記事提供:日刊サイゾー

本書『昼、介護職。夜、デリヘル嬢。』(ブックマン社)は、介護職で働きながら夜は風俗嬢として働く女性に、著者の家田荘子が取材したルポだ。

現在、国内の介護職員は、約171万人。要介護者の総数に対して、36万人以上不足しているとされている。その理由として、重労働に対して低賃金であることが言及されているが、それだけではない。

なんと、高齢者からのセクハラがあるというのだ。介護業界では“ないもの”とされる高齢者の“性欲”。本書では、それらと真摯に向き合う女性介護職員が多数登場する。

動けないはずの右手が女性職員の股間めがけて動いたり、声の出せない高齢者が筆談で卑猥な言葉を投げかけてくることがある。自分が性の対象と見られたことにショックを受けて、仕事を辞めてしまう職員があとを絶たない。

しかし、家田が取材した女性介護職員たちは、別の顔を持っていた。昼間、介護職員として働き、さらに夜は風俗嬢として男の相手をするのだ。

もちろん、少ない稼ぎを補うためでもあるが、本書に登場する女性たちは、そこに生き甲斐を感じているという。いったいどういうことなのだろう?

ある介護職員と風俗嬢を掛け持ちする女性は、風俗嬢を経験しているからこそ、日常的に行われる高齢者のセクハラ行為をうまくかわすことができよるようになったという。

風俗の接客中に、客の男性が“本番”を要求してくることが多いので、それと同じように相手を嫌な気持ちにさせないように断る。「奥さんがみてるよ」などと、話を反らしたりするそうだ。

介護でのストレスを風俗の仕事で解消していると語る女性。介護をやめるわけでも、風俗一本にするわけでもない。

「お金じゃなくて、私は介護が好きなんです」と語る彼女は、現代の3K(キツい、汚い、危険)労働とも言える介護に今日も前向きに従事している。

「もしかしたら、介護の仕事のストレスをこっちで発散しているかもしれませんね。おかげで、プラスとマイナスで、どっちの世界でも、いろんなことが許せるようになりました」と彼女は言い切った。

また別の女性は、「デリヘルの仕事を始めてから、もっと人のことを考えられるようになったんです。介護の仕事が滑らかになったというか…」と語る。高齢者の“性欲”を汚いものと感じ、急に冷たくなったり会いに来なくなる家族が多いという。

女性は、そんな高齢者を不憫に思いバレないように処理してあげるのだと語る。デリヘルの仕事を始めて、そういった感情の機微にも敏感になり、結果以前よりもスムーズに介護職に取り組めるようになったそうだ。

本書には、彼女と同じような理由で仕事を掛け持ちする女性が登場。なかには複雑な理由の上で裸の世界を選ぶケースもあるが、この女性たちに共通しているのは、家田が言うように“頑張り屋”であること。

日本は、高齢化社会を突き進んでいく。彼女たちのような女性こそ、日本を支えているといえるだろう。

「ここ(介護施設)は、死を待つ監獄。(中略)ただただ毎日を過ごさなきゃいけないベッド生活で、生きていてよかったっていうか、生きていることの幸せを感じてもらえるようにしたい」という言葉が重くのしかかる。

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