。

また、2027年のリニア中央新幹線の開業による京急本線の価値の向上、JR東日本による品川駅周辺の大規模開発など、様々なポイントが加わっての1位獲得のようだ。ただ、唯一気になった記述がある。それが以下だ。

定時運行のための乗降時の時間短縮を目的としているのか、車掌のドアを閉める際のアナウンス、「ドア閉まります」が原形をとどめていない。例えば「ダァシャーリマス」など。

少なくとも「ドア」を「ダァ」というのはどの車掌も共通しているようで、0.01秒ほどの時間短縮に成功している。本書では大真面目に書かれているが、私には悪口にしか見えず、歯を食いしばって笑いに堪えた。

勝ち組沿線 第18位 西武池袋線

「やっぱりか…」そんな声が聞こえてきそうだ。勝ち組沿線第18位。本書のランキングで最下位。ぶっちぎりの負け組だ。その理由を確かめるべく本書を開くと…残念なエピソードが書かれていた。それは、西武池袋線が抱える過去にある。

本書によると、実は戦前から終戦直後にかけて、池袋線では都民の糞尿を埼玉の農地へ運び、都内へ戻る際には農村で獲れた農作物を乗せて運ぶ列車が運行されていたという。一部では糞尿を意味する「黄金列車」と揶揄され、田舎っぽいイメージが定着。

田舎である秩父へ向かうというのもイメージを加速させたそうだ。このイメージを払拭するべく、大学を誘致しようと大規模な開発を進め、町名並びに駅名も変えた「大泉学園」だったが、あえなく誘致に失敗。

なんだか救いようのない紹介になってきたが、最下位にもホメるべきポイントはある「緑のネットワーク」と称したステーション緑化事業だ。駅舎のみならず、駅構内、ホーム、隣接するショッピングセンター、至るところで緑化を試行しているという。

この「緑のブランド」が黄金色の過去を覆い隠してくれる日は来るのだろうか。

本書では、この勝ち組沿線ランキングの他にも、金持ちが住む路線や痴漢が多いとウワサの路線を検証したり、各路線の「鉄道歴史」を解き明かしたり、首都圏の鉄道事情を知りたい人にはぴったりの1冊となっている。

それでは最後に、上記でふれなかった勝ち組路線ランキング第2位から第17位まで、その路線の「あるある」と共に紹介して、記事を結びたい。

【勝ち組】

第2位 東海道線 トイレがついていてよかったとしみじみ思う

第3位 東急東横線 東武東上線と西武池袋線の乗り入れが憎い

第4位 小田急線 ロマンスカーが出っ歯に見える

第5位 総武線 津田沼行か千葉行かで帰宅プランを変える

第6位 中央線 酒を飲み、目が覚めると高尾駅同率

第7位 京王線 地下を抜けたあと、一斉にスマホを取り出す

同率第7位 京成線 カーブが多く、転びそうになる

第9位 京葉線 東京駅での乗り換えは避ける

第10位 東急田園都市線 東武線車両が来たとき少し損した気分になる

【負け組】

第11位 都営三田線 三田駅は三田線より浅草線利用者の方が多い

第12位 埼京線 下りで赤羽行が来たときの無念さ

第13位 東西線 主要駅では1ドアにつき駅員1人を配置

第14位 東武東上線 遊びや買い物の拠点が池袋になりがち

第15位 西武新宿線 座って帰りたいサラリーマン御用達

同率第16位 相鉄本線 都内で「相鉄線」という単語は通じない

同率第16位 常磐線 三河島の存在感のなさ

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