記事提供:おたぽる

来場者数53万人、今回も大盛況で閉幕した「コミックマーケット90」。メインは同人誌即売だが中でもメディア報道の多くが、華やかなコスプレ広場に集まる。

しかし、コスプレイヤー、カメラマンの交流の場であるコスプレ広場に、ここ数年異変が起きている。

■約2万人以上のコスプレイヤーが交流する場

まずコスプレの歴史を振り返ってみる。コミケのスタートは1975年。東京・虎ノ門「日消防会館会議室」で開催されたのが端緒になっている。

1978年の「コミックマーケット8」(会場・大田区産業会館)にてコスプレ参加者が現れ始め、以降コミケを中心にしたコスプレ文化が広がっていく。

『コミックマーケット40周年史』(発行:有限会社コミケット)によれば、2014年の冬コミ(C87)では3日間で27000人が更衣室を利用し、コスプレ衣装に着替えている。

▲カメラを構える高さ、レンズの向ける位置が低い(注:被写体のコスプレイヤー様は当記事と関係がありません)

▲目線なしはもちろん、カメラを構える高さ、レンズの向ける位置が低いカメラマンも…(注:被写体のコスプレイヤー様は当記事と関係がありません。以下同)

現在の会場は「東京ビッグサイト」であるが、更衣室にも近い「庭園広場」は開場1時間後には立錐の余地がないほど人で埋まる。まるで満員電車のような状態でコスプレカメラマン(以下カメラ紳士)は撮影するのだが、これもコミケの醍醐味といっていい。

いかに狭いスペースで、光の加減をみて綺麗に撮影するか──、これはカメラ紳士たちの腕の見せ所なのだ。

会場内には、カメラマンが撮影順を待つ「並び撮影」、コスプレイヤーを一斉に撮影する「囲み撮影」のいずれかの形ができ、マナー、ルールを守った上での撮影が行われていく。

「このキャラ、カッコイイですよね」「帰ったらお写真をTwitterで送りますね」という談笑や交流もあり平和的である。一部それにはずれた行動をとるカメラマンがいることは事実だが基本的には秩序がある。

■暴走する「偽りのカメラ紳士」

しかし、この1年「ローアングラー」と呼ばれる撮影マナーに欠いた人たちが蔓延りはじめた。彼らの特徴は、その呼称にもある様に、極めて低い位置にカメラを構え、コスプレイヤーの下着や局部のアップ写真、または動画を撮影することにある。

通常のカメラ紳士が取る構図ではない。体全体やバストアップ(表情)撮影はこのアングルではまず構えないからだ。一眼レフ使用者ならわかるが、レンズを最大限に伸ばして撮影する距離でもない。当然、コスプレイヤーの目線写真も交流も度外視。

コスプレイヤーやスタッフに注意されて、一旦は囲み撮影から去っても、すぐに同じ場所に戻ってくるような状況だ。

▲通常のカメラ紳士がビデオカメラを使うことはほぼない。ビデオカメラ所有がローアングラーの特徴の一つだ

また、服装も帽子やタオルでのほっかむり、サングラス、マスクなど、万が一写真が展開されても面が割れない様にしているケースが多い。

撮影されたと思われる映像や画像は個人で楽しんでいることも推測されているが、一部盗撮系サイト、投稿サイトに、有料で販売されていることも確認されていて、中にはパッケージ作品として全国のDVDショップで販売されている物もある。

そのリリース時期は非常に巧妙で、トラブル回避策なのかはわからないが、あえて1年後にリリースする業者もある。

もし被写体自身がモザイク無しで映像商品として発売されていることを確認しても、一般人であるコスプレイヤーにとって、どう抗議すべきかはわかりずらく、現実的には取り下げさせることは難しいだろう。

■「どう断るべきかわからなかった」

そもそも、これらローアングラーたちは、レースクイーンが登場するイベントや、カスタムカー関係のイベントなどでは十数年前から存在していたが、その流れがコスプレ界にも及んできたと考えるとわかりやすい。

カスタムカーイベントなどでは、コンパニオンを管理するスタッフがいるため、彼らがカメラマンを監視し、現場の統制をある程度とっている。

一方で、やや過激な衣装を着用させることでブースの集客や宣伝に繋げている側面もあるが、ここで間違えていけないのは、コンパニオンはギャランティをもらって稼働する「魅せる」集客のプロであり、「このアニメが好きだから」「コミケが好きだから」という純朴な気持ちでコスプレに挑戦する10代や学生の一般人とは違うということだ。

当然、カメラマンに囲まれた時の対応方法も、経験も、心構えも違うわけで、会場で守ってくれる男性もいない。

▲明らかに臀部のみを狙った撮影で、悪質といっていい。しかし装備機材を見ると、業者ではない可能性もある

コスプレ歴2年のとあるコスプレイヤーはプリーツスカートを着用するキャラの際、ローアングラーに囲まれた。「明らかに囲みの半径が短かったので、最初は『この距離でちゃんと撮れているのかな』と思っていました。

