現在、ファッション業界を湧かせている「ロンドンファッションウィーク」。ファッション業界のイベントとしては欠かせないものであり、毎回、ニューヨーク、ロンドン、ミラノ、パリで開かれる1週間のショーは話題となっています。

つい先日、そのファッションウィークで British Asian Trust God My Silent Partner Foundationがコラボしたショーがロンドンのウォルフォードホテルで開催されました。そこに出場した2人のゲストは、アシッドアタックの被害者でした。

アガーウォルさんとベリスさん

Pinned from metro.co.uk

インドのデリ出身のラクシュミ・アガーウォルさん、26歳(写真右)は、今から13年前にストーカーによりアシッドアタックの犠牲になりました。男はアガーウォルさんにプロポーズし、それを断ると酸を投げつけました。そのためにアガーウォルさんは、腕や顔に一生残る深い傷を付けられました。

一方、24歳のアデル・ベリスさんは、イギリスのサリーで2014年にバス停でバスを待っている間に、元恋人から酸を浴びせかけられました。酸はベリスさんの髪半分と片方の耳を溶かし、腕にも酷い傷跡を残しました。

女性の権利と自由を奪い、身も心も殺すアシッドアタック

Licensed by gettyimages ®

インドやパキスタンなど、アシッドアタックはアジアでよく聞かれると今まで思いがちでしたが、実は筆者の住むイギリスでも毎年発生している残酷な事件です。過去10年の間にイギリスで起こるアシッドアタックの件数は倍にも膨れ上がっているという事実も判明しています。

アシッドアタックは、女性だけが被害者に限られることはなく、見知らぬ相手からいきなり酸を浴びせられ人生を狂わされる男性もいます。世界的に見ると、ほとんどの犠牲者は女性ですが、加害者が女性への自信喪失と心身の破壊を狙うことからアシッドアタックはレイプ同様、最も卑劣で悪質な犯行とされています。

心と体に深い傷を負った女性は、回復するのにどれほどの勇気と時間がいることでしょう。酸によって顔を溶かされ、傷を負い、誰だかわからなくなるほどになってしまうことは、自分自身を粉々に破壊されたも同じです。

アガーウォルさんの人生を台無しにした男にはたった10年の刑期が科せられただけでした。そしてベリスさんの元恋人だった男性にも13年の実刑判決が科せられましたが、人の一生を壊した代償がたかだか10年少しというのは、なんとも不公平な気がします。

傷を負った被害者は、一生苦しんでいかなければなりません。トラウマも相当なものでしょう。それでも前向きに生きなければいけないという思いとの葛藤は、被害者を日々苦しめているに違いありません。

決して許してはならないアシッドアタックのキャンペーンのために、今回、ロンドンファッションウィークで、アガーウォルさんとベリスさんはランウェイを歩きました。

被害者女性へのサポートを行う「#giveagirlafuture」

今回、ランウェイで掲げたボードには「#giveagirlafuture」(女性に未来を与えよう)というスローガンが書かれてありました。

アシッドアタックで被害にあった人は、長期的な治療や入院とその費用が莫大にかかってしまいます。経済的に余裕のない被害者をサポートするために、「#giveagirlafuture」は支援金を募っています。

現在、アガーウォルさんにはパートナーと、その間に生まれた17か月になる子供がいます。アシッドアタックを受けてからは、自分が家庭を持つことはきっと一生ないと思っていたそうです。

周りからも「あの男が、あなたに酸を欠けたのは一生結婚できないようにするためだ。腕を切り落としたり髪を引き抜いたりするよりも何倍も悪質で残酷だ」と言われたというアガーウォルさん。その言葉通り落ち込む日々も長かったといいます。でも、今は愛を見つけて幸せに生きていて、同じ犠牲者のためにキャンペーンを行い続けています。

「泣いたら負けだと思った」

元恋人に酸をかけられたベリスさんは「泣いたら負けだと思いました」と語ります。「とにかく、こうなった以上、これからの自分の人生に対応していかなきゃと思いました。」どれほど、ベリスさんは大声で泣きたかったことでしょう。

人生で最悪のことが起こったという自覚はあったベリスさんですが「もっと酷いことをされていたかもしれない」と思うと、「頑張って立ち直らなきゃ」と思ったそう。それでもベリスさんの人生は、これによって大きく変わりました。加害者が反省の色も見せなかったこともベリスさんを大きく苦しめました。

それでも、前に進もうという大きな勇気を見せるベリスさん。その勇気は、アシッドアタックの被害にあった多くの人のエールとなるでしょう。ランウェイを歩くのは見た目が美しい人だけではありません。アシッドアタックにあっても、強さを決して忘れないベリスさんやアガーウォルさんのような女性が、真の美しさを備えた女性といってもいいでしょう。

そして、彼女たちはランウェイを歩く価値があるのだということを、今回のファッションウィークで実感した人がたくさんいるに違いありません。

この記事を書いたユーザー

Mayo このユーザーの他の記事を見る

公式プラチナライター。イギリス在住22年目。いつも読んで下さる皆さんに感謝。Twitterアカウントは@mayonesque18です。よろしくお願いします。

得意ジャンル
  • 話題
  • 動物
  • 社会問題
  • 海外旅行
  • 育児
  • テレビ
  • 美容、健康
  • カルチャー
  • ファッション
  • コラム
  • 感動
  • おもしろ

権利侵害申告はこちら