コスプレイヤーはカメラマンがどんな構図で撮影しているかがわかりにくい。ただ下半身狙いはカメラの位置から明白です。

その後『通路を埋めている』という理由でスタッフに注意を受け移動することになったのですが、移動する際も十数人が追って来る状況。どう断って良いかわからなかった」とその恐怖を話す。

約20年間コスプレ広場に通っている1UP情報局記者も、今夏のコミケで同様の光景を複数目撃している。

コスプレ広場は周囲をカラーコーン等で囲み、撮影スペースを明示しているが、一人のコスプレイヤーにカメラマン、ローアングラーが殺到し、カラーコーンが大きく倒れたり、押し出されるシーンは異様としか言いようが無かった。

会場スタッフもその状況を是正するため必死に動いていたが、各地で同様のことが起きるとなかなか防ぎきれない。

■集団で襲いかかるローアングラーも

また、あるカメラマンはローアングラーが集団で行動しているのでは、と推測する。「並び撮影の場合は、目線以外の角度から撮影されることがないので、撮影も健全。局部アップ撮影などはあり得ません。その代わり長時間並ぶ必要があります。

ローアングラーはその状況を逆手にとり『こんな暑い中、ずっとポーズを取っていたら疲れるでしょう。囲み撮影に切り替えて、カメラマンに一斉撮影させましょうよ』と、半ば強制的に囲み撮影に切り替えさせるのです。

コスプレ経験があまり無いレイヤーさんなんかは『ああ、そうですね』と了承。すると瞬く間にそのローアングラーの仲間が集まり、一斉にスカートの下にカメラを突っ込むわけです。

長時間並んで綺麗な写真を撮ってあげようと考えていた我々はなんだったのかと思いますね。その後コスプレイヤーさんはスタッフに連れられ、その広場には戻って来ませんでした」(コミケ歴8年カメラマン)。

▲コミケでは「エントランスプラザ」「西屋上展示場」「庭園広場」「東トラックヤード」「有明西ふ頭公園」など、常時3~4カ所がコスプレ広場として開放されていて、交流しやすい環境づくりに努めている

■ある「自衛策」がネットに話題に

ではコスプレイヤーの自衛策は何もないのか。「そんなことはありません。アイデア次第では自衛できると考えています」と答えるのはコスプレイヤーの甘噛はむさん。甘噛さんは今夏のコミケでは、大好きな艦隊これくしょんの島風の衣装を選択した。

コスネーム、Twitterアカウントを明示するためのボードをつくり、そこに「ローアングル上等 露出対策完璧 撮影ありがとうございます」と記載した。

Twitter上では「ナイスアイデア」「素晴らしい」と賞賛が相次ぎ、このつぶやきは2500RTにも及んだ。

「何か面白いボードを作りたいなーって感じだったので、悪質なローアングラーに対抗するために意識して作ったりですとか、Twitterで沢山の反応をもらえるだろうなーなどとは全然考えてなかったです(笑)

製作時間は1時間くらいでササーっと作りましたよ(笑)」と謙遜するが、効果は絶大で、ローアングル撮影するカメラマンはほぼ皆無だったという。

オタク的な笑いのツボを抑え、しかも結果的にコスプレ会場の環境改善に繋がった彼女の行動は、今後他のコスプレイヤーも参考にするべきかもしれない。

ネット上では「露出度が高いコスプレをしているのだから、自業自得」とコスプレイヤーを批判する向きもいる。

しかし、コスプレイヤーはコミケが規定する「露出」の注意事項を守っている。どのキャラクターのコスプレでも、ルールに則っていれば問題はないのではないか。

一方、撮影者の注意事項として記載されている「局部などをアップで撮影」「極度なローアングルからの撮影」「多人数の撮影者で取り囲む」「勝手にネットに載せる」等の項目はローアングラーたちに守られているのだろうか。答えは明白だ。

この流れがさらに加速した場合、これまでコスプレ広場を交流の場として盛り上げて来たコスプレイヤー、カメラ紳士たちに影響が出ることは想像に難くない。

「カオスな場所」という認識だけが強まり、コスプレ離れが起きる事が万が一あれば、コミケを楽しみにしているカメラマンにも不利益この上ない。

カメラマン同士の声がけや、コスプレイヤー自身の自衛法等、どれが突破口になるかはわからないが、ここ数年で顕著になってきた悪質で異常な撮影に早く歯止めが掛かって欲しいと思ってやまない。

▲記事とは関係ないが、このコスプレイヤーさんにはハッとさせられた

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